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『シザーハンズ』衣装デザインに秘められた、登場人物の心理とは ※注!ネタバレ含みます。

4/6(月) 19:12配信

CINEMORE

名作の誕生から30周年を経て

※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


 この名作の誕生から今年で30周年。確か、私の生まれた地元では『ホーム・アローン』(90)と同時上映され、中学生だった筆者は『ホーム・アローン』目当てで劇場に足を運んだのに、映画が終わる頃にはすっかりあのハサミ男の虜になっていた。あの頃、20代だったジョニー・デップも今や50代半ば。マコーレー・カルキンも今年で40歳。どうりで私も歳をとったわけだ、としみじみ思う。

 懐かしの名画を紐解くことは、どこかタイムカプセルを開けるのと似ている。本作との久々の対面に自分はどんな思いをよぎらせるだろう・・・ドキドキしながら映画が始まる。最初に映し出されたのは、雪降る「20世紀フォックス」のロゴマーク。今やディズニーの買収によってその名称とロゴも様変わりしたのを思うと、なんだかこの時点で無性にジーンとしてしまった。

 本編を見ながらハッとすることも多い。“ママ役”が名女優ダイアン・ウィーストだったり、“キムのボーイフレンド”役が『ブレックファスト・クラブ』(85)のアンソニー・マイケル・ホールだったことにも懐かしさがこみ上げた。また、“パパ役”が『リトル・ミス・サンシャイン』(06)でアカデミー賞助演男優賞を獲得したアラン・アーキンだったなんて、過去の鑑賞時にはこれっぽっちも意識したことがなかった。

 時代は巡り、記憶はゆっくりと曖昧になっていく。しかし面白いもので、あのハサミ男の鮮烈な印象は微塵も変わっていない。彼だけは、色あせることなく、相変わらず両手をチョキチョキ鳴らしながら独特すぎる存在感を放ち続けていた。あの忘れ得ぬラストシーンから現在に至るまで、あの城の中で時が止まったままの30年間が、ずっと続いていたかのようだ。

原点だった10代の頃のスケッチ

 本作はティム・バートン監督が10代の頃に着想し、スケッチブックに描き留めておいたキャラクターが全ての原点となっている。のちにそのイメージを膨らませていくうちに、バートンは「これって、10代の頃の俺自身なんじゃないか?」と感じたのだとか。いつも孤独を胸に抱き、人間関係も上手くいかない。それでいて周囲からはすぐに誤解されてしまう。そんな10代。

 「誤解」は本作を紐解く上で重要なキーワードだ。そもそも本作で記念すべき初タッグを組んだジョニー・デップも当時、ティーン・アイドルとしての世間の認識と、自分はそうではないのだ、という思いのギャップに苦しんでいたと言われる。それはそのまま、本作の主人公エドワードが苦しむ「誤解」ともオーバーラップし、作り手、演者、主人公とをつなぐ一本の線となっていった。

 大好きなものに触れたいのに触れられない。愛する人を抱きしめたいのに、それもままならない。その胸の内側の苦しみを柔らかなファンタジー的世界観と「フランケンシュタイン」的なおとぎ話の構成で綴ることで、本作はより多くの人たちの共感へと昇華されていった。2度目、3度目の鑑賞でますますエドワードのことが好きになっていくのは、おそらく我々が、外面ではなく彼の内面をそのまま見つめ、すぐさま誤解を乗り越えられるからなのだろう。

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最終更新:4/6(月) 19:12
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