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「自粛要請」が横行するいびつな日本社会を逆照する映画『アウトブレイク』

5/18(月) 10:30配信

ハフポスト日本版

補償を曖昧としたままの「自粛要請」は「晒しあげ」と「バッシング」を生んだ。

パンデミック映画『アウトブレイク』は、情緒に訴えかけて感染症を制御しようとしてきた、いびつな日本社会を浮き彫りにする。

ライターの松谷創一郎さんがハフポスト日本版に寄稿しました。

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1980年、WHO(世界保健機関)は天然痘の根絶を宣言した。長らく苦しめられてきた感染症に、人類はついに打ち勝ったのだ。

だが、同じ頃から新たな感染症が流行する。エイズとエボラ出血熱だ。現在、エイズは抗ウイルス薬によりかなり致死性を抑えられるようになったが、エボラはいまだに死亡率が高い感染症として怖れられてる。

1995年に公開された映画『アウトブレイク』は、このエボラをモデルとする感染症を描いたハリウッド大作だ。そのタイトルは「感染爆発」、あるいは「大流行」を意味する。


製作のきっかけとなったのは、前年に出版されたリチャード・プレストンのノンフィクション『ホット・ゾーン』だと言われる。未知のウイルスがアメリカの地方都市で一気に広がり、それを阻止すべくダスティン・ホフマン演じる軍医が文字通り奔走する物語だ。

おそらくこの映画は、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックが起こるまでは、感染症をモチーフとした映画では(ゾンビ映画を除けば)世界でもっともヒットした作品だった。

エボラ出血熱をモデルにした未知の感染症

この映画で登場するモターバ熱という未知の感染症は、エボラ出血熱をモデルとしている。

モターバとは、アフリカのザイール(現・コンゴ民主共和国)に流れる川だ。60年代、この付近で未知の感染症が広がった。それを抑えるために、アメリカ軍は爆弾を投下して村ごと破壊する──これが映画の冒頭だ。

時は移り90年代、アフリカからアメリカへ密かに輸入された猿が、輸送中に車を運転していた青年に、飲んでいた水を吐きかける。猿はペットショップに持ち込まれるが、店主が腕をひっかかれる。そう、この猿が保菌者だった。

翌日、青年は空路でボストンに戻るが機内で発熱。ペットショップの店主も突然卒倒する。

その後、青年の恋人や店主の血液を調べていていた検査技師に二次感染が起こる。検査技師が立ち寄った映画館では、体調を崩した男性が突然痙攣しながら倒れる。

こうして、みるみるうちにウイルスは伝播していく。近親者との濃厚接触と院内感染という、感染症の初期段階は的確に押さえられている。

物語もここから拡大していく。ダスティン・ホフマン演じる軍医の元妻でもあるCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の職員が、病院の調査に入る。主人公の軍医は、感染症を食い止めるために奔走する。

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最終更新:5/18(月) 10:30
ハフポスト日本版

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