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【千葉魂】鳥谷新天地で輝く コロナ禍乗り越え、希望となる

4/7(火) 11:12配信

千葉日報オンライン

 3月10日、元阪神タイガースの鳥谷敬内野手の入団が発表された。鳥谷は千葉市内の球団事務所で契約とチームへのあいさつ、メディア対応を終えるとすぐに2軍のある浦和球場に向かった。こちらでもチームへのあいさつを行うとすぐにスーツを脱ぎ、ユニホーム姿となった。誰もが翌11日からの練習開始を想定していただけに驚いた。しかし、それこそがタイガースで一時代を築いた鳥谷という男が貫いてきたスタイルだった。

 現役時代には共に沖縄で自主トレを行ってきた井口資仁監督は、当時を次のように振り返った。「自分も練習をする方だと自負していたけど、彼の練習量を見てビックリした。とにかく朝から夜まで毎日、練習をしていた。朝と夜、1日2回ウエートをする姿を見て驚いたね。自分が出会った野球選手の中で一番練習をする」。タイガース時代から知る今岡真訪2軍監督も同じく、その練習姿勢を絶賛し「若い選手の良い手本になる。そして彼が入る事で化学反応は起きる。いや、もう起きている」と若手選手への好影響を期待した。

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 自分に厳しく自己鍛錬を重ねる男は空白の中でさらに想(おも)いを強くした。タイガース退団後は所属チームが決まらない日々が待っていた。年末年始は練習相手もいたが2月のキャンプインのタイミングからはキャッチボールの相手すらいなくなった。人に迷惑を掛けたくはない。野球界以外の仲間にもそれぞれの仕事がある。だから自分からお願いすることはあえてしなかった。自宅横の急坂を走り、自宅の敷地内で柔らかいボールを使ったティー打撃で感覚を確かめた。一番の日課は自宅のガレージでの壁当てだった。

 「2月に入ってからは家のガレージの壁が最高のパートナーだった」と当時を振り返り、鳥谷は笑う。早稲田大学を卒業して16年間。プロ野球の第一線で羽ばたき続けていた男は初めて孤独と向き合った。それは自分自身と向き合う作業でもあった。野球を続けることを応援してくれる家族の存在。そして自身の野球への想い。なによりも打って、走って、守れるプロ野球選手としての自身のあるべき姿を機会さえあれば見せることができる自信と自負を確認した。だから、黙々とガレージで汗を流し続けた。吉報を待った。

 マリーンズ入団が決まると「感謝の気持ちしかない」と第一声を述べた。芽生えたのは感謝の思いであり、新しい挑戦への期待。また野球ができることの幸福感だった。

 「グラウンドで野球をすることは今まで当たり前だと思っていた。今はグラウンドに立っていることが本当にありがたいことだと思っている」

 虎のスーパースターはグラウンドで笑顔を見せ、後輩たちに声を掛け、颯爽(さっそう)とプレーをしている。それは永遠に続くのかとすら思えた孤独の日々の中で自分と向き合い、気が付いた事。野球ができる幸せを逃すまいと改めて一瞬を大切にしている。

 「2月はできることは少なかったし一人で練習をすることも多かった。工夫をしながらやれることを探してやってきた。ただそういう経験をしたのは自分にとってプラスだと思う」と鳥谷。

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 マリーンズは新型コロナウイルス感染予防の観点から、3月末よりチーム練習が中止となった。プロ野球界だけではなく社会全体が我慢と制約を強いられている。悪化する状況に街はどこか重苦しい。そんな中で入団直後に鳥谷が発したコメントがある。

 「今の状況の中でできることは限られている。ただ、いろいろと気を付けながら、今できるベストなこと、それは人それぞれであるのだけど、今の自分の形を見つけ出すことが大事になってくると思う」

 何もできないのではなく、この状況下で何ができるか。何をすべきか。自分とは何か。今の自分の現在地はどこか。静かに己と向き合い、振り返る事はできる。息をひそめる日々は簡単には終わりそうもないが、その先に見える光を信じ、そのための準備を行いたい。いつか必ずスタジアムでプロ野球はプレーボールのコールがかかる。その時、鳥谷が新天地で躍動する。ファンの新たな希望となる。置かれた限られた条件下を不遇と嘆くことなく前を向き、大切なものを見つけた男が美しい感動を呼ぶ。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

最終更新:4/7(火) 11:12
千葉日報オンライン

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