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コロナで増す内憂外患 「勝利宣言」見送り 厳戒下で全人代・中国〔深層探訪〕

5/23(土) 8:33配信

時事通信

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け延期されていた中国の一大政治イベント、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日、2カ月半遅れで開幕した。世界に先駆けて正常化をアピールする場のはずだったが、「感染はまだ終息していない」(李克強首相)として「勝利宣言」は見送り。中国経済の傷は深く、今年の経済成長目標も公表できなかった。中国の初動対応などをめぐる米国との対立も激化しており、国内経済の減速と米中摩擦という「内憂外患」は新型コロナにより一層厳しさを増している。

【グラフ】新型コロナウイルス 世界各国の状況

 ◇所得倍増目標、断念か
 会議の冒頭、北京の人民大会堂に集まった約3000人が新型コロナの犠牲者に黙とうをささげた。ひな壇の習近平国家主席ら指導部と議長団約40人以外は全員マスク姿。感染「第2波」を警戒し、取材するメディアも大幅に制限する厳戒態勢が取られた。会期を1週間に短縮したことに合わせるかのように、李首相は政治活動報告の分量を約9500字と例年の6割程度に収めた。

 昨年12月末に「原因不明の肺炎」として湖北省武漢市で初めて公表された新型コロナ。李首相は「湖北と武漢を守る戦いに勝利し、決定的な成果を挙げた」と誇りながらも、総論では「大きな戦略的成果を収めている」と述べるにとどめた。

 確かに、武漢の都市封鎖など一党独裁だからこそ可能な強権的な手法により、国内の新規感染者は2月中旬の約5000人をピークに最近は1桁台に減少。「今は世界で中国が一番安全」(北京の30代女性)との声も出る。ただ、5月に入って吉林省で集団感染が発生したほか、別集計の無症状感染者は21日も武漢で35人増えた。

 2020年は第13次5カ年計画の最終年で、10年比で国内総生産(GDP)と所得を倍増させる公約の目標年でもある。習主席は2月下旬以降、感染拡大防止と経済の回復という「二兎(にと)を追う」姿勢を鮮明にしたが、思惑通りに進んでいない。1~3月期にマイナス6.8%に沈んだ経済成長率は、国際通貨基金(IMF)の予測では通年でもプラス1.2%。所得倍増には5%台半ばの成長が必要なだけに、李首相は報告で、所得倍増目標に一切触れなかった。

 ◇米中対立も予測困難
 「中国との全ての関係を絶つこともできる」「世界規模の大量殺人を引き起こしたのは『中国の無能さ』以外の何物でもない」。感染者が150万人を超えた米国のトランプ大統領は、中国批判をエスカレートさせている。李首相は報告で「公衆衛生緊急対応などで多くの脆弱(ぜいじゃく)な部分が表面化している」と国内向けには不十分な点を認める一方、「公開・透明・責任ある態度で情報を適時開示し、感染症に立ち向かった」と情報隠しや初動の遅れを否定する公式見解を維持した。

 しかし、秋に大統領選を控える米国では、株式市場から中国企業を締め出す規制案や、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)への制裁強化など対中強硬策が相次ぐ。さらに、全人代に唐突に提案された香港の治安法制は、香港の自治と人権の擁護を目的に「香港人権・民主主義法」を昨年成立させた米国を刺激することは間違いない。李首相は「わが国の発展はいくつかの予測困難な影響要因に直面している」と語ったが、その要因の筆頭はトランプ政権の対中姿勢かもしれない。(北京時事)

最終更新:5/25(月) 8:15
時事通信

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