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「反スパイ法」施行以後、中国当局の暴走が止まらない…日本人や在留中国人の身柄拘束

5/23(土) 16:56配信

夕刊フジ

 【日本復喝!】

 中国当局の暴走が止まらない。2014年の「反スパイ法」施行以後、拉致同然に身柄を拘束する「日本人狩り」に加え、日本に関係する自国民(中国人)をもターゲットに拘束に及んでいるのだ。

 北海道教育大学の袁克勤(えん・こくきん)教授(64)が反スパイ法に違反した容疑で、昨年5月から身柄を拘束されている。スパイ容疑というが、何一つ明らかになっていない。

 袁氏は、吉林省で営まれた実母の葬儀に参列後、妻と路上を歩いていたところを「何者か」に車の中に押し込められた。夫妻は最初、自分たちの身に何が起きたのか理解できなかった。施設に収容されて初めて、公安当局に強制連行されたと知ったという。

 「法の支配」とは名ばかりの著しい人権侵害だ。袁氏の不透明な身柄拘束は、日中の学術交流のみならず、2国間関係全体にも暗い影を落とすだろう。

 袁氏は東アジア国際政治史が専門で、1989年に起きた天安門事件の際に民主化運動に注力した闘士として知られる。中国・吉林大学卒業後、一橋大学で修士、博士号を取得し、6年から四半世紀にわたって北海道教育大学一筋に教鞭(きょうべん)をとってきた。

 日本の、とりわけ北海道の大自然に魅せられた。何よりも、日本では「言論の自由」「学問の自由」が保証されており、そこが気に入っていたという。

 中国外務省の耿爽報道官は3月26日の会見で、袁氏が「犯罪事実に対して包み隠さず自供している」と述べ、「証拠は確かだ」と主張している。

 あくどいのは、「捜査への協力」を条件に妻を先に釈放し、工作員に仕立て上げたやり方である。妻は日本に帰国後、袁氏のパソコンや携帯電話などを中国に持ち帰って当局に提出した。大学には「病気治療で欠勤する」と嘘の申告をした。

 良心の呵責(かしゃく)を感じた妻は結局、袁氏の家族に洗いざらい打ち明け、当局が認めぬまま、身柄の拘束事実が判明した。

 カナダに住む長女の袁●(=くさかんむりに宝)(えん・けい)さんは、国際電話による筆者の取材に対し、「父のことが心配で仕方ない。証拠も開示しないまま拘束を続けるのは、何らかのシナリオに沿って父を有罪にしようとしているとしか思えない」と語った。

 中国では、反スパイ法が施行された2014年から、日本人や在留中国人の身柄拘束が目立ち始めた。社会統制を強める習近平指導部の意向が反映されているのは間違いない。

 同法が規定するスパイ行為には「外国機関への国家機密の提供」などに加えて、「その他」の条項があり、当局の恣意(しい)的な運用を可能としている。

 何がスパイ行為に当たるか分からないのだ。日中を往来する関係者は、学術調査もビジネスもおちおちできないだろう。

 両国間に広がった「不信の火種」は容易に消えぬ。それが中長期的には、自らの国益を損ねていることに中国自身は気づかぬらしい。

 ■佐々木類(ささき・るい) 1964年、東京都生まれ。89年、産経新聞入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現在、論説副委員長。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『日本が消える日』(ハート出版)、『静かなる日本侵略』(同)、『日本人はなぜこんなにも韓国人に甘いのか』(アイバス出版)など。

最終更新:5/23(土) 16:56
夕刊フジ

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