数多くのエンターテインメント小説を世に送り出してきた月刊小説誌「小説現代」(講談社)が、約1年半の休止期間を経てリニューアル復刊した。連載ものが中心だった誌面づくりを脱し、長編小説の一挙掲載を目玉に毎号読み切れる雑誌を目指す。
「SNSでの反響が大きく実売も好調。中心読者だった50~70代に加えて、これまで手に取ったことのない若い人が買ってくれている印象がある」。復刊第1号となった今年2月発売の3月号について、塩見篤史編集長(44)はそう語る。
誌面刷新の背景には売れ行き不振がある。柴田錬三郎や山岡荘八、松本清張ら当時の人気作家が名を連ねた昭和38年の創刊号は初版21万部。最盛期の43年には43万部を超えたが、休刊前の平成30年10月号は1万部にまで落ち込んでいた。
「せっかく手にとってもらっても、連載ばかりで読んでもわからない、との声もあった。どうすれば新しい読者を掘り起こし、大きな波をつくれるか-。紙の小説誌の役割について考えた末の答えが毎号読み切りというスタイルだった」と塩見さんは話す。リニューアルを見据え、30年に真藤順丈さんの小説「宝島」を一挙掲載。単行本の発売前から注目され、直木賞受賞につながったことも自信になったという。
リニューアル号には乱歩賞作家の薬丸岳さんによる長編「告解」のほか、朝井リョウさんらの読み切り短編を掲載。人気お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実さんのエッセーやジャーナリスト・石戸諭さんのノンフィクションも収め、ジャンルの幅は広い。最新の4月号では今村翔吾さんの原稿用紙約700枚に上る歴史長編「じんかん」を全体の半分近くのページ数を割いて一挙掲載した。
雑誌での連載完結後に単行本として出版し、数年後に手ごろな文庫でまた売る-。文芸書出版では、そのサイクル全体で採算をとるビジネスモデルが続いてきたが、「漫然と連載して本を出すという手法では到底売れない時代」と塩見さんは言う。「小説誌の大きな存在意義は才能の発見と育成。一冊一冊、新人が勝負できる場をつくっていきたい」
エンターテインメント作品を収める小説誌だけでなく、純文学作品の発表の場である文芸誌でもリニューアルが相次いでいる。
昭和21年創刊の月刊文芸誌「群像」(講談社)は今年1月号から表紙デザインを一新し、ノンフィクションや批評を積極的に掲載。「文」×「論」をコンセプトに、現代社会との接点を強く意識した総合雑誌化を進めている。
昨年4月発売の夏号で大がかりなリニューアルをした季刊文芸誌「文芸」(河出書房新社)が掲げるのは特集主義。「韓国・フェミニズム・日本」を特集した7月発売の秋号は昭和8年の創刊号以来となる3刷を記録した。「文芸誌にしては誌面にイラストも多い。20~40代の女性読者が増えた手ごたえがある」と坂上陽子編集長は話す。
出版科学研究所によると、小説誌と文芸誌を合わせた年間発行部数は5年前より30%以上減った。同研究所の水野敦史研究員は「定期的に雑誌を読む習慣が薄れる中、1号だけでも手に取ってもらう手段として『読み切り』や『特集主義』といったスタイルが注目されている」とみる。(文化部 海老沢類)
最終更新:4/6(月) 11:58
産経新聞































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