私が福祉の仕事に就いた頃、「施設利用者の中で対応に苦労するのは、社長や先生と呼ばれた人」という定説がありました。
この定説は事実なのでしょうか。
多くの利用者と関わった経験から言うと、「そうであるかもしれない」し、「そうでないかもしれない」という、まことに曖昧な答えしか導きだせません。
では、なぜ「社長や先生」と呼ばれる人が施設を利用すると、介護スタッフを悩ます存在になると言われているのでしょうか。
誤解をまねくといけないので、声を大にして言いたいのですが、決して全員がそのようなわけではありません。
かつて大学教授だった利用者は、温厚な性格で周りの利用者の相談役になっていました。医師だった利用者は、「何でも忘れてしまうので皆さんに迷惑をかけます」と、謙虚さを忘れませんでした。
一方で、中央で公務員だった利用者は退職して生まれ故郷に戻り、私たちの施設に入所されましたが、地方暮らしの周りの利用者と話が合わないと言って、孤立をしていました。
社長や先生ではありませんでしたが、食事の味付けやメニュー、ごはんの炊き具合などに度々苦情を言われる利用者もいます。
予算の範囲内で改善できることは行い、「個人の好みに合わせるには限界があります」とお伝えしても、納得されず何度も訴えられるのです。
だから、施設入所に適性があるかないかは、その人の性格や人柄によるのではないかと思うのです。
もちろん、そのパーソナリティーは生活歴、社会的立場、家族環境などが影響していると考えますが。
実はかく言う私こそ施設入所すると、スタッフの困難事例になるのではないかと、戦々恐々としています。
そこで、これまでの経験値を基にして自分のために、「施設入所適性検査」を作成してみました。
施設に入所して比較的上手くいく人は、以下の共通点があるように思います。
興味のある人はチェックを入れてみてください。
(1)協調性がある(自分の考えばかりを主張し譲り合う姿勢がないと、孤立してしまう)
(2)柔軟性がある(自分の思いや生活スタイルなどにこだわり、変化を受け入れないと、不満がつのる)
(3)ルールを守れる(ルールを守らないと、周りの人に迷惑をかけて退所になりかねない)
(4)大きな声をあげて怒らない(大きな声を上げると、周りの人を怖がらせストレスを与えてしまう)
(5)訴えが少ない(自分が納得するまで何度でも長時間訴えると、周りの人やスタッフを疲弊させる)
(6)人に依存しない(人に頼り何でもやってもらおうとすると、周りの人の負担になる。認知症などになりやすい)
(7)「ありがとう」「ごめんなさい」が言える(不平不満ばかり言って、自分に非があっても認めることができないと、人間関係が上手くいかない)
(8)過去の栄光に生きていない(今の自分の環境を受け入れられないと、現状に馴染めない)
(9)家族や友達などの交流が多い(これまでの人間関係が希薄だと、施設での生活オンリーになるので、逃げ場がなくなる)
(10)自分なりの趣味や楽しみを持っている(趣味や楽しみがないと、辛いことがあった時にそのことばかりに捉われてしまう。生活にうるおいが欠ける)
皆さんの結果はいかがだったでしょうか。
10点満点で6点以上が「施設入所適性あり」です。
3と4と5の項目にチェックが入らなかった人は「施設入所要検討」です。
認知症が原因でチェックが入らない項目の多い人は、この検査は参考程度で。
ややもすると、社長や先生と呼ばれた人は、指示や命令、教示する立場にあったので、1と4と6と8に、チェックは入りにくかったのではないでしょうか。
ちなみに、私は1と2にチェックが入りませんでした。長時間ではありませんが、自分が納得いかないと何度も訴えるかもしれないので3は△です。
他の人が私を見て評価すると、もっと多くの項目にチェックが入らず、自分に甘いとお叱りを受けるかもしれません。
なお、この検査は独断と偏見で作成したものです。信憑性については不明ですので、お許しください。
(注)事例は個人が特定されないよう倫理的配慮をしています。
■里村 佳子(社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム理事長)
法政大学大学院イノベーションマネジメント(MBA)卒業、広島国際大学臨床教授、前法政大学大学院客員教授、広島県認知症介護指導者、広島県精神医療審査会委員、呉市介護認定審査会委員。ケアハウス、デイサービス、サービス付高齢者住宅、小規模多機能ホーム、グループホーム、居宅介護事業所などの複数施設運営。2017年10月に東京都杉並区の荻窪で訪問看護ステーション「ユアネーム」を開設。2019年ニュースソクラのコラムを加筆・修正して「尊厳ある介護」を岩波書店より出版。
最終更新:4/8(水) 14:50
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