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ロケットラボ、ロケットを空中で回収する試験に成功 - 再使用に一歩前進

4/23(木) 12:11配信

マイナビニュース

ロケットの空中回収試験に成功

米国のロケット企業「ロケットラボ」は2020年4月8日、「エレクトロン」ロケットの1段目機体を、ヘリコプターを使って空中で回収する試験に成功したと発表した。

【動画】今回行われた回収試験の様子を収めた動画

同社は、エレクトロンの打ち上げ頻度を高めるために、1段目機体を回収・再使用する計画を進めており、この試験の成功で実現に一歩近づいた。

ロケットラボとエレクトロン

ロケットラボ(Rocket Lab)は米国に本拠地を置く企業で、小型・超小型衛星を打ち上げることを目的とした超小型ロケット(Micro Launcher)の「エレクトロン(Electron)」を開発、運用している。

エレクトロンは、地球低軌道に約225kg、高度500kmの太陽同期軌道に約150kgの打ち上げ能力をもつ。ニュージーランドにロケットの生産施設や発射場を構えるほか、現在は米国のカリフォルニア州に工場を、またバージニア州ワロップス島に発射台の建設も進めており、2020年後半から打ち上げができるようになるとしている。

近年、世界的にブームになっている小型・超小型衛星(質量100kgから数kg級の衛星)は、従来、大型衛星の打ち上げに相乗りするなどしか打ち上げる方法がなく、好きなときに好きな軌道へ打ち上げることが難しいという課題があった。しかし、エレクトロンが登場したことで、小型・超小型衛星を好きなときに好きな軌道へ、そして手頃な価格で打ち上げられるようになり、その課題が解消されるとともに、世界中で超小型ロケットの開発競争が起こっている。

エレクトロンはこれまでに11機が打ち上げられ、10機が成功。また失敗は1号機の試験機のみで、2号機以降は連続して成功している。これによりロケットラボは、この分野の世界的リーダーとして確固たる地位を築いた一方で、世界中で高まる小型・超小型衛星の打ち上げ需要に対して、ロケットの製造が追いつかないという課題があったという。

そこで同社は昨年、エレクトロンの1段目機体を回収、再使用できるようにすることで、打ち上げ頻度を高める計画を発表した。

ロケットの回収、再使用といえば、イーロン・マスク氏率いるスペースXの「ファルコン9」ロケットがおなじみである。ただ、スペースXは打ち上げコストを低減するために再使用しているのに対し、ロケットラボはあくまで打ち上げ頻度を向上させることを目的としている。

また、回収方法もスペースXのファルコン9とは大きく異なる。ファルコン9はロケットエンジンを逆噴射しながら降下し、着陸脚を展開して、ヘリコプターのように陸上や船上に舞い降りる。一方エレクトロンは、パラフォイル(翼の形をしたパラシュート)を使って降下し、そしてヘリコプターを使って空中で捕まえることで回収するという方法をとる。

これには、回収に必要な装備をできる限り少なくするという意図がある。着陸するために必要な装備や、逆噴射のための追加の推進剤を積むと、その分打ち上げ能力が犠牲になってしまう。ファルコン9のような大型ロケットなら、その損失の割合は小さくできるが、打ち上げ能力が数百kg級の超小型ロケットにとっては、たとえ数十kgの損失でも死活問題となる。

同社はまず、2019年12月と2020年1月のエレクトロンの打ち上げにおいて、2段目を分離したあとの1段目機体を誘導し、大気圏に再突入させる試験を実施。この試験において、誘導・航法システムや、テレメトリー・システム、コンピューター、そしてスラスターなど、回収に必要なハードウェアやシステムの実証に成功している。


ヘリコプターを使って空中でロケットを回収する試験に成功

今回の試験は、3月初旬にニュージーランドの沖の海上で行われた。なお、当時はまだニュージーランド政府による、新コロナウイルスの流行に伴う外出や事業の自粛要請が出る前であったため、試験に影響はなかったという。

試験はまず、ヘリコプターからエレクトロンの1段目機体を模した試験機を投下。パラフォイルを展開して降下を始めた。続いて、別のヘリコプターが降下中の機体に接近。そして高度約5000ftにおいて、パラフォイルから伸びるテザー(紐)を、ヘリコプターに取り付けたフックを使って捕獲した。その後、機体は陸まで運ばれ、無事に着陸した。

ロケットラボの創設者でありCEOであるPeter Beck氏は、「機体を再使用できるようになれば、ミッションの度に新たな1段目機体を製造する必要がなくなるため、打ち上げ頻度の向上が図れます。今回の空中回収試験の成功は、その実現に向けた大きな一歩になりました」と語る。

「回収チームは完璧な成功を収めました。エレクトロンは小型衛星の宇宙へのアクセスを便利なものにしましたが、この再使用計画が成功すれば、打ち上げ頻度が高まり、さらに便利なものになるでしょう。これからも技術を発展させ、今年中にも実際に打ち上げた機体の回収ができることを期待しています」(Beck氏)。

同社は次のステップとして、今年後半に、実際に打ち上げたロケットを、海上に着水させる試験に挑むとしている。ヘリコプターで捕獲しないこと以外は、実際に想定している回収とほぼ同じであるという。着水した機体は船で回収し、海水の洗浄やメンテナンスを行ったのちに再使用することを計画している。

そして将来的には、今回の試験ようにヘリコプターを使って空中で回収し、洗浄などの手間をかけることなく、簡単かつ効率的に再使用できるようにしたいとしている。


参考文献

・Rocket Lab Successfully Completes Electron Mid-Air Recovery Test | Rocket Lab

・Rocket Lab | Mid-Air Recovery Demo - YouTube

・Rocket Lab reports recovery test success - Spaceflight Now


鳥嶋真也(とりしましんや)


著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。

宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

鳥嶋真也

最終更新:4/27(月) 8:55
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