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船からトラックまで 水素ラッシュを進めるトヨタ

4/6(月) 10:15配信

ITmedia ビジネスオンライン

 だいぶ以前からそうではないかとは思っていたが、トヨタの辞書に「選択と集中」という言葉はやっぱりないらしい。コロナ騒ぎに気を取られている間に、無視できないリリースがどんどん出されていた。内容を見ると、中国の電気自動車メーカーBYDと提携して中国向けのEV開発を進める発表をしたかと思えば、パナソニックと車載用角形電池事業の新会社設立を発表している。

新型MIRAI用にコンパクト化されたことを生かして、船内のスペースに収容されるMIRAI用のFCスタック

 すわトヨタはEVに全面的に注力するのかと思えば、自動運転でも相次いで新たなリリースを連発する。トヨタの自動運転ソフトウェア先行開発部門であるTRI-ADとダイナミックマップ基盤(DMP)が自動運転用の高精度マップの実証実験を発表。返す刀で、サイバーセキュリティ研究チームであるTencent Keen Security Lab(Keen Lab)から指摘されたコネクティッドカーの脆弱(ぜいじゃく)性への取り組みを発表した。

 未来的な話ばかりかと思えば、突如、塗着効率で世界一を実現などという、超現実的なレベルでのコストダウン手法を発表してみせたり、中古車の販売システムの大幅変更を発表したりと、まさにあらゆる方面に対して矢継ぎ早である。

 週刊ペースではとても消化しきれないほどの勢いで発表が続く。頑張って書いたとしても日刊トヨタジャーナルになってしまいそうだ。という中で、今回はトヨタが3連発で発表した水素関連の取り組みをまとめて書こうと思う。

中部圏水素利用協議会

 それぞれが複雑に絡み合う話ではあるが、最初に挙げるのは「中部圏において水素の大規模利用の可能性を検討する『中部圏水素利用協議会』を立ち上げ」というリリースだ。

 ご存じの通り、脱CO2にはいくつかのアプローチがあり、電気を使うもの、水素を使うもの、バイオ燃料を使うものあたりが有力だ。今の時点でリードしているのは電気だが、エネルギーというのは歴史上、何時の時代もミックスして使われてきた。過去に学べばどれか一つだけでOKとはならない。

 さて、水素には、現状まだいろいろと課題がある。化石燃料の改質によって作られるという製造時の問題、高圧圧縮しないと輸送や積載に問題が生じ、その圧縮時に大量のエネルギーが必要とされる問題、分子が小さく透過しやすいことから保管が難しい問題などだ。もう一つ大事なのは、インフラの充実と水素の消費拡大が卵と鶏の関係になっていて、どちらも先に進まない。このあたり水素の可能性については過去に書いた記事を参照して欲しい。

 しかしながら、水素には水素に適した用途があるはずだし、現状課題とされる問題も技術的に解決される可能性はある。そういう問題を多くの企業が連携しつつクリアしていこうとするのが今回の取り組みだ。参加企業は以下の通り。

協議会 参画企業

・出光興産
・岩谷産業
・JXTGエネルギー
・住友商事*
・中部電力
・東邦ガス
・トヨタ自動車*
・日本エア・リキード合同会社
・三井住友銀行*
・三菱ケミカル

※2020年3月6日協議会設立時点。50音順。*は事務局。

 当面の目標として「2030年に水素利用量年間30万トン」を目指して、水素の利用への社会実装実験を開始する。具体的な検討内容は以下の通りだ。

・海外からの水素大規模輸送が始まることを想定した、中部圏での水素受入拠点から需要サイドまでのサプライチェーンの検討
・発電・石油産業等の各製造業の企業活動やモビリティでの利用など、中部圏全体での水素利用量のポテンシャルの試算
・各々の需要サイドで受け入れ可能な水素コストの検討
・実現に向けた技術面・金融面・制度面での課題を整理し、必要な施策と社会実装につながる事業モデルを提案

 そうした中で、トヨタそのものは何を進めていこうとしているのか?

 全ての中心にあるのは、MIRAIに搭載される燃料電池スタックだ。MIRAIはいわずと知れた燃料電池車(FCV)で、水素と酸素を反応させて発電するFCスタックを備えている。トヨタ幹部によれば、「車両価格741万円のMIRAIはクルマの価格としては安くないが、高出力の燃料電池スタックだと考えると、強力な価格競争力を持っている」とのことで、クルマ以外の燃料電池需要に対して、MIRAIのFCスタックの持つポテンシャルは大きい。

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最終更新:4/6(月) 16:24
ITmedia ビジネスオンライン

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