「民泊投資で1カ月に10%の利益が出る」「競売物件投資をしないか。3カ月で5%の利益が出る」――。
こんなセールストークで顧客から2325万円を違法に集めたとして、茨城県警は目黒区のコンサルタント会社代表の柏木達哉容疑者(38)を出資法違反(預かり金の禁止)の疑いで逮捕した。
元本保証の出資法違反は、金融犯罪の典型で、メディアもそれほど大きくは扱わない。2月12日の逮捕を報じたのは地元メディアだけ。全国の約150人から約3億6000万円を集めたというだけに奥深さは感じられるものの、大方の記憶には留まらないニュースである。
だが、柏木容疑者は保険ファイナンシャルプランナー(FP)の資格を生かし、顧客の資産を聞き出したうえで怪しい金融商品に誘い込む「金融詐欺師村」の住人として知られていた。
「最近、生命保険会社などのFPが、マネードクター、金融のホームドクターといった呼び名で、老後の生活設計などに関わることが多くなっています。その際、通常の生保商品では利回りが出せないと、『元本保証の高利回り』を謳った怪しい商品に誘い込むことがある。そうした商品には、FPの「仲間」が関与、紹介料などの形でキックバックを得ます。柏木は、そんな詐欺的ネットワークの一員でした」(金融詐欺に詳しい弁護士)
柏木容疑者は、外資系生保の草分けであるアリコの日本法人で生保営業を始め、アリコがメットライフに売却されたのを機に代理店に移った。生保といえばかつてはセールスレディが販売の中核を担っていたが、今は、多数の生保商品を扱う代理店が存在感を増している。
柏木容疑者は、あんしんFPパートナー(現・FPパートナー)、フィックス・ジャパン、ホライズンといった代理店を経て、逮捕時のBloom&Customize代表を務めていた。
FPパートナーのFPとして営業に訪れ、如才ない語り口で金融知識を披露、その一方で人懐っこさのある柏木容疑者に5000万円近くを投じた栃木県在住の夫人のケースは、柏木容疑者を通じ、「金融詐欺師ネットワーク」に填められてしまった典型だろう。
夫人は、アフラック、アクサ生命、オリックス生命などの通常の保険商品を契約する一方、その豊富な資産に目を付けた柏木容疑者によって、タイ鉱山投資や海外リゾートホテルなどのタイムシェアオーナーシステムに投資、その大半を焦げ付かせている。
ONKという会社が行っていた鉱山投資は、タイ皇族が関与する鉄鉱石鉱山に投資すれば、元本保証で月利3%を得ることが出来るというもので、JLBという会社のタイムシェアオーナーシステムは、海外ホテルやコンドミニアムの「客室を借りる権利」は、自らも利用できるだけでなく、他人利用で紹介料も入るというもの。
ともに「眉唾」だが、夫人は「一流生保の代理店FPという肩書と熱心な勧誘を信じてしまいました」という。確かに、名刺には一流生保11社、損保5社の社名が並び、ファイナンシャル・プランニング技術士、相続診断士、MDRT(世界のトップクラス保険営業職)などの肩書が付け加えられ、さらには出身大学の同窓会会長の名刺も添えていた。
「元本保証で年利50%近い金融商品を信じるのが間違っている」と、批判するのは簡単だが、柏木容疑者は全資産を公開、裸になった依頼者を民事・刑事の責任を問われないようにむしり取るテクニックに長けていた。
「鉱山投資もオーナーシステムも、柏木容疑者が開発したものじゃない。だから、『私も信じた』という抗弁が成り立つ。実際、最初のうちは約束通り、金利を支払って安心させ、さらに追加投資に誘い込む。その際、自分も投資して、あるいは投資したことにして信用させていました」(前出の弁護士)
金融詐欺師村といって差し支えないのは、たとえばONK、JLBとも、柏木容疑者のアリコ時代の先輩の会社が代理店になっていた。この会社は全国に支社を持つ中堅金融会社。カネは柏木容疑者ら募集人からこの会社を通じてONKやJLBに流れるのだが、プロが騙されるとは思えず、確信犯だろう。
また、金融詐欺師ネットワークは、情報を共有して助け合うだけでなく、互助組織的な一面もある。悪評が高くなった柏木容疑者は、前述のように、代理店を転々としたあげく、自ら会社を立ち上げざるを得なかったが、その間、生保FPの先輩後輩友人らの名義を借りて顧客と契約、その上で怪しげな自らの犯罪に引っ張り込むことが多くなった。
もちろんタダではない。仲介手数料を渡す仕組み。柏木容疑者のビジネススタイルは知っているのだから、何人ものFPが犯罪を幇助したことになる。こうした現状を、生保各社が知らないわけではない。
令和2年1月22日の日付けで、外資系生保の営業推進部長が、代理店各位に<保険募集人による顧客への投資勧誘につきまして>と題し、こう呼びかけている。
<一方、最近の事象として、保険募集人による顧客への投資勧誘に関する苦情が散見されております。具体的には、海外鉱山投資、海外投信や不動産購入、民泊事業投資、未公開株購入、仮想通貨購入などが挙げられ、保険加入後に、より高利回り、高配当の投資として勧誘され、苦情に至るケースが見受けられます>
保険会社もわかっているのである。 特筆すべきは、柏木容疑者の金融ネットワークは、氷山の一角であること。また、ひとりひとりの規模は小さく、ONKやJLBのようなシステムを立ち上げるわけではないので集めた金額は数億円単位で、被害届を受けた警察も熱心ではない。
柏木容疑者の全国の被害者が、警視庁、栃木県警、埼玉県警、富山県警、奈良県警、新潟県警などに相談しているが、受理して捜査、摘発に至ったのは茨城県警だけである。
金融詐欺師ネットワークは、他にも数多く、国内各所に網を広げ、生保FPなどの肩書を利用、犯罪を繰り返しているのに、都道府県警が情報共有しない警察の縦割りのカベもあってなかなか捜査が進まない。ONK、JLBなど詐欺システムすら野放しだ。
こうした現状を、生損保業界と捜査当局が、もっと真剣に手を結び、一掃のうえ、改善することが求められている。
伊藤 博敏 (ジャーナリスト)
最終更新:4/7(火) 15:01
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