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大打撃を受けた百貨店業界 コロナ禍の三越伊勢丹HD、店舗を捨てない戦略とは

5/23(土) 15:30配信

産経新聞

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛経済で、大打撃を受けた百貨店業界。消費行動の変容やインターネット通販の伸長などの環境変化に続き、コロナ渦が“リアル”店舗の改革を突き付けている。首都圏の基幹店に資源を集中、業績の立て直しを進めてきた老舗百貨店の三越伊勢丹ホールディングス(HD)では、デジタル戦略の加速と同時に、コロナ収束後のリアル店舗はコト消費を楽しむ「時間消費型」を目指す。「三密」を避ける新しい生活様式が求められる中、アフターコロナの百貨店は何を目指すのか。

【図】解除15日で感染者数元通りに…

 「店舗は単なる物販では(客が)集められなくなっている。自らが足を運ぶことによって楽しいと感じる時間消費型が急ピッチで進むと考えている」

 緊急事態宣言が発令中の5月11日。令和2年3月期決算の発表を電話会見で行った三越伊勢丹HDの杉江俊彦社長は、新型コロナ収束後の店舗の役割について、こう述べた。

 三越伊勢丹HDは4年前から地方店の閉鎖を本格化させ、事業の選択と集中を進める構造改革を断行。2年3月期の最終損益の黒字を目指したが結果は赤字となり、3年3月期の業績見通しの公表は見送った。

 昨年度から3カ年の中期経営計画では、新型コロナの影響を受けてデジタル戦略を加速。電子商取引(EC)については、取り扱い商品の種類を現状の1.5倍増となる15万種類へ引き上げるなど、EC単体の強化を急ぐ。デジタル戦略を加速させた分、改装などの店舗計画は一部凍結する。

 そうした中での杉江氏の発言は、百貨店業界全体の問題意識の現れといえる。

 家族で着飾って店へ出向き、商品を購入後はレストランでランチを楽しむ…。高度成長期に成立したレジャー施設としての百貨店の機能は薄れた。経済の悪化で家電量販店をはじめとする専門店や電子商取引(EC)との競争が激化、令和に入っても逆風が続く。

 元年10月の消費税率引き上げ以降、国内消費が落ち込んだ。東京五輪・パラリンピック開催で期待していた訪日外国人向け販売も新型コロナが吹き飛ばした。

 さらに、今年3月下旬の週末の臨時休業、4月の緊急事態宣言から始めた自主休業は、百貨店売り上げの主力の婦人・紳士服や服飾雑貨を直撃。百貨店ブランドが主力だった、国内大手アパレルのレナウンの経営破綻の引き金を引いた。

 緊急事態宣言が解除されたとしても、テレワークなどの働き方やネット通販による買い物などの生活様式が続くことが想定される。業界関係者は「三密」を避け、安全・安心を重視する動きが一層強まるだろうと予測する。

 アフターコロナにおけるリアル店舗は何を目指すのか。

 三越伊勢丹HDの杉江氏は決算会見で、大手アパレルが百貨店での店頭販売から撤退し、自社ECでの販売へと転換姿勢を見せていることを問われ、大手アパレルとの協議を始めたことを明らかにした。杉江氏は「大手アパレルとの関係は変わらざるを得ない。われわれのサイトにも、アパレル側のサイトにも同じ商品が並ぶ、競争しながらやっていく状況にしないといけない」と、アパレル側に三越伊勢丹のECサイトへの商品提供を呼び掛けた。アパレルについては、これまで広いスペースを割いているが、「(百貨店の)リアル店舗の役割が変わる中で、アパレル売り場は形が変わったり、縮小したりしていくのではないか」と分析する。

 その先に見据えるリアル店舗づくりのキーワードは時間消費型だ。杉江氏は「時間消費型の店舗では、食品やレストラン、美容やスポーツなどのサービス関連が増える。(定期借家契約で)テナントで入ってもらう」と話す。

 事業の効率化で取り扱いをやめていた家電関連については、顧客要望を受けての復活にあたり、今年2月、三越日本橋本店新館6階にビックカメラを導入した。三越伊勢丹HDとしては飲食店以外では初となる定期借家契約で、大家と店子の関係を超え、三越の外商部が顧客を紹介したりする。時間消費型の店舗づくりで先行しているアウトレットモールなどと違い、百貨店ならではの対応が売りとなった。

 新型コロナで行動変容が進む中、新たな百貨店像を消費者に提示できるかどうかに生き残りがかかっている。(経済本部 日野稚子)

最終更新:5/23(土) 15:30
産経新聞

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