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俳優のトム・クルーズ氏、ISSで映画を撮影へ - NASAなどが協力

5/13(水) 12:11配信

マイナビニュース

米国航空宇宙局(NASA)は2020年5月6日、俳優・映画プロデューサーのトム・クルーズ氏が、国際宇宙ステーション(ISS)で映画の撮影を行う意向を示していることを明らかにした。

【写真】2019年3月に撮影されたクルー・ドラゴンの試験機がISSにドッキングする様子

詳細はまだ明らかになっていないが、NASAのほか、イーロン・マスク氏率いる米宇宙企業スペースXも協力するという。

実現すれば、世界で初めて宇宙で撮影された長編フィクション映画となる。

トム・クルーズ氏がISSで映画撮影

このニュースは当初、前日の5日にエンターテイメント誌「Deadline.com」が報じたもので、クルーズ氏がISSでアクション・アドベンチャー映画を撮影するために、スペースXと交渉しているとされた。

クルーズ氏、またスペースXから公式のコメントはなかったが、6日になり、NASAのジム・ブライデンスタイン長官がTwitterでこの情報を認めた。

ブライデンスタイン長官は「トム・クルーズ氏がISSで映画を撮影することに興奮しています! 新しい世代のエンジニアや科学者を刺激し、NASAの野心的な計画を現実にするために、人気のあるメディアが必要です」とコメントしている。

また、スペースXを率いるイーロン・マスク氏も、このツイートに対して、 「とても楽しいものになるでしょう!」と反応している。

クルーズ氏は1962年生まれで現在57歳。代表作に「トップガン」や「ミッション:インポッシブル」などがある。プロデューサーとして映画製作でも活躍している。また、アクション・シーンでもスタントマンを使わないことでも知られ、近年のミッション:インポッシブル・シリーズでも、ビルの外壁を登ったり、飛行機にしがみついたりといった危険なアクションに自ら挑戦している。

今回企画されている映画がどのようなものかは不明。ただ、ミッション:インポッシブル・シリーズの作品ではないという報道がある。

また、今回の企画が実現した場合、クルーズ氏自ら宇宙へ行くことになるのか、自らアクション・シーンを演じるのかどうかといったことも明らかになっていない。

今回の話は突如降って湧いたものではなく、NASAは2019年6月に、ISSの商業化の一環として、民間の宇宙旅行者を受け入れることを許可すると発表している。このときの発表では、スペースXの「クルー・ドラゴン」宇宙船や、ボーイングの「スターライナー」宇宙船でISSへ赴き、最大30日間の滞在が可能だとし、訪れた民間人による商業活動 ――すなわち映画撮影のような活動―― も認めるとされている。

また2020年3月には、ISSの商業化を進めている企業「アクシオム・スペース(Axiom Space)」がスペースXとの間で、クルー・ドラゴンで宇宙飛行者を運ぶ契約を結んだと発表。早ければ2021年後半にも、宇宙飛行士1人と宇宙旅行者3人を打ち上げ、8日間以上ISSに滞在することになるとしている。

輸送費や滞在費について、正確には明らかにされていないが、これまでNASAが公表している数値などから、1人あたり約60~70億円ほどになるとみられる。

今回のニュースの歴史的位置づけ

これまで宇宙旅行は、米国の宇宙旅行会社スペース・アドベンチャーズが、ロシアの「ソユーズ」宇宙船を利用してISSに滞在するプランを販売しており、計7人が述べ8回の宇宙旅行を行っている。この7人はいずれも実業家などで、現役の映画スターのような芸能人が宇宙に行ったことはない。

かつて、米国のボーイズバンド、イン・シンクのランス・バス氏や、英国の歌手サラ・ブライトマン氏も宇宙旅行を申し込んだものの、資金面や家族の事情などの問題で実現しなかった。もしクルーズ氏が自ら宇宙へ赴くことになれば、宇宙に初めて芸能人が訪れることになる。

なお、宇宙で映画が撮影されたことは過去にもあり、たとえばアポロ計画で宇宙飛行士が撮影した動画をもとにしたドキュメンタリー映画や、近年でも2002年に、ISSの組み立て中に宇宙飛行士が撮影した映像をもとにしたドキュメンタリー映画「IMAX SPACE STATION 3D」が公開され、クルーズ氏がナレーションを担当している。また2010年には、ハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッションの様子を取り上げたドキュメンタリー映画「HUBBLE 3D ハッブル宇宙望遠鏡」も公開されている。

一方フィクション映画でも、2008年にリチャード・ギャリオット氏が、前述のスペース・アドベンチャーズによる宇宙旅行の際に撮影した映像を使い、「Apogee of Fear」というタイトルのSF短編映画が制作・公開されている。ただ、これはギャリオット氏の自主制作映画という側面が強かった。

したがって、今回のクルーズ氏の企画どおり実際に映画が制作されれば、宇宙で撮影された初めての長編フィクション映画、また本格的な商業映画ということになる。


参考文献

・Tom Cruise Plots Movie To Shoot In Space With Elon Musk’s SpaceX - Deadline

・Jim Bridenstineさん (@JimBridenstine) / Twitter

・Axiom Space plans first-ever fully private human spaceflight mission to International Space Station


鳥嶋真也(とりしましんや)


著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。

宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

鳥嶋真也

最終更新:5/13(水) 12:11
マイナビニュース

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