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僕に何かを見いだしてくれた大学時代の初彼女。社会人になって連絡が取れて?

5/23(土) 18:13配信

telling,

夜の外出を制限され、今までできなかった手の込んだ料理にチャレンジするだとか、オンライン飲みで修学旅行の夜のような気分をつかのま味わうだとか……なんとなくイベント性を持たせてやりすごしてきた数週間。でも、何の予定もない夜、ぷらっと飲みにも行けず、ふいにできた時間にしんとした部屋でひとりスマホを開いた時。誰かの恋の話を追体験しながら、空っぽの気持ちや時間をあたたかい言葉で埋めたくなる。大恋愛、初恋、失恋、少し甘酸っぱい話……。各界で活躍する方々から、普段は言えないけど、こんな夜だから聞いてほしい恋の話が届きましたーー。
『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社・菊池良さんと共著)の著者でライターの神田桂一さんが振り返る、「別れの手紙」をくれた大学時代の彼女との思い出。

●不要不急の外出自粛の夜に、誰かに聞いてほしい恋の話#04

先日、実家に帰って、クローゼットの中を整理していたら、懐かしい手紙が出てきた。それは、僕が大学生のときに初めて付き合った彼女からの「お別れ」の手紙だった。

彼女とは、約2年お付き合いをした。この手紙が届いた後、僕はあらゆる人脈を使い、復縁を迫ったが、時すでに遅し。「あなたのことは、もう同情の目でしか見られない」と言われ、僕の恋は終わった。僕は、彼女をぞんざいに扱いすぎた。人は、失って初めて、その存在の大きさに気づく。それを地で行った出来事だった。

大学時代の僕は、まったく大学の授業にも行かず、かといってバイトに精を出すわけでも、他の活動に打ち込むわけでなく、単に家にこもって日がなだらだらしているという、正真正銘のダメ大学生だった。

そんな僕の前にある女性が現れた。初デートは、神戸は三宮のトアロードにあるオシャレなカフェ。関西で有名なタウン誌「meets」で下調べをし、準備万端、出かけた。カフェに入り、僕はチャイを注文。しばらくすると、シナモンを添えて、運ばれてきた。僕は、シナモンをお菓子のルマンドか何かと勘違いし、お茶請けだと思ってかじった。固くて歯が折れそうだった。もうダメだ。僕は二人分の勘定をして、外に出て、そのまま家に帰った。

しかし、そのときの女性が、僕にとっての初めての彼女になるんだから、人生何が起こるかわからない。

彼女とは、よく、神戸港にあるハーバーランド周辺を散歩しながら、将来への期待や不安について語り合った。彼女は小説家志望で、僕はライター志望だった。僕は、クズみたいな生活をしていたが、自分には特別な才能がある、周りの奴らとは違うんだという自意識があふれ出ていた。彼女もそうで、そういう自意識を共有できる数少ない人間だった。ふたりで、自分たちの才能を褒めあった。励ましあった。彼女はよく「人は誰でも、1編の小説は書けるらしいの。続けることが難しいんだって」と言っていた。今ならこの言葉の意味がなんとなくわかる気がする。

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最終更新:5/23(土) 18:13
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