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コロナで「先が見えない」大学院生に募る不安…授業は未定、研究もできず「うつ状態です」

4/7(火) 10:05配信

弁護士ドットコム

新型コロナウイルスの感染拡大により、「オンライン授業」に踏み切る大学や大学院が増えている。

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しかし、大学院生は学部生とは異なり、授業を履修して単位を獲得すればよいわけではなく、研究をし、論文を書かなければならない。すでに学内施設を閉鎖している大学もあれば、緊急事態宣言がなされた後、研究室をはじめキャンパスへの出入りを禁止する大学もある。そのため研究を安心しておこなうことができず、不安を抱えている院生は少なくない。

実際に、院生からは「Wi-Fi環境やパソコンがなく、オンラインの指導を受けられない」「アルバイトがなくなり、学費を出せるか不安」「研究が思うように進まない」などの声が上がっている。

●図書館や設備の利用制限で「研究が進まない」

東京都内の文系大学院に通うユカリさん(匿名)は3月から、図書館や大学の設備をこれまでのように使えなくなり、研究が思うように進まなくなっている。

図書館の利用を制限している大学は少なくない。中には、閉室している大学もある。ユカリさんが通う大学の図書館も平日の利用時間が短縮され、土日は閉室。国会図書館や地域の図書館も休館となっているため、資料収集などに支障が出るようになった。

また、研究室への出入りも控えるようにいわれ、自宅での研究活動が推奨された。緊急事態宣言が出された後は図書室や研究室は入室禁止となる。これまでのように研究室のプリンターを使って無料で印刷したり、図書館でサイズが大きい資料をコピーしたりすることはできなくなった。

必要な文献や資料などはすべて研究室に置いているというユカリさん。自宅でできることには限界があると感じているという。

●「先が見えない」不安

さらに、学会や研究会もつぎつぎと中止が決まり、議論の場もなくなった。報告を予定していた院生にとっては、業績を積む機会が失われたことになる。延期になったとしても、開催時期は「未定」だ。「うつ状態になっている院生もいます」とユカリさんは語る。

ユカリさんの大学院ではゴールデンウィーク明けまで授業が休講になることが決定。指導はオンラインで受けるように推奨するなど、大学側もさまざまな取り組みをおこなっている。それでも「先が見えない」状態に不安を抱えている院生は少なくない。

小さな子どもがいる院生や研究者からは「子どもが常に家にいるため、研究に集中できない」「研究できる時間が減ってしまった」などの声も上がっているという。

●入国できない、研究がストップした…留学生への影響

留学生が抱えている問題も深刻だ。海外から日本にやってきた留学生の中には、日本に入国できなかったり、母国に帰国できずに就職活動に悩んでいたりする人もいる。ユカリさんの大学院に通う留学生は休学届を提出したという。

ただし、研究の性質によっては、大きな支障が出ていない院生もいる。日本から欧州に留学中のハルカさん(仮名)は、つぎのように語る。

「私はパソコンがあればできる研究をしています。学会や学内セミナー、教授とのアポイントメントも全てオンラインになっているので、オフラインで人に会えない以外にこれまでとの変わりはないです。強いて言えば、家でずっと研究しなければいけなくなったため、自分のモチベーションを保つことでしょうか。自己管理(特にスケジュール管理)をしっかりしないといけないなと思っています」

しかし、別の研究をしている留学生からは不安な声を聞くことがあるという。

「実験や他の国へ研究をしに行く必要がある場合は、コロナの関係で研究が止まってしまっているようです。論文提出への締め切りが不安だと言っていました」

●「実家の収入半減」「アルバイト無くなる」経済状況への不安

大学院生による有志団体「Change Academia」は、新型コロナ流行による大学院生への影響についてネット上でアンケートをおこない、146回答が集まった(「新型コロナ流行に関する大学院生の緊急実態調査」実施期間3月23日~31日:現在も回答を受付中)。

回答者の内訳は博士前期課程(76人)、博士後期課程(55人)、博士研究員など(7人)、修士修了者(新社会人)など「その他」(8人)だ。全体の37%が自分で学費を出している。

「Change Academia」の代表者によると、「学会がなくなったことで、予定していた業績がなくなった(調査ができなくなった)」などのほか、経済状況に対する不安の声が多かったという。以下は、実際に寄せられた声だ。

「アルバイトが無くなり、3月は無収入」

「実家の収入が半減した」

「講義開始の遅れで、TA業務の給料がどうなるか明示されていない。生活費の目処が立たない」

「内定が取り消しになった」

「データ収集や発信活動が停止しており、1年間の研究費を適切に使えないのではないかと不安」

「家族に迎えに来てもらうことで、その家族も同様に隔離となってしまい、本来働けるはずだった親の仕事にも影響してしまい、家計へのさらなる負担になっている(日本から外国に留学した院生)」

「進路に影響するのではないかと不安」

●「レッドゾーン」になっている研究室も…

また、中には教授に指導を受けられなくなったり、大学に来るよう言われたりするなど「レッドゾーン」になっている研究室もあるという。

アンケートには、つぎのような声が寄せられている。

「教授がコロナの話ばかりで、論文指導をしてもらえなくなった」

「研究のメインである遺伝解析を行えるほどのスペックがあるPCは、外部からのアクセスが禁止されているのでリモートワークができず、結局大学に行かざるをえない。また、植物の世話があるため誰かは来なければならない」

「感染が拡大し始めたセブ島に卒業旅行に行った学生を帰国翌日から研究室に迎え入れる」

「2月中に大学の隣でコロナ患者が発生したにも関わらず、(教授が)未だに『大学が封鎖されるか電車が止まるまでは研究室を封鎖しない』と公言」

「土曜日に外出自粛要請がかかっているため、学生には外出したくないという気持ちが充満しているものの、言い出せる雰囲気はない」

教授に頼まれれば、断ることができない院生も多い。院生の健康を守ることも必要だ。研究室のあり方も問われている。

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:4/7(火) 10:05
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