ここから本文です

【新型コロナA-Z オンライン授業】 オンライン講義もうまい古舘伊知郎さん

5/13(水) 13:31配信

ニュースソクラ

私のオンライン講義体験記、大学は変われるか

 古舘伊知郎さんのアナウンサー調のしゃべりが画面から聞こえてきたと友人は言う。「あれ、今後ろに映ったのお父さん? 俺は君たち世代より、親御さん世代の方が人気あるんだよ。よろしく伝えてな」。受講している学生の画面に、父親が映りこんだ。古舘さんはすかさずツッコミを入れたのだという。在宅授業でも古舘さんの饒舌は変わらない。

 「ご飯だよー!」。正午を過ぎると、テレワーク中の母がわが家全員に大声で呼び掛ける。まだ授業中の私にも。母の声が聞かれなかっただろうか。ヒヤリとしたが、オンライン授業で私のマイクはオフ(ミュート)になっていた。ホッとする。

 学生の私が待ち望んだ日がやってきた。4月30日、首都圏有名私立大学でオンライン授業が始まった。当初の学期開始予定日から約3週間が経過していた。

 オンライン授業で使われるプラットフォーム(ソフト、アプリ)は様々だ。私の大学では主にZOOMとGoogle Meetが使われている。両者とも、「仮想教室」をオンライン上に作ることができるのだ。

 ZOOMは一時期「ZOOM爆撃」などと言われ、不審者が勝手にオンライン上の教室に入室した上、わいせつ画像送信や落書きなどの迷惑行為をし、セキュリティに問題があるとされていた。だが現在はオンラインのミーティングに入るにはパスワードか授業担当者(ホスト)の入室許可が必要で、見知らぬ人の入室は困難となった。

 Google MeetはGoogleアカウントがあれば使用できる。私の大学では、教職員と生徒全員が大学のGoogleアカウントを有する。そのため大学関係者であれば使用は簡単だ。セキュリティ面でも、Google Meet管理者(授業担当者)の許可がなければ入ることはできない。

 ゼミの開始前、一足先に「入室」した私に、ゼミの教授は言った。「(ゼミ生の)A君が大学以外のGoogleアカウントで入室しようとしている。オンライン授業では、なりすまし防止のため、大学Googleアカウントでなければ入室を許可できないことになっている。入室するために、Googleアカウントを切り替えるようA君にLINEか何かで教えてあげて」。

 教授はゼミ生のLINEグループがあることを知っているが、入っていない。私はLINEグループで、A君やほかの学生に教えた。「教授はA君が入室しようとしているのは知っているけど、大学のGoogleアカウントじゃないから許可できないんだって」。するとA君は言った。「いつの間にか、普段使用している自分のGoogleアカウントに切り替わっていた。今度からちゃんとアカウント確認しなきゃな」。

 大学のオンライン授業は大別すると3つの形態がある。(1)単方向型授業(2)双方向型授業(3)オンデマンド(いつでも見れる)授業だ。

 単方向型授業は、授業担当者が大勢の生徒に対して、決められた時間に講義を行うライブ配信のようなものだ。授業担当者(ホスト)は、用意しているパワーポイント画面やレジュメ、自分の顔を映すことができる。生徒の顔は映し出されていないようだ。

 双方向型授業は、基本的にZOOMを使用し、主に語学授業やゼミで用いられている。授業担当者、学生全ての顔を映し出すことができ、挙手や拍手といった反応もできる。誰かが発言している時は、学生のマイクをオフにする(ミュート)設定ができるため、授業で静寂を保つことができる。

 オンデマンド授業は、事前に録画された授業が、大学のGoogleアカウント内で視聴でいきる。時間割と同じ時間に見るよう指示はあるが、それ以外の時間で視聴しても問題はない。一時停止や再視聴もできるため、自分の時間に合わせた授業が受けられる。日本に戻れていない、あるいは来日できていない留学生は時差があるのでオンデマンド授業が受けやすいという。

 大学側からみた問題点のひとつは、出欠をどうとるか。私の大学では出席管理システムは確立されていない。ゼミや言語授業など、比較的少人数の双方向型授業ならば、履修学生簿を点呼すればよい。だが一対多の講義である場合、それでかなりの時間をとられてしまう。

 授業担当者らは試行錯誤している。例えば、授業開始15分後に、出席学生を把握するため、画面に映し出されている学生らを画面ごとスクリーンショットする方法を採る授業がある。

 或いは、「受講後、今回の授業の要約を提出するように」と出席確認のための課題を課す先生もいる。他大学ではもともとオンライン学習管理のために開発された、EラーニングシステムのMoodleで出席管理もしていると聞く。他大学との連絡はしていないようで、ウチの大学は出席管理が甘い。

 オンライン授業をどう感じたか、友人の学生に聞いてみた。ある人は「受けられる授業の質に変わりはないが、モチベーション(やる気)はいまいち上がらない」という。また、「先生に学生のPC画面がどのようになっているか見えないから、内職してもバレない」と考える友人もいる。

 導入のトラブルも少なくない。

 「先生が授業方法を間違え、授業の100分間ずっと黒い画面のままだった」と不満を漏らした人がいた。私にもその経験がある。黒い画面が映し出されるだけで、音も何もない。画面には「ストリーミングの開始を待っています。しばらくお待ちください。」という表示があるだけだった。

 授業後に原因が分かった。先生はオンデマンド授業のつもりだったが、学生には、事前に配信授業(単方向授業)のURLが送られてきていたので、授業当日先生と学生にズレが生じていたわけだ。

 だが、授業が始まってしまうと、真っ黒い画面が映し出されているだけで音声もない。とても不安になる。相談しようにも、他の受講生も映し出されないから誰に問えばよいか分からない。結局、私は学生授業用サイトで、担当の教授にメールを送る方法で問い合わせたが、教授が気づいたのは授業後で、100分間は黒い画面のまま、ただ過ぎただけだった。1時間40分間黒い画面と向き合うことほど、空虚な時間はない。

 さすが、古舘伊知郎さんの授業はスムーズに進んだという。ご自身では「俺は年のせいにできないくらい機械に疎いから、迷惑かけたらごめん」と言っていたが、同席していたマネージャーが運営を円滑に行い、授業は止まることがなかったという。

 授業冒頭、「コロナ禍で、学生は計り知れないほど大変だと思う。俺も中途半端な気持ちで授業をやっちゃいけない」と厳粛な面持ちで語ったそうだ。それから言葉の持つ面白さを、古舘さん自身が止まることなく喋り続けた。

 「常識を疑え」。古舘さんは何度も言った。

 「電車に乗っている時、ふと何で車掌のアナウンスってあんな話し方なのか疑問に思った。俺たちアナウンサーはいつもはきはき話すように言われている。だけど車掌さんの話し方って、鼻にかけてるんだよ。これ、思いのほか、とっても話しやすい」とご自身の経験も踏まえた言葉の授業で、ものまねや実況の再現も繰り広げられたそうだ。

 200人を超える受講生がいたが、双方向型ZOOM授業で、100分間はあっという間に過ぎたと友人は興奮して話してくれた。

 オンライン授業は意欲がわかないと書いたが、良い面もある。ZOOMにはチャット機能がある。「生徒から先生へ」というチャット方式を選べば、質問が他の生徒に表示されないため、質問がしやすい。

 ブレイクアウトルームという機能もある。

 私が受けている言語の授業には40人いる。授業中、数人のグループワークの時間があった。一見、一つの画面で行われている授業内で、小グループに分けることは難しいように思われる。だがホストであれば、この機能で、小グループを作ることができる。

 ホストは複数の画面を管理でき、生徒らにはグループメンバーのみ映し出される。これにより、1つの授業で数人グループを作り、グループワークをさせることができるわけだ。

 私はグループワーク中、「今年の6月まで留学している予定だった」という学生と出会い、話を聞いた。するとコロナの影響で、大学側から「留学を中止し、すぐ帰国するように」という連絡があったためやむを得ず帰ってきたと言っていた。たとえオンライン授業であっても、このような他学生とのコミュニケーションの機会はある。

 では、ホストである講師はどうか。語学授業を受け持つ講師はメリットとデメリットを挙げる。「生徒の顔と名前が画面に映し出されるので、覚えるのがラク」というメリット。一方、「生ではないから言葉の力が半減している感じ。臨場感がない」ともいう。

 オンライン授業という初の取り組みで、神経をとがらせる学内幹部もいる。「平時以上の授業指示がメールで来るので、精神的に負担だ」という声もあった。

 だが、幹部の教授や教務部の事務員も大変だ。文部科学省から3日に1度ほど、メールで「こうでなければ、単位を与えてはならない」という通達がくる。この通達どおりにしなければならなくて、頻繁に通知が教務から教授・講師に流れている。

 授業開始から早1週間。私は内容について特段の不便さは感じない。だが、授業資料をダウンロードし自宅で印刷しなければならないのは、通信費以外の負担があると感じる。

 やはり紙のレジュメに書き込みをしたいし、試験対策のため手元にまとめて置いておきたい。以前は先生が紙媒体で配ってくれた文献の一部分はPDFで送られてくるので、論文執筆のためにこれも印刷する必要がある。

 また、オンデマンド授業のために、容量の多いパワーポイントをダウンロードし続けなければならないため、自分のPCの容量にも限界を感じる。オンライン授業用にもう1台PCがあったら嬉しいが、私の大学は機器の無償貸与をしていない。数が足りないのだろう。私は容量を確保するため、先週PC内の「断捨離」をした。

 首都圏私立大学を中心に、オンライン授業のための奨学金を給付する流れがある。明治学院大学が4月21日に学生一律5万円給付を決めてから、有名大学が続く。23日には東海大学が遠隔授業支援金として上限1万円の支援を決め、25日には立教大学が学習環境整備奨学金という、学生一律5万円の給付を決めた。早稲田大学は26日、緊急支援金として10万円給付(経済的に困っている人向け)を決定。その他、Wi-Fiやパソコンを無償で貸与する大学も多数ある。

 新型コロナウイルスは公衆衛生や世界情勢のみならず、私たちの生活の一部である「学びの場」の姿すら変えた。「今どきの若者」である私たち学生でも、やはり直接会える授業の姿が戻ってくることを待ち望んでいる。

ニュースソクラ編集部

最終更新:5/13(水) 13:31
ニュースソクラ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事