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【特集】『MotoGPが変わった日』──マルク・マルケス、時代と記録を変えた男

4/26(日) 16:12配信

motorsport.com 日本版

 ブラック・サバスが1970年に工業都市バーミンガムの塵っぽく分厚い空気の中から彼らの名を関したデビュー・レコードをリリースしたとき、世界はたしかに変わった。

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 それまで誰も聞いたことのなかったそのサウンドは、ヘヴィメタルというジャンルの開祖と評されている。彼らの影響を受けたバンド……アイアン・メイデンやメタリカは今日に至るまで世界中のアリーナやスタジアムを多くのファンで埋めている。

 それは我々が知っているジャンルを定義し、広めた、歴史上に数多存在する瞬間のひとつだろう(音楽史上にはさらに重要な瞬間がおそらく存在するだろう……しかし私は、それらにはブラック・サバスほど関心がないのだ。許して欲しい)。

 ロードレース世界選手権の歴史においても、それらの瞬間は散らばって存在する。1975年にジャコモ・アゴスチーニが2ストロークバイクで初めて500ccタイトルを獲得し、四半世紀にわたる2ストロークの成功の歴史を切り開いた日。1978年に登場したケニー・ロバーツがライディングにハングオフという革命を起こしたこと、バレンティーノ・ロッシが初めて世界選手権で勝利した1996年のチェコGP……ほんの僅かなものだ。

 そして2013年の4月21日、スペイン人のまだ若干20歳のライダーがMotoGPのレコードブックを塗り替え始め、新たな時代の幕開けを迎えた。彼の名はマルク・マルケス。今では“最強”の名をほしいままにする男だ。

■レコードブック塗り替え請負屋の誕生

 マルケスは2008年に125ccクラスで世界選手権デビューを果たすと、わずか4年で最高峰クラスへ手をかけてみせた。2010年に125ccのタイトルを獲得し、Moto2クラスに昇格してすぐにタイトル争いを展開。一時は目の負傷によってキャリアも危ぶまれたが、それも2012年にはMoto2のタイトルを獲得している。

 MotoGPへホンダのワークスチームであるレプソル・ホンダから昇格することは、Moto2のタイトルを獲る以前から決まっており、2度のMotoGP王者であるケーシー・ストーナーの後任と非常に期待されていた。そして彼がホンダRC213Vを手にしたとき、誰もがポテンシャルを発揮するだろうと考えられていた。

「彼が速くなるだろうことを疑う人は誰もいなかったと思う」

 2013年シーズンの開始前、2006年のMotoGP王者である故ニッキー・ヘイデンはそう語っていた。

「テスト中にこれだけ速くなること、そして序盤からこれほど一貫性があるというのは予想外だったし、僕らライダーの中ではそんなに期待してなかったやつも居るだろう。彼はこのスポーツにとってエキサイティングな存在になるだろうね」

「彼はとてもハードなライディングをしていて、非常に貪欲だ。もし彼が健康を保てるなら、今シーズン(2013年)の状況を大きく変えるはずだ。それに本当に印象的でとても速いし、自分のスタイルを持っている。MotoGPや全てのロードレースの世界を“一変させる”存在になるかもしれない」

 マルケスについてそう語ったヘイデン。そして彼の言葉が正しかったことはすぐに明らかとなった。

 デビューイヤーの2013年、マルケスは開幕戦カタールGPでホルヘ・ロレンソ(デビューイヤー開幕戦PP、2位)以来と言える好スタートを切った。

 レースでは彼の憧れのライダーでもあるバレンティーノ・ロッシと争い、最終的に破れはしたものの3位を獲得。多くの人々に自身の才能を見せつけた。

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最終更新:4/26(日) 17:14
motorsport.com 日本版

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