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東京五輪は「中止」が妥当! 政治主導の「延期」判断はアスリートとスポーツを無視した政治家、IOCの暴挙

4/3(金) 11:17配信

REAL SPORTS

1年程度の延期がすでに決定していた東京オリンピックの開幕が、来年7月23日に決まった。勢いを増す新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中を混乱させているいま、「1年後の延期」は正しい判断だったのか? 作家・スポーツライターの小林信也氏は、政治主導で決まった延期は「アスリートファースト」どころか、アスリートやオリンピック、スポーツを無視した暴挙だと語る。

(文=小林信也)

満面の笑みで延期を喜ぶ気にはとてもなれない

東京オリンピック2020の延期が正式に発表された。国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長との電話会議で「来年夏までの延期」を取り付け、安倍晋三首相と森喜朗会長(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)は満面の笑みで握手を交わした。安倍首相と小池百合子東京都知事はグータッチで延期の決定を喜び合ったとも伝えられた。

この報道には違和感を覚えずにいられなかった。同じように感じた方も多いのではないか。なぜ、満面の笑みやグータッチが腑に落ちないのか。
延期を無邪気に喜ぶ神経が、オリンピックを目指す当事者やスポーツを愛する者たちの感性とは大きな隔たりがあるからだろう。

延期決定後、私は取材を続ける競技の代表監督、代表選手、コーチ、所属チーム関係者ら数名に話を聞いた。安倍首相や森会長のように「よかった!」と大喜びしている人は誰もいなかった。思わずグータッチをした、という選手にはまだ出会っていない。

中止が回避されたことに安堵する、といった感想もなくはないが、まずは今年7月24日の開幕が正式に取り消された喪失感、空虚さに襲われているのが実際のところだ。

ちょうど盛岡で強化合宿中だった水球男子日本代表の大本洋嗣監督は、
「朝から長い距離を泳ぎ込む練習の予定でしたが、試合形式に切り替えて、午後の練習もオフにしました」と教えてくれた。

「時間がもらえたことを前向きに捉えようと思いますが、海外遠征がこれまでどおりできるとも思えないので、練習環境をどう整えるか、これから相談です」

海外がダメならナショナルトレーニングセンターがあるだろう、と思うかもしれない。だが実情は違う。水球日本代表は競泳の日本代表とプールを共用しているため、プールを全面に使ったトレーニングは、早朝や夜の時間にしかできない。最適な時間帯に、理想通りの練習ができる環境はない。

政治家たちは延期を喜び、自分たちの手柄のように喧伝するが、選手や代表チームはむしろ混乱の中に落とされ、光が見えなくなっている。そこをすぐに解消する意識も行動もなく、平気で「アスリートファースト」などと叫ぶ政治家たちに唖然とする。

ベテラン選手は、人生設計の見直しにも直面する。結婚したばかりの新妻との別居生活を決意し、主に海外での強化合宿を受け入れてきた選手もいる。あと1年、家族と別れて暮らすのか。家族の理解は得られるのか。競技引退後の新しい道への転身も1年延ばすのか、オリンピックを諦めるのか……。すぐに決断をしなければならない。

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最終更新:4/3(金) 15:39
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