ここから本文です

「カレ~ライス」長唄にしてみた 唄方・杵屋佐喜さん「江戸のJ-POP」発信

5/23(土) 11:23配信

西日本新聞

 長唄の普及活動を続けている長唄唄方の三代目杵屋佐喜さん。4月に新曲「カレーライスの唄」の動画を配信しました。長唄の節回しでカレーの魅力をたっぷりと伝えています。新型コロナウイルスの影響が続く中、テレビ会議アプリで東京と福岡をつなぎ、インタビューしました。

【写真】「トトロ」に見える?巨大岩山が話題

 -「カレーライスの唄」を制作したきっかけは?

 ★杵屋 2年くらい前から準備してきました。長唄の名曲はたくさんあるんですが、江戸時代がほとんどで、今の生活の中にある歌詞が少なく、若い人には共感しづらい面もあります。プロデューサーの発案で、もっと若い人たちや子どもたちに分かりやすい、新しい曲を作ろうじゃないか、というのがきっかけです。江戸時代の長唄は当時のJ-POPだったので、J-POPとしてあり続けたいという思いもありました。子どもから大人まで共感できる食べ物、その中でも国民食のカレーライスにしようとまとまりました。昨年9月にレコーディングし、当初から今年4月のリリースを目指してきました。

 -作詞・作曲で心掛けたことは?

 ★杵屋 とにかく分かりやすく、親しみやすく、あまり専門的でなく、と心掛けました。作っている最中はいろいろ付け加えたのですが、削って削ってシンプルにしました。アニメともコラボしており、第2弾も食べ物で予定しています。

 -長唄の童謡も次々にYouTubeにアップしていますね。

 ★杵屋 これは3年前に出版したCD付き教材の音源を使っています。長唄は歌舞伎から派生したのであだ討ちとか色恋とか大人向けの作品が多いのですが、三味線を手掛けていた曽祖父の四世杵屋佐吉(1884~1945)が、長唄を子どもに安心して親しんでもらおうと、童謡をたくさん作りました。それを出版したものです。このような状況になり、「カレーライスの唄」と併せて、子どもたちに笑顔で過ごしてもらいたい、と考えました。子どもたちに届いてくれたらうれしいですね。

 -三味線や囃子(はやし)を含めたリモート演奏による「元禄風花見踊」も動画で公開しました。

 ★杵屋 舞台と同じようにはいかないのですが、心を一つに合わせて演奏してくれました。その気持ちも動画に詰まっています。今年はお花見ができなかった人も多く、長唄で花見を感じてほしいですね。

 -もともと声楽やピアノなど西洋音楽を学んできたそうですね。

 ★杵屋 ええ。長唄に大いに役立っています。父方は長唄の家系ですが、母はピアニストで、邦楽や洋楽に関係なく音楽の中で育ちました。洋楽専攻だったのですが、外国の文化を学べば学ぶほど「灯台下暗し」というか、自分の国の音楽に外側から興味を持ちまして、長唄にたいへん生かされています。

 -改めて長唄の魅力とは?

 ★杵屋 僕が思うに「間」と「息合い」ですね。人と人が息を合わせた一体感で合奏・合唱するので、チームスポーツの魅力です。舞台で10人がやれば喜びも10倍返ってくる。力を合わせるのが一番の魅力だと思います。

 -九州にも時々来られていますね。

 ★杵屋 大学時代の同級生に佐賀出身のバイオリニストの女性がいて、十数年前に26歳で亡くなりました。そのお母さまがチャリティーでコンサートなどを開いていて、佐賀を中心にお世話になっています。昨年は、熊本県荒尾市と佐賀市東与賀町でコンサートとワークショップを開きました。

 -ワークショップで子どもたちの反応はどうですか。

 ★杵屋 特に楽器に対する興味がすごくありますね。唄でなくても、長唄に親しんでもらえればと感じます。また九州に行きたいです。

 -コロナの影響で休演が続いていますが…。

 ★杵屋 自分の仕事も年内いっぱい延期になりました。小さい頃から本当に舞台が好きで、音楽、演劇、歌舞伎などからたくさんの夢をもらってきました。今、劇場はお休み中ですが、再開すれば、子どもの頃にもらった夢をちゃんとお返ししたい。それまでにパワーを蓄えて、2倍3倍お返ししたいと思っています。

 (文・根井輝雄、写真・カメラマンの池村隆司さん)

 ▼きねや・さき 1983年生まれ、東京都出身。江戸時代から続く長唄佐門会家元の七代目杵屋佐吉の次男。玉川大文学部卒(声楽専攻)。2002年、三代目杵屋佐喜を襲名。14年「和風ビートルズメドレー」発売。17年「子どもと楽しむ長唄童謡」出版。

西日本新聞

最終更新:5/23(土) 11:23
西日本新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事