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縄文と弥生 日本美術の深層に迫る 関連書の出版相次ぐ 

5/13(水) 17:20配信

産経新聞

 いま日本美術に熱い視線が注がれている。狩野一信(1816~63年)、河鍋暁斎(1831~89年)ら一般的にはほとんど知られなかった絵師が近年注目を集め、伊藤若冲(1716~1800年)のように展覧会が開催されると、多くの人が押し寄せている。

 ■ジャパン・オリジナル

 明治学院大学の山下裕二教授が先ごろ出版した『日本美術の底力「縄文×弥生」で解き明かす』(NHK出版新書)は、そうした人気の日本美術が生まれた背景を縄文・弥生時代までさかのぼり、現代美術と関連づけて解説する。

 今から約1万2千~3千年前に始まり、約2300年前に終わったとされる縄文時代(期間は諸説あり)とその後に続いた弥生時代。山下教授は、縄文と弥生の美の特質を「動と静」「過剰と淡泊」「饒舌と寡黙」「飾りの美と余白の美」と対比して論じる。大陸から文物を受け入れた弥生時代以降に対し、縄文の造形は、まだ大陸との交流がほとんどなかったことから、〈縄文の造形こそ、「ジャパン・オリジナル」〉だと指摘する。

 装飾的な「火焔型土器」や「縄文のビーナス」などの特筆すべき土器や土偶を紹介。そして若冲、一信、暁斎、江戸時代建造の日光東照宮、さらに明治工芸の超絶技巧、田中一村(1908~77年)や現代美術家の村上隆(1962年生まれ)らへと続く縄文の系譜を明かす。岡本太郎(1911~96年)が光を当てたことにも言及する。

 ■弥生の系譜

 縄文時代の過剰でエネルギッシュな造形に対し、弥生的な美は土器を例に〈調和のとれた美しいフォルム〉としている。その流れは室町時代の龍安寺の石庭、江戸時代の桂離宮、長谷川等伯(1539~1610年)から昭和に活躍した日本画家、福田平八郎(1892~1974年)などに続く。わずか2畳の庵で茶を献じた茶人、千利休(1522~91年)のわび茶を、〈茶室は環境芸術であり、茶道はパフォーマンスアート〉とし、400年前に20世紀の現代美術の先駆けとしてとらえるところはユニーク。

 こうした独自の視点により、日本美術のすごさを伝える。過剰な装飾がいいのか、無駄をそぎ落としたシンプルなのがいいかではなく、両方とも優れたものはいい。日本には海外から一目置かれるそうした美が数多くある。

 著者は縄文から現代まで幅広く日本美術を研究し、展覧会もプロデュースしている美術史家。多彩な美術をやさしくテンポよく説明しているので読みやすく、国宝などの傑作61点をオールカラーで収めているのもいい。

 山下教授の恩師である辻惟雄氏の『伊藤若冲』(ちくまプリマー新書)も先ごろ発売された。若冲が注目されるようになったのは20世紀の終わり。生前は評判の良い絵師だったが、200年ほど、日本美術史の表舞台から消えていた。若冲復活の立役者が絵に秘められた謎に迫る。一緒に読むことをお薦めしたい。(渋沢和彦)

最終更新:5/13(水) 17:20
産経新聞

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