新型コロナウィルスの感染拡大により、世界各国で「現金給付」に乗り出す例が増加している。米国やカナダなどでは1人当たりおよそ10万円程度の現金給付が実施されるなど、大型の財政出動を行うことで、直接国民を支援することがアナウンスされている。
日銀は、下落が込むと積極的に「爆買い」している
一方で日本ではいわゆる「お肉券」や「お魚券」が話題になった。これはあくまで政府全体のスタンスではなく、自民党の農林部会や水産部会が検討していた内容ではあるが、国民感情を逆なでする内容だっただけに大きな批判を浴びることとなった。3月30日には、政府の緊急経済対策における提言の中で、現金の一律給付を断念し、一定の要件を設ける旨が記載されるなど、他国との対策の差が浮き彫りとなった。
反面、スピーディな対応といえば日本銀行の追加緩和だ。日銀は3月16日に予定よりも2日ほど前倒しで金融政策決定会合を実施し、ETF(上場投資信託)の年間買い入れ額を12兆円と、従来の6兆円から2倍規模にまで拡大することを決定した。
日本銀行が、今年に買い入れたETFと日経平均株価指数を比較すると規模感が分かる。これまでは1回あたり700〜1000億円を買い入れていた日銀は、追加緩和を機に、1回あたり2000億円規模の買い入れを断続的に行っていることが分かる。
日銀は、今年だけですでに2兆5000億円以上のETFを市場から買い付けている。仮にこれが国民に現金給付されたとすれば、1人当たり2万円以上はもらえるレベルの規模感だ(なお、この部分はあくまで規模感の例えという趣旨であり、「政府は2万円を給付できるはずなのに株につぎ込んでいる」という話ではない)。
日銀による巨額のETF買い付けは、さまざまな点で歪(ゆが)みを生じさせ得る。今回は中央銀行による株式の購入がもたらす歪みを2点確認していきたい。
そもそも、日本銀行が株式を購入するという施策は株価の下支えを意図した施策でもある。そうすると、この施策は株式を持っているものを助け、持たざるものに参入障壁をもうける行動であるともいえる。
日銀のETF買い入れは、株価が大きく下がった時に積極的に実施される傾向がある。
したがって、日銀のETF買い入れには安値での買い支えという意図もあることがうかがえる。このような安値での買い入れは、高齢者を中心とした資産保有層にとっては下駄をはかされた分だけ高く売り抜けることができる点でメリットがある。
一方で、若年層を中心とした資産形成層にとっては、日銀の購入によって下駄をはかされた分だけ、高値での購入を余儀なくされる。では、この弊害を資産形成層の間で利用が広がる積立投資から考えてみよう。
積立投資のパフォーマンスを最大化するうえで、一時的な相場の急落は実は歓迎されるべきものだ。相場の急落時には単価が安くなり購入数量が自動的に増加することで、相場回復を経た最終的なパフォーマンスは大きく伸びる。そうであるにも関わらず、買い支えによって安値で購入できなくなれば、最終的に形成できる資産が大きく目減りすることになるだろう。
このように、安値での買い支えは、資産形成層の最終的なパフォーマンスを毀損(きそん)する可能性が高い。また、資産保有層の高値での切り崩しを助長するという点で、国民の経済格差拡大を助長してしまう危険性があると筆者は考える。
最終更新:4/3(金) 7:35
ITmedia ビジネスオンライン































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