【桂春蝶の蝶々発止。】
新型コロナウイルス騒動によって、イベント関連会社、自営業、飲食店などが軒並み危機に立たされています。その中で、今日は「舞台を中心とする芸人のいま」についてお伝えいたします。
私も彼らも、舞台の仕事をすべて失いました。舞台の代替案として、ユーチューブなどでのテレワーク配信を続けています。それはいいのですが、残念ながらほとんど収入に直結していないのが現状です。最初はご祝儀的な感じでお金が振り込まれることはあったようなのですが、大体今は観客が無料で視聴するコンテンツとなってしまっている。
特に、落語などは生で披露するものであって、画面で見せることで魅力が半減してしまうかもしれない。それでも頑張って配信し続けています。
これはもはや、お金の問題ではないのかもしれません。みんな何かを表現するために芸人になった。お客さまに笑っていただくことができないのが最も痛手なのです。お金は要らない。とにかく何かを発信していたい。いま噺家が必死にユーチューブでやっていることは、「早く平和な世の中になってもらいたい」という祈りでもあり、「世の中が平和を取り戻したとき、ぜひ劇場に来てもらいたい」という署名運動のようにも見えます。
そうでなくても不安定な業界。まったく見通せない未来への不安。まったく稼ぐことができない日々。ウイルス感染の恐れ。そして、お笑いの象徴的存在だった、志村けんさんの死。
実は、精神的に病んでしまう芸人も続出していることも、とても心配です。いま人間に必要なのは、何でもいい、とにかく安心できること。素敵な言葉によって、恐怖で凍てついた心を溶かしてあげることです。
芸人さんたちには、この言葉を贈りたい。
「人生はサーフィンだ」
私の父、二代目桂春蝶が生前よく言っていました。波乗りの波は一時たりとも同じものではない。海面は常に不安定で、サーフィンはその不安定さを楽しめるかどうかだと。その不安定を楽しむことこそが“波に乗っている”状態であると語っていました。
芸能界はサーフィン。現状でこれを理解するのは一等難しいが、それでも負けじと、その矜持(きょうじ)を持って生きている演芸人がいる。今だけでいい。ユーチューブなどで、あまり知られていないが腕のある噺家さんを見つけてあげてください。
断言します。テレビに出ている芸人は今は応援しなくて結構です。彼らは「食べていける」人たちですから。舞台という機会を奪われて、食べていけない人たちを、今だけでいいから応援してあげてください。とてつもない原石が見つかるかもしれません。
どうか、皆さんの温かい支持を、よろしくお願い申し上げます!
■桂春蝶(かつら・しゅんちょう) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。
最終更新:4/8(水) 16:56
夕刊フジ






























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