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【舛添要一が語る世界と日本】 感染データのどこに注目すべきか

4/8(水) 13:04配信

ニュースソクラ

緊急事態宣言は不届き者への心理的圧迫ぐらいか

 安倍首相は、4月7日に、緊急事態宣言を発出する方針を固めた。

 これまで新型コロナウイルス感染の急激な拡大を何とか防いできた日本でも、東京や大阪などの都市圏を中心に感染が増え続けている。4月6日現在で感染者は4065人(クルーズ船感染者712人と合計すると4777人)で、オーバーシュート(爆発的感染)すら危惧されている状況である。

 問題なのは、PCR検査が不十分なために正確な感染者数を掴めていないことである。

 東京都では、6日の感染者が83名にのぼったが、都が毎日公表する検査実施数と陽性者の数には正の相関関係がある。つまり、検査数を増やせば感染者数が増え、減らせば減るという状況である。

 感染者の中で注目すべきは、第一に院内感染である。これは病院のみならず介護施設、障害者福祉施設についても同様である。

 首都圏について見ると、1283人の感染者のうち、259人が院内感染である。2割である。これが問題なのは、医師ら医療従事者が感染することが医療崩壊につながるからである。

 注目すべきは、感染経路の不明な感染者の数と死者の数である。感染源が特定できない者の数が増えるということは、市中感染が広まっていることを意味する。

 また、日本で死者の数(6日現在で97人、クルーズ船11人と合わせて108人)は、欧米と比べて圧倒的に少ない。その理由として、子どもの頃のBCG接種をあげる研究者もいるが、まだ解明すべき点が多々ある。今優先すべきは、死者を増やさないことである。

 そのためには、感染症指定病院の病床を重症者用にし、中程度の患者は一般病院に、軽症者はホテルなどの施設に振り分けることである。

 ワクチンや治療薬が開発されない状況では、軽症でも自宅療養だと家族に感染させる危険が伴う。とりあえずは、この方式で治療を行い、それでも医療資源が不足する場合には、軽症者・無症状者は自宅療養とすべきである。

 緊急事態宣言の対象は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県であり、期間は1ヶ月程度である。

 ただ、緊急事態を宣言しても、自粛要請とあまり変わらない。4、5日の週末、東京や大阪はすでにゴーストタウンのようになっており、公共交通機関はがら空きであった。

 緊急事態宣言下でも、外出や大規模イベントに対しては自粛要請のみで、命令もなければ罰則も補償規定もない。違うのは、土地や建物の収用、企業に医薬品などの売り渡しを命令できることである。ただ、これには、罰則も補償もある。

 要するに、自粛要請が出ても感染防止対策を行わない不届き者に、緊急事態宣言によってさらに大きな心理的圧力を加えることくらいしか期待できないのである。

 したがって、緊急事態宣言が出たからといって、知事がヨーロッパなどで行われているようなロックダウンを実行することはできない。また、その必要もない。

 交通制限については、感染症法33条の規定で、地域を限定して、消毒の効果がないときには72時間行うことが可能となっている。しかし、これも、ここまで広大な地域にわたって感染が拡大した今、現実に発動されることはほとんどあるまい。

 都市閉鎖をして経済活動を止めるのなら、補償などの経済対策を事前に講じておかなければならないが、政府は、現金給付6兆円、納税・社会保険料支払い猶予26兆円など、108兆円の緊急経済対策を講じるという。

 政府・自民党は、所得が一定の減少をした世帯に30万円を支出する案を考えているが、減少した所得をどのようにして証明するのか、またフリーターのように収入が不安定な人は、いつの所得を基準にするのか。自己申告制というが、手続きはどうなるのか。

 そのような点を考えただけでも、これは迅速さに欠ける。

 私が予てから主張するように全国民に一律10万円を支給したほうがよい。歳費が支給され続ける政治家に批判が集まるというのなら、歳費カットをすればよいだけの話である。

 心理的効果程度の緊急事態宣言がどこまで感染防止に寄与するのか、経済を窒息させずに済むのか、そして、人々の生活を守り抜くことができるのか、政府への信頼が問われている。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:4/8(水) 13:04
ニュースソクラ

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