ここから本文です

女児への暴行問われた男性の逆転無罪確定、カギは「証言の信用性」

5/23(土) 18:00配信

産経新聞

 交際女性の長女=当時(11)=に性的暴行を加えたとする強制性交罪に問われ、1審で懲役5年の実刑判決を受けた男性被告(38)に対し、大阪高裁が4月、逆転無罪判決を言い渡した。判決によると、「被害者」である長女の証言の信用性が崩れ、虚偽の可能性が浮上したという。検察側は上告せず、男性の無罪は確定。なぜ裁判所の認定は一転したのか。判決で明らかになった経緯をまとめた。

 ■1審で虚偽申告の可能性検討も…

 「事件」が起きたのは平成30年夏。起訴状によると、男性が問われたのは、交際女性の自宅浴室で女性の長女に性的暴行を加えたとする罪だった。

 直接証拠とされたのは、被害者である長女の証言だ。《浴槽内で男性が頭を洗い終わるのを待っていた。洗い終わると、「はい、お仕置き」と言って暴行された》。

 ただ男性は、当初から「身に覚えがない」と起訴内容を否認。弁護側もそもそも犯罪行為は存在せず、無罪だと主張していた。

 主な争点は長女の証言の信用性。これに対し、1審奈良地裁は昨年8月、男性に懲役5年の実刑判決を言い渡した。

 地裁は、男性との関係が悪化した女性が、男性を陥れるため長女に虚偽申告を働き掛けた可能性も検討。判決で重視したのは、長女が女性に被害を打ち明ける前に、いきさつを相談したという友人の存在だった。

 地裁は、仮に長女が母親に迎合して虚偽申告をしたとしても、「それを友人にまで打ち明ける必要はない」などと言及。また事件化すれば、長女は児童相談所に保護され母親と会えなくなったり、「大事な存在」ともしていた男性を失ったりする結果になることを、長女自らが理解していたとも指摘した。

 こうした点を踏まえ、地裁は長女の供述の信用性を認めた上で、「虚偽の被害申告や証言で男性を陥れようとしたとは考え難い」とし、実刑判決を選択した。

 ■高裁は一転「評価の根拠は不合理」

 しかし、控訴審の舞台で判断は一転した。

 長女の供述は「重大な見落としがある」、母親の説明は「最も不審」-。大阪高裁の和田真裁判長は今年4月23日の控訴審判決で、1審判決を「根拠が不合理」だとして破棄し、無罪を言い渡したのだ。

 高裁判決は、1審判決で重視された友人への相談について「長女の供述にしか表れない事情で、1審の記録には友人が実在するかについて手掛かりすらない」(和田裁判長)と言及。友人の存在自体も確認されていないとして、事実関係を疑問視した。また、母の虐待により長女が虚偽申告の働きかけを拒否し難かった可能性にも踏み込み、「(長女の証言は)たやすく信用できない」と認定した。

 また高裁は、事件をめぐる母親の説明にも疑義を呈した。

 1審の証人尋問で母親は、長女の被害を把握したきっかけを問われ、「自分から尋ねたのか、長女からの自主的な申告だったのか記憶がはっきりしない」と述べていた。この経緯に触れた和田裁判長は、「わが子の重大な性被害を知った契機の記憶がはっきりしないことはにわかに信じ難い」。さらに、同じく1審で証言台に立ち、被害者寄りの証言をした母親の知人が、事件について母親と口裏合わせをしていた痕跡があるとも認め、「被害が真実のものでないことを疑わせる」と結論付けた。

 検察側は上告せず、男性の無罪は確定。一方で長女は事件後、児童養護施設に入所し、親子は離ればなれになったという。事件がそれぞれに落とした影は、決して小さくない。

最終更新:5/23(土) 18:00
産経新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事