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かつての上野駅で見られた「推進運転」とは?

5/13(水) 8:05配信

鉄道コム

 かつての上野駅では、ブルートレインのような客車列車が数多く発着していました。この上野駅を発着する客車列車では、尾久駅横の車両基地から上野駅へ向かう際と上野駅から車両基地へ向かう際、機関車が後ろから客車を押す、独特の運転方法が見られました。なぜこのような方法が採られていたのでしょうか?

 通常、機関車がけん引する客車列車では、終着駅では機関車の連結位置を変える「機回し」という作業が行われます。列車をホームに据え付けた後に機関車を切り離し、隣の線路を使って機関車の位置を変えるのです。
 一方、上野駅の場合は、一部ホームが「頭端式」などと呼ばれる形状となっており、この機回し作業ができません。そのため、上野駅に到着した客車列車は、機関車が客車を後ろから押して走る「推進運転」という方法で、尾久駅横の車両基地まで回送していました。
 この推進運転では、先頭となる客車には係員が乗り込んで安全を確認していますが、実際に運転操作をするのは最後尾の機関車に乗る乗務員です。両者は無線で連絡を取り合っていますが、乗務員から先頭部を見ることは難しいため、線路上に障害物がある、などの非常時に、乗務員がすぐに確認してブレーキを掛けることは困難です。そのため、通常の推進運転では、短い制動距離で止まれるよう、時速25キロ程度の低速での運転が定められていました。
 そして、上野駅で特徴的なのが、車両基地までの走行距離です。ローカル線の終端駅などで駅の隣に車両基地がある場合、たとえば磐越西線会津若松駅におけるSL「ばんえつ物語」の入換時などでは、短距離ではありますが推進運転が一般的に行われています。しかしながら、上野~尾久間の距離は約4.8キロと他路線より長距離です。大宮方面への旅客線とは別に、車両基地へ通じる回送線が設けられているとはいえ、時速25キロで回送列車がのんびりと走っていては、多くの列車を捌くことはできません。
 そこで、上野駅の回送列車では、推進運転時に先頭となる客車に乗務員が乗り込み、さらにブレーキが操作できる持ち運び可能な機器を設置することで、万が一の際の迅速なブレーキ操作を可能としました。これによって、上野駅と車両基地の間を走る推進運転の回送列車は、通常の推進運転よりも高い時速45キロで運転できるようになったのです。
 かつては上野駅を発着するブルートレインなどで見られた同駅の推進運転も、2015年3月の寝台特急「北斗星」の廃止によって、定期列車で見ることはできなくなりました。現在では、団体臨時列車として運転される「カシオペア」が、上野駅発着として走る際に見ることができる取り扱いとなっています。
 なお、上野駅のように運転士が最後尾の車両で操作するスタイルは、入換時などの特殊な例ですが、客車の先頭部に運転席を設置し、機関車を遠隔操縦できる「ペンデルツーク」という方式は、大井川鐵道井川線や嵯峨野観光鉄道、JR北海道の「ノロッコ号」などで採用されています。

最終更新:5/13(水) 8:05
鉄道コム

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