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ジャメイ・キャッシォ: 明日の世界を変えるツール

2015/7/7(火) 10:33配信

TED

Jamais Cascio

翻訳

私たちが作る未来は 私たちが誇れる未来にできるはず こんなことを毎日考えてます というかこれが私の仕事そのものです 私はWorldchanging.comの共同設立者で シニアコラムニストです 2003年の終わりにアレックス・ステッフェンと 2人で設立してから今に至るまで Worldchangingは 全世界で拡大中の寄稿者チームと協力し 絶えず増え続ける沢山のソリューション を記録してきました 現在すでに使われているものから 完成間近のものまで様々です


2年ちょっとで 約4,000件を取り上げました 再現可能なモデルから技術的ツール 急成長中のアイデアまで この全てが目指すのは 地球環境をより維持しやすく より公平でより望ましい未来です 私たちの組織では 意図的に ソリューションを重視しています たとえば世界の現状が どれだけ急速に悪化しているのか 最先端の情報を知りたければ オンラインでもオフラインでも 情報は無限に手に入りますが この状況に対し何ができるかを提案をしよう というのが目的です 私たちは主に地球環境に焦点を当てて 活動していますが それでだけでなく国際開発や国際紛争 新興技術の責任ある利用から さらに第二の超大国の台頭まで この他にも非常に沢山のテーマを 取り上げています


対象となるソリューションの分野は かなり幅広いですが 対処すべき課題の広範さや 利用可能なイノベーションの多さを 意味しています ほんの一部ですが いくつかざっとご紹介しますね 趣旨は理解していただけるかと思います 例えば 災害時の迅速な復旧用に 膨らませて使うコンクリートのシェルターや 生命科学の斬新な使い方をした 地雷のある場所では色が変わる花など これは家やオフィスの超高効率デザイン これは太陽光、風力、海洋エネルギーや その他のクリーンなエネルギー源を使い 分散して発電するモデル これは未来の超々低燃費車で これは今すぐ手に入る超低燃費車です それから都市計画を改善して あまり運転しなくていいようにしたりとか 生体模倣技術を使って 自然の形が持つ効率性の利点を取り入れ 車や建物をデザインします 未来の気候をモデリングする 分散型情報処理プロジェクトもあります また 今週TEDで取り上げている トピックの中には 過去にWorldchanging で特集したものもいくつかあります 「ゆりかごからゆりかご」デザインや MITのFab Labs 極端に長い寿命の行く末についてや One Laptop per Childプロジェクト Gapminderもです


私は1960年代中盤生まれ ジェネレーションX世代で 40歳の誕生日があっという間に迫り 自然と悲観主義になりました しかしそんな私自身も驚いているのですが Worldchangingのお陰で 信じられるようになった事があります こんな世の中でも 世界中の問題に対し効果的に取り組み 解決するのは可能であるということです 更に わかってきたことは 悪い結果しか見ない人は 成功する可能性そのものに 目をつぶっているだけなのだということです ノルウェーの社会科学者 エブリン・リンドナーによれば 「好景気の中では悲観主義は驕りである 不景気での悲観主義とは 自己が招いた 自己満足的な死の言葉である」 本当のところ 未来を良くすることは可能です 今すぐにできることなのです たった今見たように そのためのツールもあります それに新しいツールは常に登場しますからね 人間には知識がありますし 地球に対する理解も日々深まっています そして何より我々には動機があります この世界は変えなきゃいけないし 私たちの他にやってくれる人は誰もいません


Worldchangingで見つけ出し 取り上げてきた ソリューションの多くに共通する 特性があります: 透明性、協力体制、実験する意欲 そして科学に対する理解 というか むしろ「科学である」! (笑) うちで特集するモデルや ツールそしてアイデアのほとんどには 今言った特性が混合して存在します では これらの概念が どう組み合わさって世界を変えるのか 少し実例をお見せしましょう


見えない物を可視化するツールには 世界を変えうるものとしての 価値があります 別の言葉で言えば そのツールなしでは ほとんど知覚できない状況が わかるようになるツールです 人は往々にして 自分の行動がもたらす 結果を知り理解したとき 変わろうとするものですからね 私たちの身近によくある ちょっとした例としては 車の燃費に影響の出る 運転の仕方を正確に反映するような リアルタイム表示の燃費計が ついている車ではドライバーの 運転の仕方が変わることなんかですね ここ数年で 世の中でも 規模が大きすぎたり 漠然としすぎていたり あまりに掴みにくい物事を 測定し表示できるイノベーションが 非常にたくさん起こりました シンプルなテクノロジーでは たとえばこの壁に取り付ける装置 家庭での電力使用量を表示し また 部屋の電気を 幾つか消したらどんな結果が出るか わかる装置など 個人の消費資源量に すぐに効果を与えられる 技術があげられます コミュニティ用ツールでいえば ショートメールで 飛散花粉量の多い時 スモッグ量が上がった時 自然災害が近づいている時 お知らせが来るシステム これがあれば 前もって対策に 動けるようになります データ量の多いディスプレイ 例えば選挙運動中の献金マップや 北極で消えつつある氷床を 地図化したものなどがあると 我々皆に影響のある プロセスの流れや前後関係が 分かるようになります


オープンなデータや 協力行動を通じて 世界中の医療ニーズに応えることを 目的とした研究プロジェクトなどは 世界を変えられる可能性があります さて 知りすぎることが時に災いをもたらすと 訴える人々もいますが 知識がもたらす解決策のほうが ずっと重要であると 私は確信しています 例えば Public Library of Science のようなアクセス自由なジャーナル 最先端の科学的研究結果を 世界中どこでも誰でも 無料で読むことができます 実際 このモデルを採用している 科学系出版社の数は増えつつあります 去年のことですが 生物学・化学の研究者数百人が 世界中から集まり 協力しあって 発展途上国では最悪と言われている 疫病の原因である 寄生虫のゲノム配列を解析しました アフリカの眠り病やリーシュマニア症 シャーガス病の原因となる寄生虫です このゲノムデータ 今や世界中の オープンアクセスの ゲノムデータバンクで入手でき 治療法を探している研究者にとっては 非常に心強い味方です でも私のお気に入りの例は 2003年 2004年のSARS流行 世界中でSARS対応が 可能になったのは このウィルスの 全遺伝子配列が世界どこからでも 手に入ったお陰でした このとき全米研究評議会が SARSの大流行について後に記した レポートの中で 遺伝子配列の公開情報が SARS治療法の迅速な開発の 決定的要素となったと報告しています


また 世界を変える可能性は 携帯電話のような平凡なものにも 潜在しています おそらくこの講堂の中で 携帯を持っていない人は 片手で数える程度でしょうね オーブリー君はいるかな? 携帯を持ってないはずだけど (笑) 多くの人にとって 携帯電話は まさに 自分自身の一部のようなものへと化しています そして今人々は 携帯電話が社会に変革を起こしうる 可能性を確実に意識し始めています 大局的な側面は 既に幾つかご存知ですよね 昨年は全世界でのカメラ付き携帯の販売数が あらゆるカメラを上回ったこととか そしてレンズを通して ネットワーク上で生活が公開されている 人々の数も上昇傾向にあります 時には歴史の本に載ることさえあります 途上国では 携帯電話が 経済発展を推し進めています 去年 アフリカ全土での 携帯電話使用率の増加と 続くGDPの増加には 強い相関性があるという研究結果が出ました 実際 ケニアでは携帯の通話時間が お金の代わりにやりとりされるほどです 携帯電話の政治的な一面も 無視できません 韓国で政権打倒運動の一環として 使われた一斉ショートメールから イギリスでは映画をもじった ブレア・ウォッチ・プロジェクト マスコミを避ける政治家に 目を光らせるのが目的です (笑) こういった傾向は今なお加速中です 切れることのない広汎ネットワーク 高品質の音声や映像 ポケットに入れて持ち歩くというより 身に着けるためのデザイン これらがほとんどの人には理解不能な規模で 我々の生活に変革をもたらすでしょう 世界で最も重要なテクノロジーの 一つとして 携帯電話を挙げても過言ではありませんし 急速に進歩し続ける現代では コミュニケーション用媒体としての 携帯電話から大きくかけ離れた 使われ方をされる未来の世界も 想像には難くありません


水曜にピーター・ガブリエル氏が Witnessプロジェクトについて 非常に感動的な講演をされました 私は前々から このプロジェクトのファンだったので Witnesssがウェブポータルを開設し デジカメやカメラ付携帯で撮ったビデオを インターネットから投稿できるようになる とわかって ものすごく嬉しかったです 物理的にビデオテープを持たずに 済みますね 暴力や不正を記録し公開する手段として 新しい より安全な経路が 増えることになるだけでなく 増加し続ける世界のデジタル世代にも Witnessを知ってもらえるようになります さて この仕組み 環境活動家同士を 繋げるシステムとしてはどうでしょう 地球環境に起きつつある変化の 記録や証拠を集めたウェブポータル があったらどうでしょうか あらゆる人々が自分の端末から ニュースやデータを投稿します 活動家や研究者から ビジネスマンや政治家まで誰でもできます 今進行中の環境の変動に スポットライトを当てつつ もっと大事な意義として 新しい世界 より良い世界を作るために 動く意志のある人々が 声を上げられるようになります この仕組みが 一般市民に 地球を守る役割を担うチャンスを 与えることになります まあ要するに「Earth Witness」 プロジェクトが出来上がります 断わっておきますが ここでの「Earth Witness」の名称は 計画の一環 また ただこの仮想プロジェクトの 理想形を表現したものの 略称として使っているだけです 別にWitnessの目覚しい功績に あやかりたいわけではないですよ 単に「環境の透明化プロジェクト」とか 「自然を守るスマートモブプロジェクト」 と呼んだって構いません 「Earth Witness」のほうが言いやすいだけです


さてこのプロジェクトに参加する人々の多くは 人為的もしくは非人為的な 環境問題に注目するでしょう 特に 環境犯罪や 温暖化ガスや排気ガスの主要発生源などですね これは当然ですし 大事なことです 破壊されたものを元に戻せるならば 一体何が地球で起こっているのかを もっとちゃんと記録するべきですから しかしEarth Witnessでは 何を取り上げてもいいんです Worldchangingでの成功例ですが 良質のアイディア 成功したプロジェクト 世の中を変えようとする努力の中でも もっと注目に値するものなどを 一覧にするという使い方もあります Earth Witnessが見せる世界は2つ: 私たちが変えようとしている世界 そして何世代もの子孫のために 築き上げていく世界です


この未来予想図の どこがいいかというと 今すぐ行動できるというところです 鍵となる部品は既にどこにでもあります カメラ付携帯は当然必要不可欠です ほとんどの人にとっては いつも身に着けていて いつでもどこでも使える情報ツールとして 現時点では携帯電話が一番です デジタルカメラは 忘れることもありますが 携帯を忘れる人はほとんどいませんから このシナリオの一つとして 携帯を自作するというのも 考えられます 去年一年を通じ オープンソースのハードウェアの ハッカー達が様々なモデルを考え出しました リナックスを搭載した携帯電話とか こういう系統のプロジェクトから生まれうる Earth Phoneとかです このネットワークのもう一端には 皆が写真やメッセージを送るため サーバーが作られます このサーバーにはネット上でアクセスできます 写真シェアサービスと ソーシャルネットワークのプラットフォームと 協調フィルタリングシステムの組み合わせです Web 2.0に携わる方なら 私が何を言ってるかおわかりでしょうが それ以外の皆さん 私がたった今使った用語が 全くちんぷんかんぷんな方のために 簡単な言葉で言い換えると: Earth Witnessプロジェクトの オンラインの部分は ユーザーが オープンに協力しあって作るということです これだけでも 地球に起こっている変化を 記録した 壮大な年代記を 作りあげるのには充分かもしれませんが まだできることがあります


Earth Witnessのウェブサイトは 携帯に搭載する環境センサーが集める あらゆる種類の 地球環境データを収集した 集合地点としても使えます このセンサー機能 まだ携帯電話に ついてはいませんが 世界中の技術者や学生が 大気センサーを 自転車や 携帯用端末や 安価なロボットや鳩のお尻に くっつけて実験しています カリフォルニア大学アーバイン校で 実際に進行中のプロジェクトで 鳥に取り付けたセンサーで スモッグを生む大気汚染を 測定するというものです 人が持ち運ぶ携帯電話に 同じものを取り付けるというのは ここからすぐに想像できますね さて 携帯にセンサーを付けるという 考え方は新しいものではありません 世界中のメーカーが 口臭チェック機能を付けたり 紫外線量が多いと警告を出す機能を 付けた携帯を売り出しています スウェーデンの会社Uppsala Biomedialでは もっと実用向けに 現場で血液検査をしてデータ送信し 結果を表示する携帯電話を作っています ローレンス・リバモア国立研究所でさえ 同様の研究をしており ここでは汚染爆弾を探すために 放射線センサーを取り付けた 携帯電話を試作中です


市場で手に入る安価の小型センサーの 種類は膨大にありますから 気温や二酸化炭素や メタンガスレベルなどを測定する 携帯電話を誰かが開発する可能性は 想像に難くないでしょう 生物毒素があるかどうかとか 数年あればH5N1鳥インフルエンザウィルス の感知もできるようになるかもしれません こういった種類のシステムが まさにぴったりなプロジェクトは ラリー・ブリリアント氏のInSTEDDですね さて こういうデータ全てに 地理情報をタグ付けして オンラインマップと関連付けて 簡単に 閲覧・分析できるようにする事も可能ですが これは特筆すべきことだと思います 過去1~2年で起きた オープンアクセスのオンラインマップの 影響力はまさに驚異的です 世界中のウェブ開発者が バス路線ルート 犯罪統計や 鳥インフルエンザの流行などの 有用なデータをマップ上に重ねるための 物凄い数の方法を考え出してくれました Earth Witnessはこれだけに終わらず 個人が見ている物を 世界各地にいる 何千人 何百万人という人々と繋げます


こういうものが存在したら どんな物事が達成できるか 考えるとわくわくしてきます 今我々は 地球上で何が起こっているのか 衛星や政府の設置する 一握りのセンサーが 収集する情報なんかより はるかに上を行く情報を把握しています 環境への意識向上や環境保護に対する ボトムアップ式の 協力的アプローチになるでしょう 環境に対し浮上しつつある懸念への 「スマートモブ」的対応が可能になり センサ―の密度を上げたければ 人数を増やすよう呼びかければいいだけです 一番大事な事ですが 世界中の子供達にとっての 携帯電話の重要性は無視できません これは 次の世代が 環境データ収集の最前線で 活躍できるようにするシステムなのです 気候変動の最悪の影響を和らげる方法を 探す努力をするにあたって どんな小さな情報でも必要なのです Earth Witnessのようなシステムがあれば 私たち皆が 人類の知識の向上に貢献できるようになり 究極的には 地球自体を良くすることにつながります


さて 冒頭でも言ったように 何千もの良質なアイデアが 続々と出てきていますが ではなぜ 存在しないプロジェクトについて 私がさっきから十数分も 話し続けているのかおわかりですか? なぜなら これが明日を形作る物だからです テクノロジーが可能にする ボトムアップでグローバルなコラボレーション これによって文明発生以来最大の危機に 対処していけるからです 地球を救うことは可能ですが 一人ではできません お互いが必要なのです 世界を救ってくれる人なんていません 皆で協力して 技術の革新と人のコミュニケーションを 等しく活用することで もしかしたら自分達でどうにかできるかも しれないというだけです 我々の手に届く距離に 有力な事業モデルに 強力なツールや 革新的アイデアなどが豊富にあり これで 地球の未来に意味のある変化を 起こせるかもしれません 全てを解決してくれる特効薬ができるまで 待つ必要はありません 解決策の詰まった薬箱が既にありますから 後は使うだけです 信じられない数の画期的ソリューションが 様々な分野で既に発表されており これら全て 使う気にさえなれば 地球を救うことができるということです Worldchangingでは常套句ですが: もう一つの世界を創ることが可能なのではない もう一つの世界はここにあるのだ 我々は ただ目を覚ますだけでいいのだと ありがとうございました


世界を良くしたいとは誰もが思うことです。しかし、どうやって変えるのでしょうか?
ジャメイ・キャッシォが世界を変えうるツールや技術の数々を取り上げたこのトークは観る人を惹きつける内容です。観た後に行動したくなるかもしれません。 ( translated by Riuška Poništova , reviewed by Satsuki Katayama )

動画撮影日:2006/2/2(木) 0:00
TED