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日銀、非常時の金融政策 企業の資金繰り支援重視 臨時会合も検討

5/24(日) 9:00配信

産経新聞

 日本銀行が平成25年4月に異次元と呼ばれる大規模な金融緩和に踏み出してから7年が経過した。物価上昇率2%を掲げ市場に大量の資金を供給し続けるものの、目標になかなか達しない中、今度は新型コロナウイルスの感染拡大というショックに見舞われた。20年のリーマン・ショックを超える経済停滞が予想される中、日銀は金利を低く抑える金融政策を継続しつつ、企業の資金繰り支援を重視する。企業倒産の防止を優先させることで、非常時を乗り切る構えだ。

 「当面の優先課題は企業金融面での十分な資金繰り支援により、企業倒産を防ぎ、雇用を守ることだ」

 4月27日に開かれた金融政策決定会合では、正副総裁など9人で構成される政策委員から、企業の資金繰り支援の重要性を指摘するこんな意見が相次いだ。企業が倒産し雇用を維持できなければ、「新型コロナが収束した後の生産や需要回復にも支障をきたしかねない」(日銀幹部)からだ。

 政府も企業の資金繰り支援などの緊急経済対策に乗り出し、今後は国債発行の増加が予想される。これに歩調を合わせるように日銀は4月の決定会合で「年間80兆円をめど」としていた国債の買い入れ上限を撤廃。大企業などが資金調達のために発行する社債とコマーシャルペーパー(CP)の購入枠を約20兆円と約3倍に拡大した。

 3月の決定会合では社債やCPの買い入れ増額のほか、金融市場を安定させることなどを目的に、多くの株式を組み合わせた金融商品である上場投資信託(ETF)の購入枠を年間12兆円に倍増する方針を示していた。だが、4月の決定会合ではETFの買い入れ枠については維持し、社債とCPの買い入れ増額にとどめたことで、より企業の資金繰り支援を優先させる姿勢が際立った。

 日銀のこうした姿勢の背景には、株や為替など動揺していた金融市場が、ある程度落ち着きを取り戻す一方、企業の資金調達が厳しくなっていることが背景にある。

 JR東日本は4月10日、計1250億円の普通社債を発行すると発表。当初は600億円程度を想定していたが、新型コロナの感染拡大で事業環境が不透明になっているため、増額して手元資金を厚くするのが狙いだ。JR東の1回の発行額としては過去最大という。トヨタ自動車も4月、2年以内に最大3000億円の社債を発行する枠を関東財務局に登録した。

 JR東やトヨタといった優良企業でさえ社債の発行などで資金調達を急ぎ、市場では信用リスクの高い企業を中心に社債利回りが高止まりしていた。日銀が社債やCPの買い入れを増やすことで、高止まりした金利を抑え、企業が資金調達しやすい環境を整える狙いがある。

 ただ、社債やCPを発行できるのは信用力のある大企業や中堅企業などに限られる。このため日銀は3月の決定会合で、中小企業の資金繰りを支援するため、企業向け融資の資金を金融機関にゼロ金利で貸し出す制度を導入し、4月にはこれを拡充している。

 日銀の黒田東彦総裁は4月の決定会合後の会見で、企業の資金繰りについて「リーマン・ショックの時よりも厳しい」との認識を示し、中小企業の資金繰り支援で新た方策を検討する考えも明らかにした。

 次回の決定会合は6月15~16日を予定するが、黒田総裁は4月30日の参院財政金融委員会で、「6月の決定会合を待つことなく、臨時の会合でもやって早急に始めたい」と述べた。

 定例の決定会合は年8回で、5月はもともと会合の予定はない。新型コロナの影響で中小企業の経営は圧迫されており、新たな資金繰り支援策を早急に実施するためには、臨時の決定会合を検討する必要もあると判断した。

 新たな支援策としては、政府の緊急経済対策における実質無利子・無担保の融資制度を手掛ける金融機関に対し、日銀がゼロ金利で資金を貸し出す仕組みなどを想定しているもようだ。中小企業に限らず、個人事業主などにも対象を広げる可能性がある。

 日銀は新型コロナの感染拡大の影響について「世界的にみて、今年後半にかけて和らいでいく」(黒田総裁)ことを想定している。もっとも、「新型コロナの感染拡大が収束する時期や収束後の改善ペースなど先行きの不確実性は高く、下振れリスクは大きい」(同)のも事実だ。新型コロナとの闘いが想定以上に長引けば、さらなる資金繰り支援が必要になる可能性もはらんでいる。(経済本部 大柳聡庸)

最終更新:5/24(日) 9:00
産経新聞

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