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中川晃教&平野 良が刺激的なエンターテインメントの世界をつくる。ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』が切り開く演劇の新時代

4/2(木) 18:01配信

エムオンプレス

明治座の創業以来、初めてオーケストラピットを使用する、生演奏によるミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』が4月17日(金)より明治座にて上演される。
15世紀のルネサンス期のイタリアを舞台に、ヨーロッパ統一を目論むチェーザレ・ボルジアを描いた、惣領冬実のヒット漫画を原作に、日本発のオリジナルミュージカルに仕立てた本作は、キャストの豪華さも相まって開幕前から大いに話題となっている。
主演のチェーザレ・ボルジアには、ミュージカル界のトップスターである中川晃教。そして、近年では演出家としての活躍もめざましい実力派俳優、平野 良がチェーザレと親交の深いジョヴァンニ・デ・メディチを演じる。
そこで、中川晃教と平野 良のふたりに今作にかける熱い想いを聞いた。

【写真】中川晃教さん&平野 良さんの撮り下ろし2ショット

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望



◆歴史ある明治座がグランドミュージカルをつくることは画期的

ーー 今年1月に製作発表会が行われ、各方面で話題になりました。

【 中川晃教 】 嬉しいですね。製作発表会では、りょうくん(平野 良)が挨拶のときに「尊敬してやまない中川晃教さん」と冗談をおっしゃっていて身が引き締まりました(笑)。

【 平野 良 】 いや、本気ですから!(笑)

ーー 私もたしかにあの場で聞いていました(笑)。そこで明治座が開場以来、初めてオーケストラピットを使う本格的なグランドミュージカルを製作すると発表しましたね。

【 中川 】 歴史ある明治座が初めてオーケストラピットを使って、グランドミュージカルをつくることは画期的だと思います。そして、選ばれし俳優たちが集って、座組みのポテンシャルが作品を形づくり、お客様の心を動かしていく。僕たちがこの作品で目指す頂が、オリジナルミュージカルとしてはっきりと見えてくると思います。惣領冬実先生原作の“絵”を、荻田浩一先生がミュージカル版の脚本として書き下ろし、生身の僕たちがどうやって作品の世界を表現するのか。稽古場で戦いながら、エネルギッシュな日々を送っています。

【 平野 】 2.5次元舞台に出演することの多い俳優もいれば、グランドミュージカルを主戦場とする先輩もいて、いろいろなフィールドで活躍している俳優たちが集まるのは、明治座にとっても挑戦だと思います。原作があるとはいえ、オリジナルミュージカルですから、舞台化する苦労もあれば、楽しみもある稽古場です。

ーー オリジナルだからこそ見えてくるものがあるわけですね。

【 平野 】 オリジナルの場合は、作品の世界を掘り下げることができれば、真価が鮮明に見えてくると思います。イタリアの歴史を描くという、日本人にあまり馴染みのない文化や宗教、皇帝制という制度などを、どうやってお客様にわかりやすく、同時に深く考えていただけるような作品にするのか。そういったことに日々チャレンジしているので、昨日の稽古では見えなかった光景が翌日には見えてきたり、稽古をしていくたびに見たことのない景色に変わって新鮮です。

ーー 日本からまたオリジナルミュージカルが生まれることも重要ですね。中川さんは常々、そのことに強い想いを持っていらっしゃいますよね。

【 中川 】 ブロードウェイやウエスト・エンドの翻訳されたミュージカルに出演できることは素晴らしい経験ですが、オリジナルキャストが命を吹き込み生まれる、オリジナルミュージカルが日本には必要だといつも考えています。

ーー そう思われる理由は何になりますか。

【 中川 】 まずは、観たことのない新しいミュージカルを待ち望んでいるお客様がたくさんいらっしゃるから。それほど、現代の日本のミュージカルシーンはかつてない盛り上がりを見せています。オリジナル作品は、これまでに感じたことのない喜びが味わえると期待されていますし、その想いが、今回でいえば『チェーザレ』を形づくってくれるとも思っています。製作発表以降、お客様から多くの期待の声を聞いているうちに、あらためて今作をつくる喜びを噛み締めています。

◆オリジナルの作品をつくることはドキュメンタリーの要素がある

ーー オリジナルですから、新しい発見がありそうですね。

【 中川 】 オリジナルの作品だからこそかもしれませんが、稽古をしていくと、キャストの息吹がキャラクターに吹き込まれて、俳優と演じる役がその場でオーバーラップしていく。ドキュメンタリーの要素があると感じました。もちろん、僕たちがつくろうとしている作品にも、日本のミュージカルに代々受け継がれてきた水脈が流れています。だから、これまで積み上げてきた日本のミュージカルの歴史を大切にしながら、新しいミュージカルをお客様の前に立ち上げられたらと思っています。

ーー オリジナルをつくることで日本のミュージカルが更新されていくわけですね。

【 中川 】 お客様に満足していただければ、次のオリジナル作品につながっていくきっかけにもなるし、日本のミュージカルの世界がもっと深まっていくターニングポイントになると思っています。オリジナルミュージカルが日本に根づき、支持をされることで、僕たち俳優の輝きも増していくでしょうから、さらにミュージカルシーンを盛り上げることができると思います。

ーー 平野さんはオリジナルミュージカルに出演することについてどのように思われますか。

【 平野 】 僕の俳優人生は映像から始まって、ストレートなお芝居をすることが多かったので、ミュージカルに出演する機会もなかったし、役者としてあきらめていた時期もあったんです。そんなときに運良く、“テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)”に出演させていただいて、ミュージカルでお芝居をすることはストレートプレイと変わらないと思うようになって、演技の幅が広がった。そして、ミュージカル『ソング・ライターズ』でアッキーさん(中川晃教)と共演したことが、僕にとって大きな転機になりました。役者を始めて20年以上になりますが、誰も観たことのないオリジナルミュージカルに挑戦者としてぶつかることができるのは光栄です。

◆チェーザレはバランス感覚とリーダーとしての素質に恵まれている

ーー ここまでの稽古を経て、中川さんが演じるチェーザレと平野さんが演じるジョヴァンニの印象を伺わせていただければと思います。

【 平野 】 ジョヴァンニはイタリアの銀行の頭取のロレンツォ・デ・メディチの息子で、商人の一族です。高い位につくと約束されているがゆえに、傲慢さがあるのですが、可愛らしい人物で、普通なら照れくさくて言えないようなことも気軽に言ってのける、ピュアな芯を心に持っているキャラクターです。

【 中川 】 チェーザレはジョヴァンニと共通点があって、偉大な父がいる。ロドリーゴ・ボルジアという、メディチ家と同盟を結んでいる、大貴族のボルジア家の当主である父親です。両家が友好関係を結んでいるのは、目先の利益が目的ではなくて、裏に様々な思惑が隠されているからなのですが。彼は偉大な父親の影に隠れて行動しなくとも、野心が入り乱れた時代を生き抜くバランス感覚とリーダーとしての素質に恵まれています。さらにチェーザレは、ジョヴァンニを“枢機卿”にさせる“諮問官(任命官)”という役割を担っています。ふたりは16歳で同じ学生で、仲間でもあり、同志でもある。チェーザレが大切に育てた優秀な“馬”をジョヴァンニに贈るシーンがあるのですが、そこからも彼らが大切な関係であることがわかると思います。

ーー リーダーとしての素質を持っているのは、父親の教育でそうなっていくのですか?

【 中川 】 必ずしもそうとは言えなくて、僕はピサの自然の中で養っていたと思っています。原作を読んでいるとわかるのですが、馬といった動物、自然の風景や教会の天井画といった建物の描写がとても丁寧に描かれていて、そんな環境だからこそ、彼は宇宙観を覚え、壮大な思想を身につけたことが理解できます。そのうえで、ジョヴァンニたちとの関係から世の中を生きていくためのバランス感覚を吸収して成長し、自らの行く末を見つけていきます。

◆演出家・小山ゆうなという指揮者とメイン楽器の中川晃教の関係が大事

ーー ここまでの稽古の印象を聞かせてください。

【 中川 】 りょうくんは演出家でもあるから頼ってしまうところがあって。わからないことがあると、りょうくんに聞きながら稽古をしています。

【 平野 】 そうおっしゃっていただくと照れますね(笑)。先ほども言ったように、設定が日本の方に馴染みがないので、テーブル稽古(脚本の読み合わせ)をたくさんして共通認識がブレないようにしています。どの舞台でもそうだと思いますが、演出家として小山ゆうなさんという指揮者がいて、今回のメイン楽器である座長の“中川晃教”が、どう舵を切るかが重要だと思います。オリジナル作品なので、稽古のたびにいろいろな解釈が生まれますが、やっぱり指揮者とメインがどういう方向に進みたいのか、ふたりの決断に至る細かな機微さえも見逃さないようにしながら稽古をしています。

【 中川 】 小山さんには小山さんの世界観があって、ヨーロッパを舞台にした緻密な歴史物語や、あえてファンタジーに見せるわけでも、原作に忠実な世界をつくるのでもなくて、明治座に似合うミュージカルを模索されていると思います。すでに全幕を稽古して、小山さんの意図がわかるようになってきているので、これからはさらにみんなと詰めていきたいです。そこからさらに、セットをどのように使うのかが重要になってくるのですが、『フランケンシュタイン』でご一緒した乘峯(雅寛)さんが舞台美術で、いつも稽古場にいてくださるので心強いです。なによりミュージカルですから、島 健さんの音楽も大切になりますよね。

ーー 大切なのはカンパニーなんですね。

【 中川 】 おっしゃるとおりです。舞台の面白いところは、俳優だけではどうにもならなくて、たくさんのスタッフの想像力に満ちたカンパニーにすることが大切なんです。演出と音楽といったスタッフワークと僕らのお芝居、すべての力をひとつにしなければミュージカルにならない。その中で俳優として重要なのは、小山さんが振っている旗に対して機敏に反応し、いかにカンパニーの目指すグランドミュージカルとして成立させるかに意識を集中することだと思います。

ーー なるほど。今作は、そんな魅力のあるスタッフと個性の強い俳優が集まっている。

【 中川 】 そうです。最終的には歌とお芝居、両方をできる俳優が板の上に立って作品をつくるわけですが、現代ではミュージカル俳優だけがミュージカルをつくる時代かというとそうでもなくて、りょうくんのようなストレートプレイに強い俳優や、2.5次元で活躍している俳優、あらゆるジャンルで音楽やお芝居の才能を持った人たちが集結している座組みというものも存在します。今作でいえば、バラエティー豊かな俳優が集まっていることが強みになっていますね。

◆平野 良にとって、中川晃教はミュージカルの魅力に引き合わせてくれたパイオニア

ーー 先ほども平野さんがおっしゃいましたが、おふたりはミュージカル『ソング・ライターズ』以来の共演となります。

【 平野 】 僕にとってアッキーさんは、ミュージカルの魅力に引き合わせてくれたパイオニアです。『ソング・ライターズ』のときは、顔合わせの瞬間からアッキーさんに引き寄せられました。

【 中川 】 うまいなあ(笑)。

【 平野 】 本当ですよ(笑)。脚本の読み合わせから、アッキーさんの声が身体に染み込んでくる感覚が衝撃的でした。

【 中川 】 りょうくんはあの当時、とんがっていて心が読めなかったけれど、誰にでも平等に接していましたね。

【 平野 】 えっ!? とんがっていました?(笑)

【 中川 】 うん。演出の岸谷五朗さんには「すごい子を連れてきたな」って感動したから(笑)。そういえば、稽古のときに(岸谷)五朗さんが「りょう、あれじゃダメだよ」とよくおっしゃっていたよね?

【 平野 】 ものすごく怒られました(苦笑)。

【 中川 】 五朗さんが期待していたからメッセージを放っていたんだと思うよ。りょうくんも「はい」としっかり聞いていて好感が持てていたけど、自分の確固とした意見があって。りょうくんの中で引っかかったお芝居に対して、言いたいときにはきちんと意見をしていたから、それがとんがって見えたんだと思う。目の前のことがOKだからといって、それで満足するわけではなくて、「もっとこうしよう。やっぱりこうだった」と理想が高いし、つねにお芝居をアジャストさせながら、現場でベストを尽くす。最近では演出もしているし、信頼している俳優のひとりで、情熱が高いからシンパシーを抱いています。だから相談しちゃうんだけど(笑)。

ーー (笑)。実際、中川さんから相談されていかがですか。

【 平野 】 相談とは思っていないですよ!?(笑)でも、アッキーさんのように思ったことをおっしゃってくれる俳優は稀有ですね。現場をつくるひとりとして言わせてもらえば、演出の小山さんの意見もわかるし、そうやってアッキーさんが投げてくれる言葉で、内側から役づくりをしながら、外側からも役を固めることができるので、ジョヴァンニを演じるうえで手助けになっています。

【 中川 】 実はりょうくんが演出した舞台『BIRTHDAY』(2019)で「出演してくれませんか」と声をかけてもらって。都合が合わなくて出演できなくて残念だったけど、りょうくんは自分から何かをつくろうとしている人だし、僕の良さを見抜いてオファーをしてくれたわけだから、活躍しているフィールドは少し違うかもしれないけれど、世代も近いし、尊敬している俳優ですね。

◆どれだけ誇りを抱いているのかをシンプルに届けたい

ーー 中川さんは、お芝居だけでなく歌手としても活動していますし、平野さんは演出家としても活躍されて、いつも高い位置で表現者であることを意識されている気がします。おふたりをそこまで駆り立てるものはなんですか。

【 平野 】 役者を始めたのは、なんとなく目立ちたいからという単純な理由だったのですが、それだけではモチベーションを維持できなくて、同世代の人たちが学校を卒業したり就職したり、人生の岐路に立つたびに役者の意味を考え続けました。そうすると、日本はエンターテインメントに関して、他の国より重要視されていなくて、何かがあれば、あっさり切り離されてしまう現状を目の当たりにして……。海外では宗教が国民の心の支えになることがありますが、日本にはあまりそういったことはないので、だからこそエンターテインメントが日本人の心を癒す存在になると信じていて。だから、舞台というエンターテインメントを通して皆さんの心に寄り添いたい想いが、俳優や演出家としての僕の原動力になっています。

【 中川 】 りょうくんが俳優のことを言ってくれたので、歌手に関して言うと、僕はどなたに歌を歌っているのかということをいつも問いかけています。どんなときも誰かに歌を歌い続けたいという気持ちが根底にないと、答えがブレて歌が台無しになってしまう。誰かのために歌うことで自分自身をつねに見つめ直す必要があると思っています。

ーー おのずと自分が表現者である必然性が見えてくる。

【 中川 】 いろいろなタイプのアーティストがいてたくさんの表現がありますが、僕は歌やお芝居に対してどれだけ誇りを抱いているのかをシンプルに皆さんに届けたい。そこで感動が生まれて、明日への希望になって、お客様の元気の源になってくれれば嬉しいので、歌やお芝居は僕の表現の礎になっています。

◆まだ見ぬ未来をどうやって生きていくのかを問いかけるーー それでは、最後に見どころをお願いいたします。

【 平野 】 チャレンジャーとして頑張りますので、舞台からほとばしる何かを感じていただければ幸いです。

【 中川 】 明治座の歴史の新しい1ページの誕生の瞬間に立ち会っていただきながら、お客様と一緒につくりたい作品です。製作発表会で「“馬”に乗りたい」と言いましたが、つい先日、静岡の山の麓で馬に乗ってきました(笑)。今作で“馬”は『チェーザレ』の象徴だと思います。この物語は、“馬”の手綱をいかに操れるかで乗馬のセンスがわかるように、どういった人間がリーダーとして存在していれば、誰もが幸せになれるのかという問いかけをしています。ルネサンスという過去に遡ることで、まだ見ぬ未来をどうやって生きていくのかが見えてくる。16歳のチェーザレが、どんなリーダーになっていくのか、想像力が刺激されるオリジナルミュージカルになるので、ぜひご覧になってください。

中川晃教
スタイリスト / KAZU
ヘアメイク / 松本ミキ

中川晃教&平野 良が刺激的なエンターテインメントの世界をつくる。ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』が切り開く演劇の新時代は、WHAT's IN? tokyoへ。

最終更新:4/2(木) 18:01
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