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【スーパーGT2020年最新傾向】ついにニッサンもプレチャンバーを投入か。GT500エンジンウォーズ、新時代へ突入

5/13(水) 12:56配信

オートスポーツweb

 2020年シーズン、スーパーGTは新章へと突入する。DTMとの共通レギュレーション『Class1』が採用され、3メーカーとも新車になるため、オフの間から各車の勢力図に注目が集まってきた。

2020年スーパーGT岡山公式テスト(NISSAN GT-R NISMO)

 3月に行なわれた岡山の公式テストでは車両開発面で三者三様の技術的課題を抱えているという声が聞こえてきた。新型コロナウイルス蔓延の影響でシーズンが延期されたが、これによりテストで見えた課題を修正する開発期間も延長したことになる。

 もちろん、実走テストができないため確認や細かい調整をする時間はないだろうが、これまで行なわれたテストでの勢力図といずれ訪れる開幕戦とでは様相が変わる可能性がある。今回はそのなかでもエンジン戦争に注目しよう。

 スーパーGTでは2014年に単位時間あたりに噴射できる燃料の流量に上限を設ける燃料流量規制を導入。それに対応するためNRE(Nippon Racing Engine)が誕生した。これにより熱効率の向上は一気に加速したのである。

 いかに燃焼エネルギーを効率よくパワーに変換するか──NREの導入でエンジン開発のテーマは燃焼速度をアップさせ熱効率を上げることに重点が置かれていった。そしてこれにいち早く対応したのがホンダだ。

 ホンダ陣営は2016年よりジェットイグニッション(プレチャンバー)を導入した。プレチャンバーとは燃焼室の頂部に副室を持つもので、まず副室内の混合気に着火すると、そこからピストン内にジェット噴流が吹き出す。そのジェット噴流が主室の混合気を一気に燃焼させるのだ。プレチャンバーイグニッションには着火性の向上と燃焼期間の短縮が見込まれる。

 当時、プレチャンバーはF1ですでに採用されていた技術だ。F1とまったく同じものを投入するわけではないため、当時は多くの課題も抱えていたが、F1に参戦しているホンダ陣営にとってこれは大きなアドバンテージとなり、導入当初の2016年は10kW(約13.6馬力)以上の効果を得られたという。

■エンジン開発陣が語る2020年エンジン

 ホンダは「2020年のHR-420Eでもこれまでの技術は継承している」とプロジェクトリーダーの佐伯昌浩氏は言う。今季はこれまでのミッドシップからフロントエンジンに変更になったことでパワーアップしたエンジンの開発まではまだ至ってないようだが、それでも自信が見え隠れする。

「これまでのままではスペース的にフロントには収まりません。補機類のレイアウトを変更するなど大幅な改修を行なっており、ほぼ新設計に近いエンジンになっています。ただ、ジェットイグニッション的には大きく変えていませんし、レース車のエンジンは軽量化を進めているので、車体側にも寄与できると思っています」

 ホンダの次にプレチャンバーを導入したとされているのがトヨタだ。トヨタは2016、2017年のエンジン開発テーマを「高燃焼圧のへの対応」としていたが、2018年は「高燃焼圧化による部品破損への未然防止」に変更している。

 2020年のエンジンに対しても「やっているとも、やっていないとも言わないのがトヨタの考えですので、どちらとも言えません」と、エンジン開発責任者の嶋田良孝氏は明言を避けている。しかし、おそらく2018年にはプレチャンバーを導入している可能性が高いと思われる。

「2020年に向けては信頼性を確認するのにかなりの時間を割きました。性能に関してはこの先やっていかなければなりませんが、これまでと同様、燃焼効率をどうやってあげていくかがテーマです。本格的な性能開発について単発の試験でいい結果が得られているものもありますが、信頼性等を確認しながら慎重に開発していくことになりそうです」

 そして、今季最大の注目はニッサンだ。エンジン開発担当の稲垣健夫氏の口からはこれまでと違うコメントが出てきた。

「点火系の大幅な改良はやっています。それには特有の難しさがあり、我々も手探りでやっているところなので、いろいろと問題を抱えている状況です。今までまったくやったことのない内容になるので、うまく燃やすのが難しさのひとつです。そこからいかにいい火炎を出すかも重要です。これまでは火花を出すだけでしたが、今度はそこで燃焼もするので熱の問題が結構出てきます。そのためどう熱を逃がしてやるかも難しいところです」

 この言葉の中にはふたつのヒントが隠されている。ひとつめは「今までまったくやったことのない内容」の部分だ。ふたつめは「これまでは火花を出すだけだったが、今度はそこで燃焼もする」というところだ。昨年までのニッサン陣営はプレチャンバーを採用していなかった。

 冒頭で説明したように、プレチャンバーは主室と同じ空燃比の混合気を副室に貯め、そこに着火させ、主室内へと流れたジェット噴流によって瞬間的に燃焼をうながす。一方、副室を持たない場合は点火プラグを中心に火炎が広がるだけだ。つまり、これらふたつのキーワードから、ニッサン陣営もついにプレチャンバーを導入してきたと考えることができる。

 今季のGT500は新車が導入される節目のシーズンだが、エンジンに注目しても面白そうだ。ホンダ、トヨタに続きニッサンもプレチャンバーを投入してきた2020年。開幕戦が待ち遠しい。




[オートスポーツweb ]

最終更新:5/13(水) 13:05
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