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NEC、ベトナムの地球観測衛星「LOTUSat-1」を受注 - 災害対策などに貢献

4/27(月) 12:11配信

マイナビニュース

NECがベトナムから衛星システムを受注

NECは2020年4月23日、住友商事からベトナム向けの地球観測衛星「LOTUSat-1」を受注したと発表した。

【写真】LOTUSat-1の同型機となる「ASNARO-2」

NECにとって衛星システムの海外向け輸出は初めて。衛星の打ち上げは2023年に予定されている。

LOTUSat-1

LOTUSat-1(ロータスサット・ワン)は、NECが開発し、ベトナム国家宇宙センターが運用する地球観測衛星で、自然災害や気候変動の影響を軽減するとともに、天然資源の管理や環境のモニタリングなど、社会経済発展に役立つ正確でタイムリーな情報を提供することを目指している。

名前のLOTUSatとは、ベトナムの国花でシンボルでもある蓮(ハス、Lotus)と、衛星(Satellite)を組み合わせた造語である。

LOTUSat-1は、高性能なXバンドの合成開口レーダー(SAR)を搭載している。SARとは、電波を発射して、地上に当たって跳ね返ってきた電波で地上を観測する技術のことで、昼夜や天候を問わず観測を問わず撮影できることを特徴としている。

また、波長が短いXバンドを使うことで、植生や農作物の状況を観測することに特化。さらに、空間分解能は最高で1m以下、観測幅10km以下(スポットライト・モード)という性能をもち、高精細な地球画像を撮影することができる。

LOTUSat-1は、NECが開発し、現在運用しているレーダー観測衛星「ASNARO-2(アスナロ・ツー)の同型機となる。NECによると、「現在の段階ではASNARO-2と同じ仕様を想定しているが、今年開催予定のシステム要求審査会で仕様が確定する計画である」としている。

衛星の寸法は4.0m×4.0m×3.9m、打ち上げ時の質量は580kg。なお、質量がASNARO-2より10kg増えているが、これは「LOTUSat-1では燃料の増量を考えているため」だという。

打ち上げは2023年の予定で、打ち上げロケットには日本の「イプシロン」を候補として調整中だという。打ち上げ後は太陽同期準回帰軌道で運用され、設計寿命は5年が予定されている。

地上システムの構築や人材育成も

今回の契約では、衛星の追跡・管制やミッション運用を担う地上システムの整備も含まれており、2022年から2023年にかけて、ベトナム国家宇宙センターが整備・運用するホアラック宇宙センターにおいて設置作業が行われる。

さらにNECは、衛星技術に関するベトナムの現地人材育成プログラムも提供。衛星開発プロセスに関する技術移転の研修を日本で実施するなどし、ベトナム人材育成を支援し、同国の自然災害被害の監視能力向上や予測の高度化に貢献するとしている。

具体的は、将来的にベトナムが独自に衛星を製造できるような人材を育てることを目的としているという。なお一部では、この人材育成を踏まえ、LOTUSat-1の次号機となる「LOTUSat-2」はベトナムで製造されると報じられているが、現時点ではまだベトナム政府による検討中の段階であり、実際にどうなるかは決まっていないという。

今回の契約は、住友商事が取りまとめを行った。NECによると、衛星の開発・製造・打ち上げサービス調達、地上システムの整備、そして人材育成プログラムなどを含めた受注金額は約200億円になるとしている。

ベトナム政府は近年、宇宙開発に力を入れており、2006年には宇宙技術の研究や応用などに取り組むことを定めた「2020年までの航空技術の研究と応用に関する戦略」を承認。2011年には、ベトナム科学技術アカデミー(VAST)の下にベトナム国家衛星センターを設立、2017年にベトナム国家宇宙センターに改称された。

2008年には、米ロッキード・マーティンが製造した通信衛星「ヴィナサット1」が、欧州のロケットで打ち上げに成功し、ベトナム初の衛星が誕生。2013年にはEADSアストリアム(現エアバス・ディフェンス&スペース)が製造した地球観測衛星が欧州のロケットで打ち上げられている。

近年ではキューブサット(超小型衛星)や小型衛星の開発にも力を入れている。また、こうしたキューブサットや小型衛星を日本の大学や企業と共同開発したり、日本のロケットで打ち上げられたりなど、日本との結びつきも強い。

ベトナムに輸出されるNECのテクノロジー

LOTUSat-1のベースとなったASNARO-2は、2018年1月に打ち上げられた地球観測衛星で、XバンドSARを搭載し、地表を撮影し続けている。また、これに先立ち2014年には、同シリーズの1号機となる光学観測衛星「ASNARO-1」も打ち上げに成功。小型の衛星でありながら、地上分解能50cm以下という高い性能を実現し、現在も観測を続けている。

ASNARO-1、2ともに現在NECが所有し、取得した衛星画像の販売などで宇宙利用ビジネスの拡大に活用されている。

ASNAROは、経済産業省の「Advanced Satellite with New system Architecture for Observation(小型化等による先進的宇宙システムの研究開発)」事業により、NECが開発したもので、従来であれば2tほどの大型衛星でしか実現できなかった性能を小型衛星で実現している。

また、従来の衛星は、ミッションごとに1から設計、開発されることが多く、そのためコストが高く、納期も長くなる要因になっていた。そこでNECは、標準衛星システム「NEXTAR(ネクスター)」を開発。太陽電池やバッテリー、コンピューター、姿勢制御システムなど、衛星の基本的な機能をもった部分(バス)を共通化し、そこに目的(ミッション)に応じた機器を自由に装着できるようにしたシステムを実現した。

これによりASNAROは、高機能・高性能かつ、短納期・低コスト性も実現。そして同じシステムや技術がLOTUSat-1にもいかされる。

また、ベトナムに整備される地上システムにも、NEC独自のテクノロジーがいきている。この地上システムは、直径9mのパラボラ・アンテナのほか、NECが開発した地上システムパッケージ「GroundNEXTAR(グランド・ネクスター)をベースに開発する衛星管制センターのほか、データ処理センター、ユーザインタフェースで構成されている。

GroundNEXTARは、NECが約60年間にわたる人工衛星の開発や製造、および地上システム構築で培った技術から生まれた高品質な地上システムパッケージで、衛星システム運用業務を標準化し、低コスト・短納期を実現するとともに、効率化および省力化も達成している。

また、衛星による撮像計画を立体アニメーションで見える化し、直観的にミッション計画が確認可能なオプション機能も搭載している。


参考文献

・NEC、ベトナム地球観測衛星「LOTUSat-1」を受注 (2020年4月23日): プレスリリース | NEC

・衛星システム: 宇宙ソリューション | NEC

・ASNARO-2: NECの宇宙開発利用への取り組み「宙への挑戦」 | NEC

・NEC、宇宙利用サービス事業に参入 (2018年1月10日): プレスリリース | NEC


鳥嶋真也(とりしましんや)


著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。

宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

鳥嶋真也

最終更新:4/27(月) 12:11
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