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コロナ抗体検査、事実と誤解 早わかりQ&A

4/28(火) 11:12配信

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

 いま世間の期待を集めるのが、新型コロナウイルスにすでに感染し、体内に抗体ができたかどうかを調べる「抗体検査」だ。企業や政府はこれが経済を徐々に再開する目安になるとみており、個人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再感染リスクを心配しなくてよいかどうかを知りたいと考える。

 だが一刻も早く検査を実施するため、米食品医薬品局(FDA)はメーカーに同局の承認を求めておらず、その結果、多くの検査は品質に問題があると専門家は指摘する。

 この検査について何が分かっていて、何が分かっていないのかを専門家に聞いた。

基礎知識

Q:抗体検査とは何か? 診断検査と何が違うのか?

A:診断検査はCOVID-19にかかっているかどうかを調べるものだ。これは新型コロナの遺伝物質の存在を検出する分子検査である、とハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ・ホスピタルのデービッド・ウォルト教授(病理学)は説明する。ふつうは鼻咽頭用の綿棒を使って粘液の検体を採取する。

 抗体検査は、血液を採取して免疫反応のテストを行い、抗体が作られているかどうかを調べる。現在感染しているかではなく、過去にウイルスに感染したかどうかがわかる。

Q:抗体とは何か?

A:抗体とは、あるウイルスの特定のタンパク質に結合するために免疫系が作り出したタンパク質だ。この抗体がウイルスのタンパク質と結合すれば、理想的にはそれが引き金となり、ウイルスを無力化し、体内から排除するプロセスが始まる。

Q:COVID-19の抗体があれば、再感染から守られるのか? そうだとすれば期間はどれくらいか?

A:まだ分かっていない。ウォルト教授は「このウイルスへの抗体反応があるからと言って、再感染しないことを意味するわけではない」と言う。

 ミネソタ大学医学部免疫学センターのマーク・ジェンキンス所長は、いま想定されているのは、抗体の存在が一定レベルの保護を与え、それが2、3年続く可能性があることだと話す。疑問点は、どのくらい多くの抗体が必要になるかだ。人によって作られる抗体の量はさまざまで、それには遺伝子やウイルス感染の重症度などの要因が関わるとみられる。

 「最も可能性が高いのは、COVID-19から回復して血流に抗体を持つ人々は数カ月または1~2年の間は免疫があるだろうことだ」。マウントサイナイ病院(ニューヨーク)のデービッド・ライチ院長はこう話す。「だが現時点では不明だ。今後調査していく必要がある」

 一方、抗体を持つ人に免疫ができない可能性もあると一部の専門家は指摘する。ワシントン大学セントルイス校のグレゴリー・ストーチ教授(小児科)は、抗体の存在が免疫を意味するウイルスは多いが、HIVやC型肝炎のような例外もあり、乳幼児によく見られるRSウイルス感染症の場合、抗体反応があっても2度目の感染が起きると指摘。

Q:では現時点で、抗体検査を行う価値とは?

A:公衆衛生の観点から、国家や地域のウイルス感染率、そして真の死亡率を算定するためにこの検査は非常に重要だと専門家は話している。個人レベルでは過去にウイルス感染があったかどうかが分かる場合がある。

品質の評価は

Q:抗体検査はどこで受けられるのか?

A:いま最優先されるのは、病院で医療従事者や患者に行われる検査と、臨床試験の一環で行われるものだ。専門家の話では、一般消費者が信頼できる検査を受けられるまでに数カ月か恐らくそれ以上かかるという。妊娠検査薬のような市販の検査薬も開発中で、そのうち実現するだろう。

Q:抗体検査の信頼度は?

A:約1カ月前に市場に出回り始めた最初の抗体検査について、ミネソタ大学医学部のエイミー・カーガー助教(臨床検査医学・病理学)は品質に大きな懸念があると語った。「検査を販売しようとする名前も聞いたことがない怪しげな会社からのメールや電話がわれわれにも殺到した」

 また同氏は、指先に針を刺して行うような多くの簡易検査はこれまで信頼性が低かったと話す。

 FDAは、緊急使用許可(EUA)に基づく承認を受けたもの以外の抗体検査について、使用前に資格のある臨床研究機関の独立した評価を受ける必要があると通告した。カーガー助教はこう話す。

 それでも検査には非常にばらつきが出ると専門家はみている。前出のジェンキンス所長はこう述べる。「検査に関しては、いわば『ワイルドウェスト(米国開拓時代の西部地方)』のようなものだ」

Q:抗体検査で偽陽性や偽陰性になる確率は高いのか?

A:検査にもよるが十分あり得る。検査メーカーは特異性と感度のバランスを取ろうとしている。特異度の高い検査は疑陽性を排除するが、その分感度が下がり、陽性を一部見逃す可能性がある。一方、検査の感度が極めて高ければ、本当は感染していない人々のシグナルを拾うこともある。

 専門家が特に懸念するのは、偽陽性の結果が出て、偽りの安心感を与えてしまう可能性だ。「それが行動に不適切な影響をもたらすかもしれない」とジェンキンス所長は話す。

 前出のライチ院長は、「免疫があると判明した大勢の労働者が仕事に戻れるようになる」との勘違いがあると警告する。「ワクチン接種が広く普及するまで今後1年あるいは1年半の間、仕事復帰をどう判断するかを再考する必要があるだろう」

 前出のストーチ教授はもう1つ注意が必要な点を指摘する。検査で他のコロナウイルスに対して作られた抗体を検出する(すなわちCOVID-19感染を反映しない)可能性だ。普通の風邪の原因となる一般的な季節性コロナウイルスは複数存在している。

抗体はどう作られるか

Q:感染後どのくらいで抗体が作られ始めるのか? ピークはいつ? 持続期間は?

A:ジェンキンス所長によると、感染の1週間前後から抗体が作られ始め、発症から10日後にはほぼ全員が血中に抗体を持つことが複数の研究で示されている。抗体が持続する長さは不明だが、別のコロナウイルスが引き起こすSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合、ある調査によると抗体は2年後には消えていたと同氏は言う。

 ライチ院長によると、診断されて14日後には抗体が存在し、21日後にははるかに威力が増すことが、回復した患者の血漿(けっしょう)を投与する全米規模の実験的治療プログラムで分かったという。抗体のピークは症状が出始めてから通常は4~6週間後だと同氏は話す。

 ラッシュ大学医療センター感染症科のバラ・ホタ教授は、中国の未発表の研究によると、COVID-19の患者から血液を採取すると、約7割にウイルスを無力化する抗体が見つかったと話す。「残る3割が陰性だった理由はわからない」とホタ教授は言う。

Q:抗体には種類があるのか?

A:ある。一般的な免疫反応で最初に作られるのはIgM(免疫グロブリンM)と呼ばれる抗体だ。次に作られるのがIgG(免疫グロブリンG)。これは特定のウイルスを認識し、狙い撃ちする能力がより高い。また粘膜の表面に多く見られるIgA(免疫グロブリンA)も作られる。

 開発中の検査がどのクラスの抗体を対象にするかはまちまちだ。ジェンキンス所長は防御的免疫にどのレベルが必要かを最終的に知ることが重要になると指摘する。

Q:記者は若くて健康だ。可能ならば新型コロナウイルスに自分自身をさらし、抗体検査を受けることで通常の生活に戻れるのではないか?

A:専門家はその行為を推奨しない。あなたがどのような反応をするかは全く未知であり、若くて健康な人でも入院し、死に至ることがある。検査の目的は医療システムの負担を軽減することだ。意図的にウイルスに接触するのは愚かな行為だと専門家は指摘する。

 ジェンキンス所長も次のように話す。「この感染症はまだ不明な部分が多い。それを考えれば、何の保証もないリスクだ」

By Sumathi Reddy

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