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独自路線を貫くスウェーデン 政府の勧告を国民の8割が支持した理由

5/13(水) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【孤高のコロナ対策 スウェーデン現地報告】#1

 都市封鎖などの厳しい外出規制をせず、「集団免疫」作戦を実行しているスウェーデンが注目されている。死者数の多さなどの問題提起もされているが、スウェーデンはなぜ独自路線を貫けるのか。現地からの報告。

 ◇  ◇  ◇

 じつはスウェーデンと日本のコロナ対策、似ている点が少なくない。ともに自粛要請や勧告という形の防衛策を取り、ロックダウンはしない。しかし、具体的な内容は天と地ほどの違いがある、と言ってよい。

 経済活動はスウェーデンのほうが自由度は高い。休業要請はなく、経営者の自己判断で営業継続する。業種によって国が差別をつけることはない。公共交通機関は通常運営されていて、労働者は働きに出るし、スーパーはもちろん、カフェやレストランもオープンしている。しかし、国からの勧告を受けて自己規制は厳しく行う。

 例えばタイヤ専門店。冬季タイヤ交換の方法は例年と違った。通常の事務所は閉めて、入り口横にトレーラーを置き、狭い窓口で予約の確認、申し込みをする。トレーラーの車体には、注意書きが張り出されていた。

 要約すると、「今回、手続きはトレーラーの臨時窓口で行います。外でコーヒーでも飲みながらお待ちください。作業中は中へ入らぬよう。お互いの感染危険を避けるためです。握手はしませんが、笑顔であいさつします。私たちが健康であれば、それが客のためにもなります」とあって「ごきげんよう、手洗いをお忘れなく」と結ばれていた。

 警備係員がこう言った。

「私たちには、タイヤ交換・保管の契約者がおよそ5000人います。コロナは怖いですが、契約した客のことを考えれば休むわけにはいきません。ここではタイヤ交換は法律で義務付けられていますからね」

 規制が厳しいのはレストランやカフェなど飲食店である。「テーブルの間隔は2メートルあけること」が義務付けられ、違反者には閉店命令が出る。しかし、規則に従えばすぐに再開許可されるので、自由度は担保されている。もっとも、開業している飲食店は多くない。観光の名所ガムラスタンでは客が激減、人出も減って閑古鳥が鳴き、こんな苦肉の策をとったカフェ経営者もいる。

「友人にサクラになってもらった。店内でビールを飲む姿を見せて、コロナなんか平気とアピールさせたんだけど、引っかかる客はなかったので、すぐにやめた」

 早い時期には、「自由なスウェーデンはカフェに客の群れ」という報道もあったが、それは規制が敷かれる前のごく一部の店で、大半は営業難なのだ。

 スーパーでは、滅菌液が用意され、レジはプラスチックでガードされ、客は2メートルの距離をあけて並ぶ。また、高齢者対策として開店時間を1時間繰り上げ、その時間帯の利用を勧めている。ゴルフ場は、バンカーをならす用具を取り除き、ボールの洗浄器を取り外して、コロナ対策としている。

 これらはいずれも基本的に自粛である。規制を定めたのは疫病専門当局の判断で、国による強制ではなく、国民の自主性を信頼して勧告するという形をとる。この対策を8割の国民が支持し、納得して受け入れている。

 この8割という支持率の高さは、手厚い経済的な補助と、政治家への信頼から生まれる安心感にある。ここが日本と決定的に違う点である。それを具体的に見ていこう。(つづく)

(ストックホルム在住・林壮行/日刊ゲンダイ元運動部長)

最終更新:5/13(水) 9:26
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