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東大発ベンチャー社長が手掛ける「電力版メルカリ」誕生秘話【後編】

4/5(日) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

豊田祐介さん(デジタルグリッド社長)=後編

 メルカリのように、ネット上で自由に電力を売り買いできる画期的なシステムで注目を集める「デジタルグリッド」。昨年社長に就任した豊田祐介さんは東大出身。大学院では電力について学んだが、最初に就職したのは畑違いの外資系証券会社「ゴールドマン・サックス」だった。

「時代が早すぎました。再生可能エネルギーと言っても誰もピンとこないのですから」

 ところが、その就活中に東日本大震災が起こる。電力不足や原発不信から、太陽光や風力、地熱といった自然エネルギーへの期待が高まり出した。だが、決めた就職の気持ちは変わらなかった。

「最初の地震があってすぐ、面接を担当してくれた社員の人から“大丈夫か?”と電話がきました。聞けば、その人は発生翌日に炊き出しに行ったそう。こういう熱くて行動力のある人と一緒に仕事がしたいと思ったんです」

 1年目は債券部に配属。金融商品を開発して販売するのが仕事だったが、しばらくすると「何が楽しいんだろう」と思い始める。

「例えば99円50銭より円高になると儲かるといった仕組みをつくっていたのですが、これが世の中の何の役に立つんだ? 自分はこんなことをやるために入ったんじゃないと。いま思えば〈新入社員あるある〉なんですが、上司に“僕、このままじゃ辞めちゃいます”と直訴しました」

 幸い願いは聞き入れられ、2年目から戦略投資開発部に転属。配属されたのは太陽光設備に投資するチーム。ここでの経験がその後の人生を左右することになる。

「大学時代に電力を学んでいたのを上司は知っていたのでしょう。僕も得意分野ということでやる気が出ました。仕事も単にお金を出すだけでなく、メガソーラーの開発現場に行って、どんなふうに建設しようとか細かくやりとりできるので、すごく“手触り感”がありました」

 しかし4年後、またしても疑問の虫がうずき出す。当時、多くの企業が太陽光発電に参入したのはFIT(国による固定価格買い取り制度)により収益が保証されていたから。つまり投資目的だ。ゴールドマン・サックスも同様。それでは債券部時代とやっていることが変わらないのでは?

「もっと生のビジネスをやってみたい。決められた仕事をこなすのではなく、自分でハンドルを握り、進むべき道を決められる“ドライバーズシート”に座ってみたいと思い、ゴールドマン・サックスを辞めることにしました」

■会社が2年目の6月に資金調達に失敗

 その後、2年ほど別の投資会社で働き、2018年に大学時代の恩師、阿部力也氏と今の会社「デジタルグリッド」を立ち上げる。目的は新しい〈電力の取引市場〉をネット上につくること。すでに電力の取引所はあったが、そこは特定の会員企業しか参加できない「卸」市場。そうではなく、発電所と需要家がもっと自由に取引できる「フリーマーケット」がイメージだ。

「最終的な目的は再生可能エネルギーを増やすこと。太陽光や風力などの小さな発電所は(規制などで)簡単に電力を売ることができないので、大手電力会社に安く買い叩かれているのが現状です。それがクリアできれば生計が立てやすくなり、“じゃあウチも!”となると思ったのです」

 肝となるのはAIやブロックチェーンという最先端のコンピューター技術。1年目はそれをどう組み合わせるか、仲間と試行錯誤する日々。

「大学の延長のようで楽しかったですね。その時はまだ社長ではありませんでしたし。しかし、会社が2年目の6月に資金調達に失敗。それをあてに全て計画していたので、関係者への支払いが滞るなど、大変な迷惑をかけてしまいました」

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最終更新:4/5(日) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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