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ぼくの伯父さん

4/10(金) 16:12配信

47NEWS

 花は咲き、樹々は芽吹き、水面を揺らす春風に仲むつまじく鳥たちが歌う。

 そんな春。

 今年は桜が凛として、より一層美しい。

 車窓から多摩川土手の満開の桜を眺めて、「これでいいのだ」と思った。

 そこには花見客も、道ゆく人の姿もない。

 たまにはこんな桜もいい。

 だって、桜は人間たちを悩ます感染騒動などお構いなしに、いつものようにそこに咲いているだけなのだから。

 「これでいいのだ」

 バカボンのパパじゃないけれど、最近、小さな世迷言はそう思うようにしている。

 あれこれ深く考え過ぎてしまうタイプは病にかかりやすいらしい。

「くよくよするなよ」と、歌ったのはボブ・ディラン氏。

 せっかくの来日が叶わなかった彼の言葉が今は響く。

 まだ世の中が鬱屈となる前、友だちとカラオケに行った。

 「君の欲しいものはなんですか~♪」 

 女友だちが、澄んだ声で淡々と歌うのは聞いたことのない歌。

 尋ねると「だってパパの歌ってこれしか知らないんだもん」と早口で返された。

 いい歌だった。The Bandの『The Weight』みたいな懐かしいノリ。

 ちょっとグッときて目頭が熱くなる。

 久々に人の歌声に感動した。

 良き友と過ごした夢のような時間。

 また会える日まで。みんなの姿が見えなくなるまで手を振って見送った。

 まさかこんな世界が待っているとも知らずに。

 ゾンビのように人がちらほらと行き交う商店街の街路樹には、今年もポンポンポンと八重桜が満開だ。

 フレンチカンカンの踊り子のスカートの中身を覗くおじさんの気分。

 主人の買い物を待つガードレールに繋がれたワン公。

 これで、パイプをくわえていたら、あの人だ。

 『ぼくの伯父さん』のジャック・タチ。

 

 古いフランスのコメディー映画『ぼくの伯父さん』(1958年 ジャック・タチ監督)。

 ジャック・タチは、チャプリン同様、脚本、監督、主演をこなしフランスを代表するコメディアンでもあった。

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最終更新:4/10(金) 16:27
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