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42歳の“0円”Jリーガー 安彦考真が挑むラストシーズン

5/19(火) 18:00配信

毎日新聞

 サッカーJ3のYS横浜で昨季、41歳1カ月9日でJリーグ最年長デビューを果たしたFW安彦考真(42)が今季限りでの引退を決めて臨んだシーズンは、新型コロナウイルスの感染拡大により開幕できずにいる。プロとしての契約は年俸120円。収入源だった講演会は3月以降ゼロになり、「見事なゼロ円です」と笑うが、過密日程となる可能性があるリーグ戦へ「すごいチャンス。僕は野球のリリーフみたいなもの。全試合に残り20分で絡める」。“0円”Jリーガーは、最後まで走りきる覚悟だ。

 ◇昨季は出場8試合、肉体改造で集大成へ

 神奈川・新磯高(現・相模原青陵高)卒業後にブラジルでプロを目指しながら右膝の大けがで断念した安彦は、J2大宮の通訳、選手のマネジャーなどを経験後、「選手でいたい」と2018年にJ2水戸とプロ契約した(出場なし)。19年はYS横浜で8試合に途中出場して無得点、プレー時間は最長18分。「今季が賞味期限の最後。いい味で終えたいし、集大成と決めて戦いたい」と臨んだ。

 現在は平日、チームから与えられたメニューをこなし、個人トレーナーとのトレーニングも2日間行う。昨季に左脚のけがが長引いた反省から、3月に2週間のファスティング(断食、食事制限)を敢行。動物性たんぱく質や乳製品、お気に入りだったコンビニの抹茶味のスイーツなども断ち、肉体改造中だ。持久力の向上や疲労回復効果を感じるといい、ファスティングは定期的に行う予定で、「パワーは落ちていないのか、どこまで接触プレーに耐えられるのか、見ていきたい」と変化に期待している。

 ◇ネット批判も「身近な人を幸せに」

 水戸では月額1円で10カ月の契約を交わし、YS横浜も月額10円。インターネット上では「プロ契約と認めてはいけない」「プロとしての対価とは思えない」などと批判を浴びるが、「半径3メートル以内にいる人たちを幸せにできている実感がある」と意に介さない。プロを目指した時に猛反対した母(68)は「まさかこの年で息子が第一線で頑張っている姿を見られるとは思わなかった。私ももっと頑張らなきゃ」と言ってくれた。無償でケアしてくれるトレーナー、野菜や玄米などを提供してくれる人たちの存在も支えになっている。

 引退後を見据え、知人らと100年後の日本を考えるプロジェクトも進める。「シャッター通り」をなくすためにはどうするか。いじめや少子高齢化、移民問題……。スポーツの力を通じて社会問題を解決することを目指し、幅広く議論を重ねる。安彦は「サッカーはより良い社会をつくるためのツール。自分のために40歳でJリーガーになって、『勇気をもらった』と言ってくれた人がいた。人のために頑張る楽しさを知った。平和な国だから40歳でJリーガーになれた。この国を受け継いでいかないといけない」と話している。【福田智沙】

最終更新:5/23(土) 17:23
毎日新聞

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