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村本大輔が堀潤に聞く「分断を前に私たちができることは?」

4/6(月) 11:09配信

ハフポスト日本版

世界のあちこちで分断が起きている。

アメリカでも、日本でも、SNSの世界でも、分断を感じない日々はない。

ジャーナリスト堀潤さんは、そんな世界の分断に対してひときわ問題意識を持っている。彼は忙しいスケジュールを縫い、福島、沖縄、シリア、カンボジア、香港、ガザ、北朝鮮、アメリカと世界中を飛び回り、世界の分断の最前線を伝え続けている。


現在公開中の堀潤さんの2本目の映画作品『わたしは分断を許さない』は、タイトルどおり分断をテーマにしたドキュメンタリー映画だ。世界の様々な地域で起きる問題の根底には人々の分断があるのではないか、分断が疑心暗鬼を生み、それはやがて差別や排斥につながるのではないか。そんな危機感が堀さんに、この映画を作らせた。

分断を乗り越えるためには、まず知ること、知ることの苦しみを乗り越えること、そのためには主語を小さくすることが大事だと堀さんは語る。それはどういうことなのか。

今回は、堀さんと旧知の間柄のお笑い芸人、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんに聞き手になっていただき、この映画の狙いや、分断を前に私たちができることは何か、率直にぶつけてもらった。

「知る」ことは怖くてしんどいこと、でも大切なこと

村本:社会を良くするために大事なことを1つ挙げるとしたら、堀さんは何を挙げますか。



堀:社会が良くなるかどうか、ということの前に、みなさんに知る機会がもっと増えればいいなと思っています。

世の中には、悪意はないけどただ知らないだけ、それが回り回っていろんな問題や分断につながっているような気がするんです。

この映画を作ったのも、世界のいろんな問題に対して、今まで抱いていたイメージと実態は違うんだなと観た方に思ってほしくて作ったんです。

震災発生から一週間ぐらい経ったころ、以前からお付き合いのあった福島市内の銀行員の方の車に乗せてもらった時の話です。

その方は震災の日、給水車の列に子供と一緒に並んでいて、その時雪が降ってきたことについて、「あれは放射能に汚染された雪だったんですね。報道の皆さん、知っていたのなら教えてほしかったです」とおっしゃったんです。

実際、そこはホットスポットだったことが後にわかりました。

もちろん、事故当日にはわからなかったことも多いし、テレビではいろんなことに配慮しないといけないし、放射性物質の飛散予測も放送できなかったんです。

しかし、当時実際に避難された方は、「避難しろとさんざん言われたけど、どの方角に放射性物質が飛んでいるからわからない、だから結局、放射性物質の飛んでいる方向に逃げてしまった」と言うんです。

当時、いろんな混乱があって、メディアも全ての正解を知っていたわけではないですが、だからと言ってしょうがなかったで済ませるわけにはいかないですよね。

放射能のこと1つとっても、知らないで決断するのと知っているのとでは、たとえ同じことを選ぶとしても全然違うと思うんです。自分で知った上で決めることができないというのは、すごく尊厳を奪う行為です。



村本:その時、メディアがそういった情報を伏せた理由って何なんでしょうか。



堀:1つはパニックを誘発する可能性があるからです。



村本:ちょうど今も新型コロナウイルスの問題で、311の時と似たような状況だと思います。少し前、ダイヤモンド・プリンセス号に岩田健太郎さんが乗り込んで、船内をゾーニングできてないことを動画で知らせたりしていましたけど、そういうことするなって声も多かったですよね。

確かに、僕らが正確な情報を知ったとしても、ちゃんとした選択を取れないかもしれない。パニックを起こすぐらいなら、知らせない方がいいこともあるってことですか。

堀:それはすごく大事なポイントで、パニックを助長するという国の言い分にも一理あります。

福島の楢葉町では、町議の娘さんが原発で働いていたので、いち早く情報を仕入れて7000人の町民をいわき市に避難させる決断をしたそうです。でも、いつもなら車で20分程度の距離なのに、その時は道路が渋滞して8時間かかったらしいんです。

パニックってそういうことで、許容量を超えてしまった時、動けなくなってしまって、その後何が起こるかわからない。だから、日本政府はあの時、3キロ、10キロ、20キロと除々に避難範囲を広げていくことでパニックをコントロールしようとしたわけですが、それは本当に難しい決断だったと思います。

でも、その時本当のことを知らされない人が出てしまう。それをしょうがないですませずに、その事実を共有していくことで、避難時の道路はどう整備すべきなのかとか、普段の避難訓練のあり方とか、町の作り方をどうするのかなどを議論すべきなんです。

今回の新型コロナウイルスへの対応などを見ていても似ている部分があると思います。知らないままに選択させられる疑心暗鬼って、すごく今の社会を重苦しくしている気がします。

村本:この映画には原発訴訟や沖縄の基地問題、シリアや香港、ガザの問題などいろんなことが出てきて、それらの現実はすごく重たいですよね。知ることは大事だとおっしゃいますけど、人によってはそういう生々しい現実、重すぎる現実を見たくないって人もいるじゃないですか。知ったところでどうすればいいかわからないからと。

この映画を観る観客にそれらの事実を知ってもらって、堀さんは何を考えてほしいと思っていますか。



堀:すごく大切な問いだと思います。知ることってしんどいことで、簡単なことじゃないですよね。それに、知らなかったからこそ決断できるということも時にはあるでしょう。それが良い方に回っていけばいいのですが…。

今回の映画で選んだ現場は、実はほとんどが日本人が関わりのある場所なんです。そして、日本へのメッセージも発しています。

例えば、ガザでは3月11日の前後には子どもたちが東日本大震災の慰霊で凧揚げをしてくれているし、ヨルダンの難民キャンプでは日の丸のついたランドセルを背負った子どもたちがたくさんいます。

香港の若者たちも日の丸振りながら、自由主義の国として連帯を求めているんです。でも日本で「ガザってどこ?」って聞いても…。



村本:ほとんどの人は知らないですよね。



堀:そう。片思いですよね。これって寂しいじゃないですか。だから、僕はこの映画を観て知ってほしいんです。

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最終更新:4/6(月) 11:09
ハフポスト日本版

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