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【エンドレス・スリープ刊行記念】辻 寛之インタビュー「謎が解けた時にテーマを浮かび上がらせたい」

4/3(金) 11:00配信

本がすき。

二〇一八年に選考委員全員の支持で第二二回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した
デビュー作『インソムニア』から約一年。長編第二作となる本作は、デビュー作と全く違うテーマに全く違うアプローチで挑んでいる意欲作だ。変わらないのは社会派と本格ミステリーの融合に挑む骨太な作風。作品に込めた熱い思いを語ってもらった。

「謎が解けた時にテーマを浮かび上がらせたい」

ーー受賞第一作の長編ということで、受賞作『インソムニア』を刊行されてからほぼ一年ですね。二作目として意識されたことは?

辻寛之(以下辻) 受賞作のテーマはPKOを絡めた現代の戦争で、舞台が海外、主人公も防衛省や自衛隊の人間でしたので、二作目は舞台もテーマも変えて、新たなミステリーに挑戦したいという思いがありました。

ーー冒頭が東京の港湾部での倉庫の火災現場から始まりますが、その意図は?

辻 死体発見の現場から警察の捜査が展開するというオーソドックスな形で物語が始まるのですが、いわゆる捜査ものの形を借りたミステリーにしたい、と意図しました。

ーー敢えて、捜査もののミステリーのスタイルを踏襲したということですか?

辻 そうです。特殊な舞台設定ではなくて、オーソドックスな事件を下敷きにして、ただしテーマに社会問題をおきたい、と思っていました。

ーー「寿命とは違う形で死と向き合わされてしまった人間」というテーマは、ある意味普遍的で、深刻だけど人間誰も逃げられないテーマですね。

辻 死に対する苦痛というのは幾つかあるようです。身体的な苦痛、精神的な苦痛、もう一つが、スピリチュアル・ペインというものです。身体的な痛みには緩和ケアがあり、精神的な痛みにもある程度解決策がある。ところがスピリチュアル・ペインには解決する方法がないといわれているんです。

ーースピリチュアル・ペインは他の二つの痛みとはどう違うのでしょうか?

辻 自分の存在の喪失への恐怖、人生の意味や価値の喪失、死への恐怖や不安など、より根源的な恐怖ですね。魂の痛みといいますか。

痛みを取り除く安楽死とは違うテーマを書きたい、という気持ちがありました。人間がどうしても直面せざるをえない死の恐怖について、どこまで書けるか、が今回のチャレンジです。

昨今は宗教的な来世や死後の世界が信じられないような社会になってきていると思います。宗教に救いが求められないことで、日本人の死生観も変わってきていると思うんです。

テクノロジーや医学の進歩がもたらす死に対する考え方もずいぶん変わってきていると思うんです。作中で登場する末期がんを抱えた患者が語っていますが、かつて祖母の時代には身内の死を経験して死を学ぶ機会があった。いまは、医療機関や施設の中で死を迎えますよね。医療機関を挟むことで死生観が変わっている。

そういった現代の死に対する問題や課題をどこまで物語の中に入れ込めるかを考えました。

ーー冒頭部分で登場するフリーライター如月のブログで、がんの闘病の様子が非常に赤裸々に如月の内面を表現する形で書かれていて、インパクトもあるし共感も出来る。読んでいて切ないけれども、読むのをやめられないですね。

辻 医療ものは現役医師の作家さんが書かれたリアリティがあって専門性も高い作品が多数あります。今回の作品では読者が追体験できるような患者側からのエピソードで死に直面する様子を書きたかったんです。フィクションでありながらも登場人物の孤独感や死への恐怖をどう切迫感をもって描くか、が今回の仕掛けのいちばんベースに置いたところです。

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最終更新:4/3(金) 11:00
本がすき。

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