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ジュリア・バッチャ:非暴力に注目を

2016/10/2(日) 10:07配信

TED

Julia Bacha

翻訳

私は映画監督です この8年間 紛争を平和的手段で 終わらせようとする イスラエルとパレスチナの ドキュメンタリー制作に ついやしてきました ヨーロッパやアメリカに 仕事で行くといつも こう質問されます パレスチナにガンジーは? パレスチナ人はどうして 非暴力抵抗をしないんですか?


私は答えに困ります そういうとき私は中東での撮影から 戻ったばかりで 多数のパレスチナ人が 非暴力で土地や水資源を イスラエル軍や入植者から 守ろうとしているのを 目の当たりにした直後のことが多いのです 非暴力の先導者たちは 占領を止めさせ地域に平和を築くために 国家的規模の非暴力運動を 実現しようとしています でも彼らのことは 聞いたこともない人がほとんどでしょう パレスチナの平和的抵抗運動が まだ1度も成功していない 主な理由の1つは 現地で起きていることと 海外で知られていることの 差にあるのです


そこで私は今日 私たちの「注目」が持つ 影響力について話し 非暴力運動が高まり 進行している中で ヨルダン川西岸やガザではなく 今日はパレスチナに焦点を当てます 非暴力が拡大するために 最も足りないのは パレスチナ人が 非暴力で行動を起こすことではなく すでに非暴力を実践している人たちに対して 私たちが注目を注ぐことだと思います ブドゥルスという村を 皆さんにお見せしながら 説明させてください


7年ほど前 村は消滅するところでした イスラエルが建設を発表した 分離壁の一部が 村を通ることになったのです 40%の土地を失い 壁に囲まれ 西岸に自由に行き来することが できなくなるかもしれなかった 熱心な地元の指導者を中心に 村人はこれを止めさせるための 平和的抵抗運動を開始しました


映像を少しご覧ください 実際の現地の状況が お分かりいただけると思います


(音楽)


パレスチナ人女性:壁はパレスチナを イスラエルから分離するものと聞いていたのに ブドゥルスの土地が 奪われることが分かりました


イスラエル人男性:フェンスは テロに対する解決策だ


男性:今日 平和的行進に 参加してください イスラエル人の兄弟姉妹が多数 協力してくれます


イスラエル人活動家:軍にとって怖いのは 非暴力の相手です


女性:男達が兵隊を 押しのけようとしましたが 誰にもできませんでした でも女性たちにはできるかも


ファタハ党員:古い考え方を 捨てるべきです


ハマス党員:皆 一致団結していました パレスチナに広がってほしいと思いました


かけ声:団結した1つの国 ファタハ ハマス 人民戦線! キャスター:壁での衝突です


レポーター:派遣されたイスラエル国境警備隊は あらゆる武器が使用できます


(発砲)


男性:実弾です ファルージャみたいに発砲している


イスラエル人活動家:死ぬかと思いましたが 周りの人はかがみもしませんでした


イスラエル兵:非暴力デモが [不明瞭]を止めることはない


デモ参加者:平和的行進です 暴力の必要はありません


かけ声:私たちにはできる 私たちにはできる 私たちにはできる!


ジュリア:ブドゥルスのことを 初めて聞いたとき 7年前の2003年に 次々に起きた異例の出来事を 海外メディアが 取上げなかったことに 驚きました さらに驚いたのは ブドゥルスが成功したということでした 住民は 10ヶ月間の平和的抵抗の後 壁のルートを彼らの土地から イスラエルとパレスチナの領土の 国際的に認められた境界である グリーンラインへ移すように イスラエル政府を説得することに成功しました ブドゥルスでの抵抗は それ以来 ヨルダン川西岸の村々や エルサレムのパレスチナ地区へ広がりました それでもメディアはこの話題を ほとんど取り上げていません メディアによるこの沈黙は 非暴力がパレスチナで拡大 または存続する可能性を 大きく左右する 重大なものです


武装抵抗と 非暴力の抵抗には とても重要な共通点があります どちらもある種の「舞台」で 抵抗の原因に注目する観客が必要です 暴力的な役者がいつも 第一面に載ることで 国際社会の注目を パレスチナ問題に引きつければ 市民による反対が 自分たちの窮状に対処する 現実的な選択肢であると 非暴力の指導者たちが 地域の人々に主張することは 非常に困難になります


「注目」の影響力は お子さんがいる方であれば 当たり前と思われるでしょう 子どもが駄々をこねたとき 真っ先に相手をすれば その子の駄々っ子ぶりは どんどん悪化します 駄々をこねれば 親が注目してくれると 子供が学んでしまうのです これが児童心理学用語で言う 機能的行動です 子どもに注目するかしないかだけで 親は子どもの行動を 促すことも 止めさせることもできるのです そしてこれは大人にも言えます つまり 国際社会が 注目する対象として 何を選ぶかによって 地域や国全体の行動に 影響を与えることが できるのです


中東での紛争を終わらせて 平和をもたらす要は 私たちが 今現地にいる 非暴力の指導者たちに もっと大きな注目を注いで 非暴力を 機能的行動へと 変化させることだと思います パレスチナの村に 私の映画を紹介していく中で たった一つの映画が 与えることができる影響を 目の当たりにしました


エルサレムのすくそばにある ワラジェという村の人たちは ブドゥルスと非常に似た窮地に 立たされていました 壁で囲まれ 多くの土地を失い 他のパレスチナ地区に 自由に行けない状態になろうとしていました 約2年間にわたり非暴力を用いていましたが 誰からも注目されずに 望みを失っていました そこで上映会を開きました その1週間後 過去最多の参加者とともに 非常によく統制のとれた デモが行われました 主催者たちは 映画に記録された ブドゥルスのことを見てから 自分たちの活動に関心を持って 見てくれる人がいるのだと 村人が感じたと言っていました だから彼らは続けました


イスラエル側では ソリダリオトという平和運動が生まれています 「団結」という意味のヘブライ語で この運動の指導者たちはブドゥルスのことを 参加者募集の主な手段として用いています 彼らによれば 参加したことのない人も この映画を見ると 非暴力の力を理解し 活動に参加し始めるそうです ワラジェとソリダリオト この2つの運動の例は 個人が作る低予算の映画でも 非暴力を機能的行動に変える 一翼を担うことが できるということを示しています であれば 大手メディアが ビリンやニリン ワラジェなどの村や シェイクジャラやシルワン エルサレム周辺で 毎週起きている非暴力デモを 取り上げ始めたら それにどれだけの 影響力があるか 想像してみてください 非暴力の指導者たちは もっと目立って 評価されて 活動の効果も 高くなるでしょう


一番大切なことは こうした努力に 私たちが注目しなければ それが表に出てくることはなく 存在しなかったも同然になると 理解することだと思います でも 私たちが注目すれば 運動が拡大するということを 私は目の当たりにしました 運動が拡大すれば パレスチナ紛争に対する 影響も強まります そしてこの非暴力運動が 現在の状況を最終的に 打開する力を持っているのです 指導者たちは ブドゥルスなどで 非暴力の効果を証明しました どこででも効果を示せるよう 彼らに注目を注いでいきましょう


ありがとうございました


(拍手)


2003年、パレスチナの村ブドゥルスは、10ヶ月にわたり非暴力デモを繰り広げ、村のオリーブ園を横切る壁の建設を中止させました。このことを知っていましたか? 答えはきっと「No」でしょう。ブラジル人映画監督ジュリア・バッチャがこう問いかけます。「どうしてイスラエル・パレスチナ紛争の武力衝突にばかり注目し、いつか平和をもたらすかもしれない非暴力の指導者を無視するのですか。」 ( translated by Shizuka Kawame , reviewed by Chieko Tamakawa )

動画撮影日:2011/7/13(水) 0:00
TED