【メジャーリーグ通信】
新型コロナウイルスの感染拡大は、とどまるところを知らない。
感染者数が世界最多となった米国では、3月末から4月初旬にかけて、大統領のドナルド・トランプが「死者が10万人だったら、われわれは『よくやった』と言われるだろう」、「4月末までの30日間が『新型コロナウイルスとの闘い』で重要だ」といった発言を繰り返している。
3月初旬には事態を楽観視していたトランプの弱気ともとれる発言は、それだけ米国における「新型コロナウイルス問題」が深刻であることを示唆する。
その一方で、米国最多の感染者数を記録しているニューヨーク州では知事のアンドリュー・クオモが対策の最前線に立ち、「2024年の民主党の大統領候補」という声も上がっている。
「凡庸」「大いなるイエスマン」と言われていた副大統領のマイク・ペンスが新型コロナウイルス対策の責任者として存在感を高め、4月に入るとトランプの娘婿で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナーが記者会見に登場するなど、政府も総動員のスタンスを示している。
このような状況を受けて、米国の球界も非常の措置が取られている。
大リーグ機構は公式戦の開幕を5月中旬としているものの、実際には「6月に開幕できればよいほうで、7月に開幕できるかも怪しい」という声が聞こえる。
■マイナーリーガー救済に大物代理人の提案
また、大リーグ機構は大リーグと同様に開幕を延期したマイナーリーグに対し、選手への経済的支援を5月31日ないし公式戦開幕日まで延長することを公表した。
一般にマイナーリーグは「独立採算」と思われている。だが、実際には年俸を大リーグ各球団が負担し、選手の育成をマイナーリーグ球団に委託している。マイナーリーグの公式戦が行われない以上、選手は無給になっても不思議ではない。しかし、大リーグでは選手に対して当初の開幕予定日から60日間分の給与が前払いされることが決まったことを受けて、マイナーリーグの選手に対しても同様の措置が取られたのである。
あるいは「大物代理人」として知られるスコット・ボラスが大リーグ機構に、6月1日に開幕する162試合制と7月1日開幕の144試合制の案を提出したことも興味深い。
144はストライキにより開幕が遅れた1995年と同じ試合数であり、状況が異なるとはいえ根拠のない数字ではない。
しかも、チームの年俸総額に上限を設けるサラリーキャップ制の導入を巡って選手と経営者が対立し、「百万長者と億万長者の争い」と人々の支持を失った1994年からのストライキと異なり、今回は労使が連携している。一時的にせよ、新型コロナウイルスの感染拡大が「戦争」として捉えられている米国の状況が、経営者と選手の間の壁を取り払ったのである。
(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)
最終更新:4/7(火) 9:26
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