【自決50年 令和にみる三島由紀夫の世界】
『潮騒』は過去4回も映画化されている。最初は1954年に久保明と青山京子のコンビで谷口千吉監督。2回目は64年に吉永小百合と浜田光夫で森永健次郎監督。71年に森谷司郎監督で朝比奈逸人と小野里みどり。4回目は西河克己監督で山口百恵と三浦友和。
なぜ観客を魅了するのか。これまでの三島由紀夫の作品と違い、難解さが影を潜め定番の青春小説だからだという。今回は記念碑となる最初の谷口監督版に的を絞る。
ストーリーはこうだ。漁師の18歳の新治はある日、見かけない少女と浜で出会う。彼女は村の有力者、宮田照吉の娘、初枝だった。
親しくなった2人は雨の休漁日に監的哨跡であいびきの約束をする。先に来ていた新治はウトウトしてしまう。気がつくと濡れた肌着を脱いで乾かしている初枝がいた。
有名なシーンだ。裸を見られたと思った初枝は新治にも裸になるように促して、このせりふ。
「その火を飛び越して来い」
そして抱き合う2人。だが新治を好いていた灯台長の娘、千代子が目撃。嫉妬した千代子は周囲に告げ口をする。そして騒動が広がった-。
この小説は新潮社から書き下ろしで刊行された。するとたちまち映画化権の争奪戦が勃発したほどの人気だった。
映画化が決まると、三島は当時の水産庁に都会の喧騒(けんそう)に毒されていない島はないかと問い合わせたという。
そして紹介された島の一つが伊勢湾に浮かぶ神島だった。三島はすぐに神島に行き、自分の目で確かめ、そこで撮影するならOKだと東宝に伝えた。
後に、記者にそこをなぜ舞台に選んだのかと問われ、「日本で唯一パチンコ屋がない島だったから決めた」と答えた。
三島は完成した映画の試写を見て、大変気に入った。「この映画の成功は配役の成功にあったと思われる」と語り、都会的な久保明より青山京子をべた褒めだった。
脚本を作家の中村眞一郎に依頼しているが、これは以前自分の小説が映画化された際、脚本の言葉の使い方がメチャクチャだったことに怒ったことがあったからだ。
今でこそ珍しくはないが、鳥羽市では、映画のヒットで撮影場所をちゃっかり観光コースとして商業利用。先見の明があったようだ。(望月苑巳)
■潮騒(1954年) 谷口千吉監督、配給東宝。出演は久保明、青山京子、三船敏郎、上田吉二郎、沢村貞子ら。54年度のキネマ旬報ベストテンでは圏外の第19位。
69年の東大全共闘との伝説の討論会を収めたドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が公開中。
最終更新:4/8(水) 16:56
夕刊フジ































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