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「問われているのは『命と経済』ではなく、『命と命』の問題」 医療人類学者が疑問を投げかける新型コロナ対策

4/5(日) 14:51配信

BuzzFeed Japan

新型コロナウイルスの流行拡大を受けて、行動の自粛を強く要請され、大きく影響を受けている私たちの社会生活。

「感染拡大を防ぐ」という至上命題の前で、これまで守ってきた暮らしや文化が失われていくのに、声もあげられない人たちがいる。

命は大事。だけど、人が生きるとは、ただ生命が維持されるということだけなのだろうか。

そんな疑問を投げかける医療人類学者の磯野真穂さんに、お話を聞いた。

※インタビューは4月2日午後に行われ、その時の情報に基づいている。
【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】

管理社会に向かう可能性への危惧

ーー新型コロナ対策は医学に基づいて決められていますが、人は医学だけでなく、経済やその他暮らしを決める様々な要素に関わって生きています。でも、それぞれの価値観で自由な生活をしてしまったら、人に感染を広げる恐れもある。公衆衛生とリベラルな価値観は相性が悪い面があると思うのですが、どのように見ていますか?

白か黒かを出せない問題ですね。

私は個人的にこれまでの日本の対策は全く問題がないわけではないにしろ、かなり評価できるのではと思っています。

データを根拠にして、3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けることを繰り返し要請し、クラスターを抑え込むという対策を関係者の方が懸命にやってくださったおかげで、できるだけ人権を制限せずにここまで来ることができたからです。

しかし感染者の増加を受けて、もっと強力な制限を加えるべきだという声が日本社会でも高まっています。

海外では、二人以上で会ってはいけないといった制限や、オーストラリアで見られるような、合理的な理由がない場合は外出禁止で、それを破ったら罰金が課せられるといった政策も取られています。

韓国では近所に感染者が出たら、その人がいつ、どのバス停からバスに乗り、どこで降りたかといった情報がスマートフォンに事細かに通知されるそうです。

もちろん、現在の新型インフルエンザ等対策特別措置法では上記のような措置は難しいと考えられます。ですが私たちはその先に、そのような制限や監視まで自ら望むのでしょうか?

すでに専門家の方達が問題点を指摘していますが、審議の期間がほとんどないまま改正案が成立した特措法による緊急事態宣言は最大2年間引き延ばすことができ、その発動や解除に国会の審議はいらず、報告のみで良いとされています。

この要件については歯止めとして十分でしょうか?

いったん権力に個人の自由を制限する権利を与えれば、それはどんどん加速する恐れがあります。個人の生活を細かに追跡するシステムがいったん確立されれば、それは他の目的にも転用できるでしょう。

感染は拡大しないほうがいいに決まっています。しかしそれを止めるために、私たちは決して明け渡してはならない何かまで明け渡すことになるかもしれません。

高まる市民の声で私たちの生活を制限・監視する力を権力に与え、もしそれが暴走した時、私たちにそれを止める力はあるでしょうか?

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最終更新:4/5(日) 14:51
BuzzFeed Japan

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