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新型コロナ対策外出禁止令のなか、肝いりのストリーミングサービスQuibiが始動

4/7(火) 22:15配信

Movie Walker

アメリカ現地時間4月6日、最新ストリーミングサービスのQuibiが鳴り物入りでサービスを開始した。Quibiとは、Quick Bites(さっと一口で食べる、の意味)からきており、ハリウッドの重鎮ジェフリー・カッツエンバーグとシリコンバレーの実業家メグ・ホイットマンが10分以内の短い映像だけを配信するサービスとして約17億5000万ドル(約1852億円)の資金を調達し設立。

【写真を見る】“外出中の人々”をターゲットにした配信サービスQuibiがスタート!外出禁止令でストリーミング戦線は佳境に

カッツエンバーグは、パラマウント映画からディズニー社映画部門へ移り、そして映画監督でプロデューサーのスティーブン・スピルバーグとゲフィン・レコード設立者でプロデューサーのデヴィッド・ゲフィンと共にドリームワークスを設立、現在はドリームワークス・アニメーションの最高経営責任者を務めている。

一方のメグ・ホイットマンは、P&Gなどの消費財メーカーからディズニー社の製品部門に移りディズニーストアの開店を指揮。その後インターネット・オークション・サイトeBayやヒューレット・パッカード社のCEOを務めた。2010年にはカリフォルニア州知事選にも出馬している。

2人の業界有力者が飽和状態の配信業界に新規参入するにあたり思い描いたのは、外出先でも気軽に観られる10分以内の映像をメインにしたサービスだった。ドラマやトーク番組、そしてニュース番組を短い映像にして、人々が外出先に、電車の中や待ち合わせ中の友人を待っている間などにさっと観られる映像を提供し、既存のストリーミングサービスのニッチをねらった。

あくまでもNetflixやDisney+などの腰を据えて観るタイプのサービスとの併用として、サブスクリプションの金額も月額4.99ドル(広告入り)、7.99ドル(広告なし)と他の競合サービスよりも廉価に設定されている。

4月のサービス開始は昨年のうちからアナウンスされていたもので、新型コロナウイルスの影響を受けた変更はない。だが、当初のターゲットである“外出中の人々に向けたサービス”という想定は大きく覆されてしまった。本日開始されたサービスは3か月間無料で利用でき、7月になったら課金がスタートする。現在の見込みでは、新型コロナウイルスによる外出禁止令の解除は早くても4月末と言われており、7月の段階で人々が今まで通り公共交通機関を使い通勤・通学したり、バーで友達を待つという日常を取り戻している保証はない。そんななかでサービスを開始したQuibiは、課金顧客をキープできるのだろうか?

他方、いまがストリーミング・サービス始動の絶好のチャンスだという見方もある。3月半ばの外出禁止令以降、市場全体が落ち込んだ瞬間を除いてNetflixの株価は上昇傾向にある。本日(4月6日)の終値は379.96ドルで、過去最高値を記録した2018年7月の408ドルに近づいてきている。教育機関も5月末の学期末までの再開は難しく、このまま長い夏休みに突入してしまうだろう。

子どもがいる家庭ではしばらくの間、Disney+の豊富でキッズ・フレンドリーなコンテンツが必要不可欠になる。5月にサービス開始を予定しているHBO MAXは先週末よりおよそ500時間分のオリジナル作品や兄弟会社であるワーナー映画作品を無料公開し、メンバーシップ獲得への助走を始めた。この無料配信にHBOの人気作品の「ゲーム・オブ・スローンズ」や「チェルノブイリ」は含まれていないが、外出禁止令発出以降HBOの視聴時間は4割以上伸びているという報道もある。

さらには、短いコンテンツを配信するのはQuibiだけではないということ。家に篭っている人々はYouTubeで、Instagramで、Facebookで映像を観て、さらには毎日行われている大統領や知事・市長の記者会見をテレビのニュースやライブ・ストリーミングで確認し、ZoomやFaceTimeでの家族・友人との会話を楽しんでいる。可処分時間を争う相手は、既存のストリーミング・サービスだけではない。

では、Quibiのコンテンツはどうだろうか?ちなみにQuibiの目玉は10分間の短いコンテンツというだけでなく、Turnstyleと呼ばれるスマホ画面の縦でも横でも映像を観ることができる特許技術だ。このローンチにおいて約50作品のオリジナルコンテンツを用意し、1年間で175作品まで増やす。さらに毎日3時間分のコンテンツをアップロードするという約束もしている。

本日配信開始されたオリジナル・コンテンツには、リアム・ヘムズワースとクリストフ・ヴァルツが共演するスリラー映画『Most Dangerous Game』、チャンス・ザ・ラッパーがMCを務めるMTVの人気番組「Punk’d」、LAレイカーズの人気バスケットボール選手レブロン・ジェームズのドキュメンタリー「I Promise」、ジェニファー・ロペスらが1ミリオンドルを一般人に贈与するリアリティ番組「Thanks a Million」、ニコール・リッチーによるバラエティ番組「Nikki Fresh」など、バラエティに富んでいる。

これらのコンテンツのほかに、マリブの海をリラクゼーション映像に仕立てた「The Daily Chill」や、NBC、BBC、スペイン語圏向けのTelemundo、ゴシップニュースのTMZなどのニュース番組は平日毎日更新される。確かにTurnstyleの技術は高度で、映像を観ながらスマートフォンを縦にしても横にしてもスムーズに映像が切り替わる。最初はおもしろいので縦にしたり横にしたりして観ていたが、例えばシリアスなドラマを観るのに画面を切り替える必要があるだろうか?

気に入った作品であれば、1度目は横で2度目は縦というように2度観ることもあるかもしれないが、リアリティ番組やニュース番組を2度観ることはないだろう。言うまでもなく、ストリーミング・サービス成功の鍵はコンテンツである。サービス開始当初はコンテンツ数の少なさに疑問が呈されたDisney+も、同じ映画や番組を繰り返し観る子どもたちにとってはなんの問題も生じなかった。

ベイビー・ヨーダという人気キャラクターも生まれ、ライセンス契約された商品も市場に出回っている。今後開始されるHBO MAXも、Netflixとの熾烈な争奪戦の末にスタジオ・ジブリ作品の配信権を取得している。3か月の無料お試し期間が終わるまでに、Quibiは視聴者の心をつかむことができるのだろうか。アメリカ住民の約3分の2が自宅に留まるいま、ストリーミングの世界でも激戦が繰り広げられている。(Movie Walker・文/平井伊都子)

最終更新:4/7(火) 22:15
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