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アダム・グラント: 「与える人」と「奪う人」―あなたはどっち?

3/21(火) 11:10配信

TED

Adam Grant

翻訳

ちょっと 周りを見回してみてください 最も疑い深そうな人を見つけたら―


(笑)


その人を指差して 私に教えてください


(笑)


本当にやっちゃダメですよ


(笑)


私は組織心理学者なので 訪問先企業で過ごすことが多いのですが どこもパラノイア(疑心暗鬼)が はびこっています パラノイアの発生元は 「テイカー」(奪う人)です 他人とのやり取りにおいて 利己的な人です 「何をしてもらおうか」 という意識の人です 反対が「ギバー」(与える人)です 普段 他人とやり取りするときの意識が 「何をしてあげようか」な人です


ここで 自分のスタイルについて 考えてみましょう 誰しも「与える」ときと 「奪う」ときがあり 大体の人を大体において どう扱うかという標準が その人のスタイルです 実は ちょっとしたテストで 自分がギバーかテイカーか 傾向が分かります [ナルシスト診断テスト]


[手順1 自分自身について 少し考えてください]


(笑)


[手順2 この手順に行き着いた人は ナルシストではありません]


(笑)


今日お話しすることの中で唯一 データに基づいていないんですが 今のイラストを見て笑い出すまでに 時間がかかる人ほど テイカーであるおそれがあると 確信しています


(笑)


テイカーは誰もが ナルシストなわけではなく 燃え尽きてばかりでうんざりした ギバーだったりもします 今日ここでは触れないタイプの テイカーもいます 「サイコパス」(精神病質者) と呼ばれる人です


(笑)


この両極端な特性の人々が どれだけいるのか 興味を惹かれ 世界の文化をまたぎ 色々な業界の3万人以上を対象に 調査を行った結果 大体の人は ど真ん中に位置すると 判明しました 「ギブ」と「テイク」の間です 「マッチ」という 損得のバランスをとるスタイルです 「ギブ」と「テイク」の 均等なバランスを保ちたがる代償型の人― つまり「何かしてくれたら 私も何かしてあげる」という人です 生き方としては無難そうですよね でも それって最も効果的で かつ生産的な生き方なのでしょうか? その答えは かなり絶対的な… 「たぶん」です


(笑)


何十もの会社組織の 何千人もの人々を 観察してきて エンジニアたちに生産性を測ってもらい


[『リストラ・マン』より] (笑)


医学生の成績表を見たり [『グレイズ・アナトミー』より] 営業マンの売り上げも調べました [『ジ・オフィス』より]


(笑)


すると 意外にも それぞれの職業において 最低の成績を出していたのはギバーでした 仕事が一番遅かったエンジニアは 見返り以上の 頼まれごとをこなしていた人でした 他人がするべき仕事で手一杯過ぎて 時間も力も尽きてしまい 自分の仕事が終わらなかったのです 医学部で 最も成績が悪かったのは 次のような文への共感度が 最も高かった生徒です 「人のために何かしてあげたい」 裏返せば 信頼すべき医者とは 誰かを助ける意欲を一切持たずに 医療を志した人だということになります


(笑)


営業でも同じく 売上が最低だったのは 最も気前のいい営業マンでした そこでギバー指数が 非常に高かった営業マンに 実際に連絡を取って 訊いてみました なぜそんなに営業が下手… ...そうとまでは言わずに


(笑)


「気前がよすぎると 売上に影響するのでは?」 返ってきた答えはこうでした 「お客さんが本当に大切なので うちの粗悪商品は 絶対に売りたくないんです」


(笑)


ここでちょっと 自分はテイカーやマッチャーよりも ギバーだと思った人 手を挙げてください 今のデータの話をする前なら もっと手が挙がったでしょうね


でも 実のところは そう単純な話ではありません ギバーは しばしば 自己を犠牲にしてしまう一方で 組織に改善を起こす人でもあるのです 証拠になる事実はたっぷりあります 非常にたくさんの研究が 「与える」行為の チームや組織の中での 発生頻度を調べており 人々が助け合い 知識を共有し合い 面倒を見合う頻度が高い組織ほど 測定可能な あらゆる指標において 優れていました 利益率 顧客満足度 従業員の定着率は高く 営業費削減につながってさえいたのです でもギバーは 多大な時間を費やして 他人を手伝い チームの改善に尽力し 結果 自分の仕事は 思うようにいかないわけです そこで ギバーが活躍できる 環境を作るのに必要な要素とは何か お話ししたいと思います


考えたのですが 成績ビリがギバーなら トップは誰なのでしょう? まずは ご安心ください テイカーではありません テイカーは大体の職種において すぐ伸びますが すぐ落ちます マッチャーに足元をすくわれるのです マッチャーは公正な世界を信じ 「目には目を」がモットーなので テイカーに出会うと その人を存分に懲らしめることが 自分の使命であるかのように 思ってしまうからです


(笑)


そうやって裁きが下るわけです


大体の人はマッチャーなので テイカーには結局 ツケが回ってくることになります 「因果応報」というわけです ですから論理的に考えると 成績トップはマッチャーになるはずです それが 違うのです 私が観察してきた どの職種でも どの組織でも 首位にいたのも なんとギバーでした


何百人という営業マンの 売上の記録を 集めたデータをご覧ください ギバーの成績は両極端ですね 売上最下層の人々の ほとんどを占めながら トップの層もギバーです エンジニアの生産性も 同じパターンになり 医学生の成績でも同じでした 最上位も最下位も ギバーばかりだったのです 私が知る限りの成功指標 どれを見ても同じでした ここで疑問が生じます もっと多くのギバーが成功する社会は どうしたら作れるのでしょうか その方法― 企業だけでなく 非営利団体や学校や 行政機関でも使えるコツを お話しします 聞きたいですか?


(歓声)


どちらにしろ話すつもりでしたが 熱意は嬉しいです


(笑)


決定的に重要な1つ目の条件は その組織にとって 最も貴重な存在がギバーであり でも気を付けないと燃え尽きてしまうと 認識することです 特に守らなければいけない存在なのです これについては『フォーチュン』誌が選んだ 世界一の人脈を持つ人物から大いに学びました 猫じゃなくて男性のほうです


(笑)


アダム・リフキンという人です いくつも事業を起こして 大きな成功を収め 莫大な時間を人助けに費やしています リフキンの秘密兵器は 「5分間の親切」です 「マザー・テレサや ガンジーを真似なくても ギバーにはなれる 他人の人生に大きな価値を与える ちょっとした方法を 見つけさえすればいい」 だそうです 例えば 知り合うと良さそうな人同士の 間を取り持つといった シンプルなことでもいいし 知識を共有したり 率直な意見を言ってあげたり 次のように 本当に基本的なことを 宣言するだけでもいいのです 「よし これから 働きが周りに認知されていないような人を 称賛できるかどうかやってみよう」 この「5分間の親切」は ギバーが対人関係で境界線を引き 自分自身を守るのに必要不可欠です


大事な点 2つ目 ギバーが活躍できる環境作りには 人に頼ることが当たり前であるという 下地がまず必要です 誰もが頻繁に助けを求める文化です このイラストが身につまされるという 人もいるでしょう


[では どんな人間関係でも常に 与える側にならざるを得ないと?]


(笑)


成功しているギバーは 自分が「受け取る」側になってもいいのだと 認識しています 組織を経営していれば これを促すことも可能です 人にものを頼みやすい 環境を整えればいいのです 何人かで一緒に 病院を観察したところ ある階では 看護師たち同士の 助け合いが頻繁に起こり 他の階では ほとんど ありませんでした 助け合いが自然に起こり それが当たり前である階で ひときわ目立ったのは 同じ科の他の看護師を 援護するためだけにいる― 看護師が一人だけ いたことでした そんな環境にある看護師の声です 「人に頼るのは 恥ずかしいことでも 弱さでもなく 実際 推奨されているんです」


助け合いは ただ単にギバーの成功や幸福を 守るためだけではなく ギバーのように振る舞う人々を 増やすためにも非常に重要です データによると 組織で起こる「与える」行為全体の 75%から90%が お願いから始まるからです 大抵の人はこれができません 理由は無能だと思われるのが嫌だとか 誰に頼めばいいか分からない 負担をかけたくないなどですが 誰も助けを求めない組織では 誰のために何ができるかさえ分かれば 喜んで力を貸したいという― たくさんのギバーたちが 不満を抱えることになります


でもギバーが活躍する環境を作るのに 最も大事なことは何かと言えば 誰をチームに迎えるかを よく考えて決めることです 私は当初 生産的な 与え合いの文化を築きたければ ギバーを揃えればいいのだと考えました しかし 意外にも 実はそれは間違いだったのです 1人のテイカーがいると 1人のギバーがもたらす― 好影響の2倍から3倍の 悪影響が生じることが分かりました 例えば 腐ったリンゴ1つで 樽全体がダメになりますが いい卵が1つあっても 箱全体の卵が良くなったりはしません 今のは自分でも意味不明ですが


(笑)


何となく つかめたでしょうか


とにかく テイカーを1人でも チームに入れるだけで ギバーたちは出し惜しみを始めます 「周りはキツネ野郎や タヌキ野郎ばかりだから 力を尽くすだけ損だ」と でも ギバーを1人 チームに入れても 急に親切の連鎖が始まることはありません それより 大抵は 「やったね この人に全部任せちゃおう」 となります 効果的な採用活動や チーム作りにおいて 大切なのはギバーを登用することではなく テイカーを排除することなのです うまくやれば ギバーとマッチャーだけが残ります 搾取が起こらないので ギバーは安心して親切さを発揮します マッチャーのいいところは 周りに合わせるという性質です


では 手遅れになる前に テイカーをあぶり出すには? 実のところ私たちは テイカーを見抜くのが かなり苦手で 特に初対面ではうまくいきません ある性格特性に 気を取られてしまうのです 「人当たり」というものです 様々な文化において 性格の大きな要素の1つです 人当たりのいい人は 温かく友好的 好感度大で礼儀正しく カナダにたくさんいるタイプです


(笑)


実際 カナダでは 国の新しいスローガンの募集がありました 次の空欄を埋めるというものです 「カナダ人なら___」 当然「メープルシロップ」や 「アイスホッケー」が 選ばれると思っていたら 国の新たなスローガンとして カナダ国民の票が集まったのは― 作り話ではなく― 「カナダ人なら 臨機応変」 だったのです


(笑)


会場の中で 非常に人当たりがいいか 微妙にカナダ人的だという人は すぐに意味が分かるはずです 周りを喜ばせようとして 常に人に合わせている自分を 何か1つに喩えるなんて無理な話です 人当たりの悪い人は そんな努力はせず 批判的で 懐疑的で 一筋縄ではいきませんし 周りの人より非常に高い確率で 弁護士を目指します


(笑)


今のは冗談ではなく 実証済みの経験的事実です


(笑)


さて 私はずっと 人当たりのいい人がギバーで 人当たりの悪い人がテイカーだと 思い込んでいましたが データを集積して 愕然としました これらの特性には 全く何の相関性もなかったのです 実のところ 人当たりの良さ・悪さは 表向きの姿だからです 接していて気持ちがいいかどうかです 一方 ギブやテイクは 内的な動機という性質が強く その人の価値観や 他人に対する意図が表れます


人を正確に見極める方法を 本気で知りたいなら 会場のコンサル業の方はどなたも 手がムズムズしているはずです 2×2の分割表を描くんです


(笑)


「人当たりのいいギバー」は 簡単に見分けられます 全てに「イエス」と言うのですから [ネッド・フランダース] 「人当たりの悪いテイカー」も すぐに見つかります ただ 微妙に違う 呼び方になるかもしれません


[ダース・シディアス] (笑)


残り2つは忘れられがちですが 1つは「人当たりの悪いギバー」です 表面上は無愛想で扱いにくいのですが 内面では本当に他者の幸せを考えています [グレゴリー・ハウス] エンジニアに言わせれば 「人当たりの悪いギバーって ユーザーインターフェイスはひどいけど OSとしては傑作みたいな?」


(笑)


これで分かりますかね


(笑)


人当たりの悪いギバーは 組織で最も過小評価されている人々です 誰も聞きたくないけど 誰もが聞く必要のある― 批判的な意見を敢えて言う人だからです そんな人々をもっと上手に 評価するべきです こんなことを言って 早々と見限るべきではありません 「この人 感じ悪いから 自己中なテイカーに違いない」


私たちが忘れがちな もう1種類が 致命的な 「人当たりのいいテイカー」 いわゆる詐欺師タイプです 表向きは いい顔をするけど 裏では ひどい仕打ちをする人です


[ステューウィー・グリフィン] (笑)


こういう人を面接で見抜く 私のお気に入りの方法は ある質問をすることです 「自分のおかげでキャリアが 劇的に向上したと思う人を 4人挙げてください」 テイカーは4つの名前を挙げますが そのどれもが本人よりも 影響力のある人の名前なのです テイカーは上には媚び 下を虐げることに長けているからです ギバーは自分よりも地位が下の人の 名前を挙げることが多いです あまり影響力のない人や 役には立たない人の名前です 現実を言えば その人の 人となりは レストランの従業員や タクシーの運転手への接し方を 見ていれば よく分かります


こうして うまいこと 組織からテイカーを駆逐して 安心して周りに助けを 求められる環境を整え ギバーが燃え尽きてしまうのを防止し 他人の力になりつつも 自分自身の目標を野心的に 追求してもいい文化を 作ることができれば 成功とは何かという考え方も 変えられるのです 競争を勝ち抜くことが全てではなく 貢献そのもののほうが大事なのだと 皆 気づき始めるでしょう


私は 最も意義ある成功の形とは 他者の成功を手伝うことだと 考えています この考え方を広められれば パラノイアをひっくり返すことも可能です 名前もあるんです 「プロノイア」といいます プロノイアとは妄想の一種で その人の幸福を 周りの人が企てているとか―


(笑)


自分がいないところで ものすごく評判になっているという 思い込みです ギバーの文化の素晴らしい部分は これが妄想ではなく 現実であるということです ギバーこそが成功するような 世界を作っていくのに 皆さんの力を 借りることができたら嬉しいです


ありがとうございました


(拍手)


どんな職場にも、ギバー(与える人)、テイカー(奪う人)、マッチャー(損得のバランスを取る人)という3種類の人々が存在するといいます。組織心理学者アダム・グラントが、この3種類の特性について詳しく解説。与え合う文化を育て、利己的な社員が過剰に利を得ることを未然に防ぐ、シンプルな対策法を提案します。 ( translated by Riaki Poništ , reviewed by Misaki Sato )

動画撮影日:2016/11/15(火) 0:00
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