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コーチが実績のない若手選手に絶対に言ってはいけない一言【名伯楽 作る・育てる・生かす】

4/7(火) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【名伯楽・内田順三「作る・育てる・生かす」】#46

 プロ野球の支配下登録選手は1球団70人までと決まっている。球団は毎年、数人を戦力外にして、数人をドラフト会議で補充する。70人の中でやりくりしながら、チームは成り立っている。

 それまで在籍していた選手をクビ、あるいは放出してまで指名するのが新入団選手なのだ。チームの弱点を補うために、スカウトが長い年月をかけて視察し、指名に至っている。入団が決まった後は、最高で1億円の契約金が発生する。球団は入団前から大きな投資をしている。だから、一軍で活躍できるように育て上げるのが、私が長く務めてきた二軍コーチであり、二軍監督の職務なのである。

 50年間もプロのユニホームを着てきた。もちろん選手の「好み」はある。この世界で伸びる、成功する技術的、身体的な特徴の目安はある。しかし、スカウトの目は別物だ。私なら取らないな、と思うような選手でも、そのスカウトが球団に指名を推薦した「長所」が必ずどこかにある。そこが大事なのだ。

 もしコーチの私が「好みに合わない。この選手はダメだ」とレッテルを貼ってしまったら、後に一軍の戦力になるかもしれない機会を奪うことになる。球団目線でいえば、スカウトが発掘してから獲得するまでの時間や労力、球団が払った契約金などの先行投資も全てパーになってしまう。新人が育たなければ、チームの将来的な構想も破綻する。

■長所の隣に短所あり

 コーチになったばかりの頃、カープにいたベテランコーチから、こう言われたのを肝に銘じた。

「ダメだ、と言ったら最後。ダメ、という言葉を使わずに指導してみろ」

 実績がない二軍選手に「おまえはダメだ」と言ってしまったら、その選手はもう辞めなければならない。ダメと言う前に、長所を見つけ、伸ばす方法を考える。育成とは、本人の努力は言うまでもないが、コーチの手腕も大きな要素になる。

 私は新人と会う前には、必ず担当スカウトに「長所、短所、性格、育った環境」などを聞くようにしていた。

 事前に情報を入れた上で新人を見ると、いいところが見えるものだ。まずは長所を伸ばすことに主眼を置く。その上で短所を克服すべきか、薄めるべきかを考えた。

 打撃というのは、長所の隣に短所があることが多い。情報を入れずに感覚的な指導で短所の修正に取りかかると、いいところまで消してしまうことがある。だから、入団早々ではなく、少し時間を置いてから、慎重にやるべきと考えていた。

 2000安打を放つまでに成長した広島の新井貴浩、一度クビが決まっていたところから首位打者を獲得した嶋重宣は、「ダメ」と言うのを我慢し、辛抱を重ねた選手だった。

(内田順三/前巨人巡回打撃コーチ)

最終更新:4/7(火) 12:35
日刊ゲンダイDIGITAL

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