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PCR検査数増加へ救世主「唾液法」…従来の粘膜法より簡単・早い・感染リスク低い

5/4(月) 8:00配信

スポーツ報知

 新型コロナウイルス感染の陽性・陰性を判定する「PCR検査」という専門用語を聞かない日はない。同時に、日本の検査数は世界各国と比べて圧倒的に少ないと伝える報道が増えている。なぜ少ないのか。増やすためには何が必要なのか。北大の豊嶋(てしま)崇徳教授(58)は現在、粘膜から採取するのではなく唾液を用いる画期的な検査の研究を進めている。(北野 新太、安藤 宏太)

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 衝撃的な数字が発表された。OECD(経済協力開発機構)が4月28日に公開した加盟36か国の「1000人当たりのPCR検査数」で日本はブービー賞35位の1・8人。1位のアイスランド(135人)どころか、平均の23・1人からも大きく離されている。

 日本の検査数はなぜ少ないのか。最大の理由は、医療従事者への感染を防ぐため。綿棒を鼻や咽頭に入れる検査のため被検者がクシャミや咳(せき)をするケースが多く、陽性であれば検査者が飛沫(ひまつ)感染するリスクが生じる。また、重症者への対応を優先するため、無症状者や軽症者への検査には慎重な方針を取る医療機関は今も多い。検査に6時間を要し、精度が約7割に過ぎないことも背景にある。

 事実、冒頭の数値で平均以上の29・7人に対して実施しているイタリアなどは感染拡大初期に検査数を増やし、深刻な院内感染や医療崩壊を起こしている。

 一方で、検査数を増やさなければ正確な感染実態は把握できない。国内の現状に疑問の声も相次ぐ中、安倍晋三首相は4月6日に「PCR検査数を1日2万件にする」と宣言したが、約1か月が経過しても1日1万件にも達していない。

 課題は、いかにして医療従事者の感染リスクと負担を抑えながら検査数を増やせるか。現在、研究が進められている「唾液による検査」に注目が集まっている。豊嶋教授は「通常のウイルスは喉に発現することが多いですが、新型コロナウイルスは口の中に出やすい。感染者の味覚障害が報告されているのも恐らくこのためです。だから唾液に着目しました」とする。

 唾液による検査の有効性が実証され実用化に移行すれば「簡易」「スピーディー」「低い感染リスク」という3つの劇的な変化がもたらされる。検査者による採取ではなく、被検者による提供という形になれば現状の課題は大きく改善される。

 既に世界各国で研究は始まっており、特に米国では急ピッチで実用化まで進められている。エール大は咽頭の粘膜液より唾液の方が約5倍ものウイルス量があったと発表。ラトガース大は通常検査と唾液を用いた検査を同時に60人に行い、判定結果は100%一致したと報告している。ニュージャージー州では既にドライブスルー形式で唾液採取による検査をスタートしている。

 国内での実用化に向けて臨床研究を進める豊嶋教授は「とても簡便でデメリットはちょっと浮かばないので、早く対策として行っていかないと。もっと感染拡大すれば対応できなくなります」と強く訴える。ツバが救世主になるかもしれない。

 ◆PCR検査に関する発言の経過

 ▼2月16日 加藤勝信厚労相「受け皿(十分な検査機関)ができないままやったら混乱を起こす。もう少し時間がほしい」

 ▼同29日 安倍晋三首相「全患者がPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保し、来週中に医療保険を適用する。新しい簡易検査機器の3月中の利用開始を目指す」

 ▼3月2日 安倍氏「受けるべきと言われた方については受けられるようにしていく」。加藤氏「患者数が増大して支障をきたすと判断される場合は(PCR検査ではなく)外来診療で」

 ▼同6日 安倍氏「1日6000件以上の実施が可能になった。今月末には7000件を超える能力まで、公的と民間を含めて拡大できる見通し」

 ▼同16日 WHO(世界保健機関)テドロス事務局長「誰が感染しているか分からないとパンデミックを止められない。テスト(検査)、テスト、テストだ!」

 ▼4月3日 安倍氏「1日1万件以上の検査能力を確保している」

 ▼同6日 安倍氏「1日約1万1000件の能力がある。1日2万件に倍増させる」

 ▼同28日 安倍氏「検査能力は現状で1日1万5000件。2万件まで上げていきたい」

 ▼同30日 安倍氏「さまざまな目詰まり、地域ごとの差がある」。加藤氏「(PCR検査について)我々は反省しなければならない」

 ◆PCR検査 綿棒などで鼻腔(びくう)や咽頭の粘膜から遺伝子を採取し(たんを採取する例も)、ウイルス感染の陽・陰性を調べる検査法。PCRはポリメラーゼ(検査に用いる酵素)・チェーン・リアクション(連鎖反応)の略。特有の配列を持つウイルス遺伝子を専門装置で増幅させることを試み、増えれば陽性となる。感染初期段階ではウイルス量が少なく、判定精度は約7割とも言われる。検査に約6時間を要するが、各企業が簡易キットを開発している。犯罪捜査のDNA型鑑定にも用いられ、司法に多大な影響を与えている。1993年、発明業績をたたえられ、米科学者キャリー・マリス氏(19年死去)がノーベル化学賞を受賞した。

報知新聞社

最終更新:5/4(月) 8:10
スポーツ報知

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