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年1000冊の読書量を誇る作家が薦める「身体」についての5冊

5/13(水) 17:00配信

GetNavi web

毎日Twitterで読んだ本の短評をあげ続け、読書量は年間1000冊を超える、新進の歴史小説家・谷津矢車さん。今回のテーマは「身体」です。新型コロナウイルスによる外出自粛がつづくなか、読書で「身体」について考えてみるのはいかがでしょう?


ここのところ、筋力トレーニングが日課になりつつある。

十代のころ、競技バドミントンを嗜んでいた関係でかなりトレーニングを積んでいた時期もあったものの、現役時代にはほとんど筋肉がつかなかった。てっきりマッチョボディは自分の手には届かないのだと諦めかけていたのだが、三十三にして自重トレーニングを始めたところうっすらとシックスパックが見えてくるくらいにはなってきた。「継続は力なり」なのか、それとも二十代と三十代の間には何か身体上の変化があるのか……。この辺り、有識者のご意見を待ちたいところである。

と、なにやらわたしのトレーニング、筋肉自慢となってしまったが、小説家というザ・精神労働の仕事に従事していても、身体を自らの意識と切り離すことはできない。

この原稿を書いているのは四月の二十三日なのだが、何となく肌寒く、手がかじかんでタイプミスを繰り返しており、今若干イライラしている(笑)。この通り、身体性は精神にも深い影響を及ぼすものなのである。

今回の前振り、ややあちらこちらにふらふらしている気がなきにしもあらずであるが、今回の書評テーマは「身体」である。

彼らはなぜ「走る」のか?

まずご紹介するのは漫画から。『ひゃくえむ。 (全5巻)』 (魚豊・著/講談社・刊)である。本書は陸上の100m走をモチーフとしたスポーツ漫画であるが、本作で描かれる光景はまさに灰色の地平である。生まれつき足が速かったことから陸上の世界に進んだトガシ、今の己を取り巻く環境から飛び出すために走ることを覚えた小宮、この二人の陸上人生を追った本作では、始終、登場人物たちが走ることの意味を問い続ける。0.01秒でも速く。残酷なまでにシンプルで峻厳な世界に生きるアスリートたちの、悩み、苦しみ、七転八倒が描かれている。

自らを痛めつけるように走るスプリンターたちを前に、途中まで読まれた方はこう思うかもしれない。

「なぜこんなになってまでこの人たちは走るのだろう」

本書においてその答えはスプリンターの数だけ用意されている。だが、主人公であるトガシ、そして小宮が五体でもって到達した最後の答えを、ぜひ受け止めていただきたい。灰色の雲が割れ、一条の光が差し込んだような、どこか清々しさすら残るラストである。

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最終更新:5/13(水) 17:00
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