親に借金がある場合は、相続放棄をすることで負債の相続から逃れることができます。
ただ、借金があっても何らかのプラスの財産もあることも多いものです。
特に親の持ち家に同居している場合などは、何とかしてその家を相続したいと考えるのも無理はないでしょう。
この記事では、相続放棄で親の借金から逃れつつも、プラスの財産のみを取得する裏技があるかどうかを解説します。
例えば、
父親が評価額2000万円の自宅を所有しており、その一方で総額3000万円の借金を抱えていた時
この場合、長男などの相続人が自宅の所有権を生前贈与で取得しておき、父親が亡くなった後に相続放棄をするという方法が考えられます。
生前贈与と相続放棄は全く別の制度なので、併用することは可能です。
実際にも、相続争いを避けるために特定の財産だけを生前贈与で取得しておき、被相続人が亡くなったら相続放棄をするという方法はよく行われています。
ただし、被相続人に借金などの債権者がいる場合、この方法には問題があります。
■債権者から生前贈与を取り消される可能性がある
被相続人が借金の返済義務を負っているのに財産を処分することは、債権者の利益を害する行為です。
このような行為のことを法律上「詐害行為」といい、債権者は処分行為の取り消しを請求することができます(民法第424条1項)。
借金を負った父親が持ち家を長男に生前贈与する行為はまさに「詐害行為」にあたるので、債権者によって贈与契約を取り消される可能性があります。
ただ、債権者からの取り消し請求が認められないケースも3つだけあります。
■詐害行為の取り消し請求が認められない3つのケース
その3つのケースとは、以下のとおりです。
■□ケース(1) 債権者の利益を害することを受益者が知らなかった場合□□
いったん有効に成立した贈与契約などを後から取り消すと、事情を知らない受益者に不測の損失が発生してしまいます。
したがって、処分行為のときに債権者の利益を害する事情を知らなかった受益者との関係では取り消し請求は認められません。
受益者とは、贈与契約でいうと贈与を受ける側の人のことです。
したがって、父親に借金があることを知らずに長男が生前贈与を受けた場合は、債権者は長男に対して取り消しを請求することはできません。
これに対して、父親と長男が相談して借金から逃れることを意図して生前贈与を行った場合は、債権者からの取り消し請求を拒めないことになります。
■□ケース(2) 債権者が処分行為を知ってから2年間、取り消し請求をしなかった場合□□
債権者が詐害行為の取り消しを請求できる状態なのにいつまでも請求しないと、受益者は不安定な状態に置かれ続けることになります。
そこで、詐害行為取消請求権には2年という短い時効期間が定められています。
注意が必要なのは、処分をしたときから2年ではなく、債権者が取り消しの原因を知ったときから2年だということです。
金融機関は債務者に財産があれば有無を言わさず差押え手続きをとりますが、個人の債権者はそうとも限りません。
父親の生存中は自宅を差し押さえるのも忍びないので遠慮しつつ、父親が亡くなった後に差押えをしようと考えているケースもあります。
このケースで、いざ父親が亡くなってから債権者が調べたところ自宅が生前贈与されていたことに気づいた場合は、そのときから2年間の時効期間がスタートします。
■□ケース(3) 処分行為から20年以上が経過したとき□□
どのような事情があっても、処分行為のときから20年が経過すると詐害行為取消請求権は消滅します。
このような期間のことを「除斥期間」といいます。
長期間、権利関係が不安定な状態が続くと安全な取引ができなくなってしまうため、除斥期間が経過すると処分行為は完全に有効なものとして確定するのです。
■生前贈与と相続放棄の併用でプラスの財産のみを取得することはおすすめできない
借金があるのにプラスの財産を生前贈与することは犯罪ではありません。
債権者が取り消し請求をしなければ、合法的にプラスの財産のみを取得できる方法ではあります。
とはいえ、債権者の利益を害するものである以上、意図的にこの方法をとることはおすすめしません。
結論として、相続放棄によって親の借金の一切から逃れつつ、プラスの財産のみを取得する裏技はないということになります。
ただ、父親が独断で自宅を生前贈与して、事情を何も知らなかった長男が父親の死後に債権者から取り消し請求を受けたような場合は、ためらわず裁判で争うべきでしょう。
最終更新:4/4(土) 12:03
マネーの達人































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