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京王井の頭線 渋谷駅を出るとトンネル連続 何をくぐる? 意外と知られぬふたつの理由

5/19(火) 18:22配信

乗りものニュース

谷底の渋谷から外へ出るためにはトンネルが必要

 京王井の頭線は、渋谷駅を出発すると、いきなりトンネルに入ります。都内有数の繁華街である渋谷の町を出たら、まるで山岳路線のように、次の神泉駅をはさんで渋谷トンネルと神泉トンネルが連続します。これは渋谷特有の地形によるものですが、意外と知られていない江戸時代の歴史も関係しています。

【写真】山手線にあった関東初の鉄道トンネル

 渋谷を地形の点から述べてみましょう。

 まず、この付近のJR山手線についてです。恵比寿~渋谷~原宿間では、南北に伸びる渋谷川の谷に沿って線路が続いています。線路はずっと谷の中にあるので、地形の凸凹は少なく、車窓を見ていても谷を実感しません。いつも山手線で渋谷を訪れる人は、渋谷駅が谷底にあるといわれてもピンときにくいでしょう。

 渋谷駅に集まってくる鉄道路線は、最も新しく開通した東京メトロ副都心線(2008年渋谷駅開業)を除き、山手線とおおむね直交しています。地形でいえば、渋谷川の谷の両側に続く丘の横腹を突く形です。

 次に、2013(平成25)年まで渋谷駅が地上にあった東急東横線(1927年同開業)も、渋谷駅を発車した後、代官山でトンネルに入り、中目黒駅の手前で地上に出て目黒川の谷へ抜けていました。

 そして東京メトロ銀座線(1938年同開業)の場合、標高約30mある青山方面の丘の地下を走っていたのに、渋谷の谷にぶつかった所で、地上に顔を出してしまいます。しかもそのホームは高架の山手線ホームよりさらに高い場所です。まさに渋谷の谷の深さを感じさせてくれる所です。

 井の頭線の例も含めて、谷底の渋谷駅から谷の外に出るのに、トンネルが必要なわけです。

京王井の頭線ふたつのトンネル 何をくぐっているのか

 井の頭線の渋谷付近のトンネルも、東横線のかつての代官山のトンネルも、渋谷川と目黒川との分水嶺を貫くもので、山岳地帯の峠のトンネルのミニ版といった性格です。渋谷駅に降った雨は渋谷川へと流れ、その後、古川へ名前を変え広尾や麻布十番を経て、浜松町付近で海に注ぎます。一方、渋谷を出てふたつめの神泉トンネルの先に降った雨は、目黒川に注ぎ五反田を経て、京急新馬場駅の先で海に出ます。

 井の頭線のトンネルのもうひとつの特徴は、神泉トンネルの上を三田上水が横切っている点です。三田上水は江戸時代に造られたもので、玉川上水から枝分かれする水路のひとつです。いずれも江戸の町に飲料水などをもたらすために造られました。

 1653年に完成した玉川上水は、奥多摩の入口にあたる羽村で多摩川から取水し、四谷大木戸(現・四谷四丁目交差点付近)まで約43kmに及ぶものです。三田上水は現在の京王線笹塚駅付近で玉川上水から取水し、現在の港区高輪や三田方面へと水を導く水路で、1660年代半ばの完成です。そうした由緒ある歴史的遺構が、神泉トンネルの上にあるわけです。

 鉄道の歴史に目を向けると、特に明治時代、江戸時代の上水(飲料水用)、用水(農業用)の下に鉄道トンネルがいくつも造られています。現在の山手線目黒駅の場所にも、かつて長さ約37mの永峯トンネルがあり、こちらも上を三田上水が横切っていました。同トンネルは1885(明治18)年竣工、関東で初めての鉄道トンネルでしたが、1918(大正7)年、山手線が複々線化される際に撤去されていて、残念ながら2020年現在、その痕跡はまったく残っていません。

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最終更新:5/20(水) 12:02
乗りものニュース

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