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ジュリア・バーチャ: 女性が持つ、非暴力の闘いを成功に導く力とは

TED 5/1(月) 10:07配信

Julia Bacha

翻訳

12年前 私は初めてカメラを手にました ウェストバンクにあるパレスチナの村で オリーブの収穫を映像に収めるためです 単発のドキュメンタリーを 撮りに来ているだけで 終わったら次は別の国に 移動するんだと思っていました でも 何かが私を 何度もそこに引き戻したのです


世界の皆さんが 普通 この地域の話を聞いたとき とにかく紛争が終わってほしいと 考える方が多いでしょう イスラエル・パレスチナ問題はひどい 消えてなくなればいいのに と 世界の他の地域で起こっている 紛争についても同様でしょう ところが 私たちが ニュースに目を向けるたび 戦火に巻き込まれる国が 新たに増えているようにも見えます そこで私は最近 紛争について違う見方が できないものかと考えていました 終わってくれと ただ願う代わりに 紛争を闘い抜く方法に 焦点を当ててはどうかと考えました このところ思索してきた 重要な問いかけです これを非営利団体Just Visionの チームと共に追求してきました 中東で起こっている いくつかの闘争を この目で見た私は うまく収まった いくつかのケースには パターンがあると気づき始め 共通点があるのではないか もしそうなら 建設的な闘いを進めるための 教訓が集められるのではと考えました パレスチナやイスラエルや 他の地域でも同様です


客観的データも見つかっています 323の大規模な政治的紛争について 研究した結果― 対象期間は1900年から2006年ですが― マリア・ステファンと エリカ・チェノウェスが発見したのは 非暴力運動の成功率は暴力的な運動の ほぼ2倍だったということでした 非暴力運動では 身体的な危害も発生しにくいものです 運動に加わっている本人たちも 敵対する相手に対してもです ここで大事なのは 通常このほうが より平和で民主的な社会を生み出すことです つまり 非暴力抵抗は 紛争を闘い抜く方法として より効果的で建設的なのです


でも そんなに簡単な選択であるなら なぜもっと使われないのでしょう? 政治科学者のヴィクター・アサルが 同僚と共同で 政治集団が選ぶ戦略を形作る 様々な要因を調べました そこで判明した 最大の予測因子― 非暴力と暴力のどちらを選ぶかを 予測する決め手となったのは その団体が 右寄りか 左寄りかには関係なく 宗教的な信条にどれだけ 影響されているかでもなく 民主主義や独裁政治に 反対するかどうかでもなく その集団がどれだけ抑圧を受けているか でさえありませんでした 非暴力を採用するかどうかを 予測する最大の予測因子は 公の場での女性の役割に ついてのイデオロギーだったのです


(拍手)


男女の平等に関連する言葉が 議論される活動の場合 非暴力を採用する可能性が 劇的に上がり したがって 成功率も上がります


この研究結果は 私が自分の手で記録した― イスラエルとパレスチナでの 政治運動の組織作りにも合致します そこで見えたのは 女性をリーダーとして歓迎する運動は 私のドキュメンタリーに登場する ブドゥルスという村をはじめとして 目的達成率が ずっと高かったことです この村は 地図から今にも消されてしまう という脅威に直面していました イスラエルが分離壁の建設を 始めたからです 提案された計画通りにいくと この村のオリーブ林や墓地を 潰すことが避けられず 最終的には村が全方向から 遮断されてしまう見通しでした 地元住民は 奮起したリーダーシップで これを食い止めるべく 非暴力抵抗運動を始めました 住民は恐ろしく不利な状況に 立たされていました でも 秘密兵器がありました 15歳の少女が 果敢にもブルドーザーの前に 飛び出して オリーブの樹が根こそぎにされる寸前に 食い止めたのです まさにその瞬間 ブドゥルスの住民は 公の場への 女性の参入を 歓迎し勇気づけることが生み出す 可能性に気づいたのでした それからブドゥルスの女性たちは 毎日毎日前線に立って 自分たちの創造力と才覚を駆使し 目の前にある幾多の障害を 10ヶ月に及ぶ非武装闘争で 乗り越えたのです ここまで言えばもう お分かりでしょうが 最終的に勝利しました


分離壁は 一変して 国際的に認められた 緑の道に変更され ブドゥルスの女性たちは その後 ウェストバンク中の人々に 不屈の精神力で知られるようになりました


(拍手)


ありがとうございます


ここで一呼吸入れさせてください 今の時点で起こりうる 二つの重大な誤解を きっぱり正しておきたいからです まず一つ目です 私の考えでは 女性は生来または根本的に 男性より平和的だとは言えません でも こんにちの世界では 女性は「力」というものを 違う形で経験すると考えています 弱い立場で世渡りせざるをえない という経験を あちこちでしてきた女性が 男性よりも身につけやすい能力があります それは 強大な力の持ち主に対して 気づかれずに働きかけ 影響力を発揮する技術です 「人を操る」という言葉はしばしば 女性に対し軽蔑を込めて使われますが 女性が多くの場合において 直接対決を避けて目的を達成する方法を 探らねばならなかったという 現実を反映するものです 直接の対決に代わる手段を 見つけることが 非暴力抵抗運動の中核なのです


もう一つ 起こりやすい 誤解についてお話します 先ほどから中東での体験について たくさんお話しているので こう思っている人もいるでしょう 解決策はイスラム系や アラブ系の社会を教育して もっと女性が活躍できる ようにすることだ そうすれば もっと いい結果が出てくるだろう と でも そういった種の介入は 要らぬお世話です 中東発で最も影響力のある運動に 女性は既に関わっています しかし そういった事実は 国際社会には見えない傾向にあります カメラに映ることが 圧倒的に多いのは男性です ニュースのネタとして抗いがたい 対決色の濃いシーンに 関わることが多いのは男性だからです その結果 報道の中では 現地での闘争から 女性が外されて伝えられるだけでなく 闘争そのものが誤って伝えられることも ままあるのです


80年代終盤にガザで 民衆蜂起が始まり 瞬く間にウェストバンクと 東エルサレムに広がりました 第1次インティファーダとして 知られる出来事です 当時の光景を憶えている人たちが 概して思い浮かべるのは パレスチナ人男性たちが イスラエル戦車に石を投げつける図です 当時の報道からは 石や火炎瓶そして 燃え上がるタイヤだけが インティファーダで起こっている 活動であるように見えました しかし この時期には 広範な非暴力的運動も起こりました ストライキ 座り込み 並存制度の誕生 という形です


第1次インティファーダの最中 あらゆる層の パレスチナ人市民が 世代 党派 階級の壁を越えて 動員されました 人民委員会のネットワークを 通じて起こったことです また 直接行動の行使や 自治体内の自己支援プロジェクトの利用により イスラエルが ウェストバンクとガザの支配を 継続することが困難になりました イスラエル軍による直接の証言によれば 第1次インティファーダの間に起きた 活動の97%が非武装だったそうです


もう一つ 当時について 表向きには語られなかった事実があります インティファーダ中の18ヶ月の間 舞台裏で指揮をとっていたのは 女性でした あらゆる立場のパレスチナ女性たちが 何十万人もの人々を動員する 責任を担っていました 占領への同意を撤回するよう 一致協力して働いていたのです ナイラ・アヤーシという女性は パレスチナの経済的自立を目指して ガザの女性に裏庭での 家庭菜園作りを奨励しました この活動は当時イスラエル当局から 違法とみなされていました レビハ・ディアブは 蜂起全体の意思決定権力を 掌握しました その地位についていた男性が 国外追放されたときのことでした ファティマ・アル・ジャファリは 逮捕されずに 蜂起の指令を 地区全体に行きわたらせるために ビラを飲み込みました そしてザヒラ・カマルは 自ら組織を率いて 蜂起の長期継続に貢献しました この組織は1年で 女性25人から3000人にまで拡大しました 並外れた偉業を達成したにも かかわらず 第1次インティファーダが語られるとき この中の誰一人として出場しません


世界の他の地域でも 女性の扱いは同じです 例えば歴史書や 私たちの集合意識の中では 60年代アメリカでの反人種差別闘争で 表に出たスポークスマンは男性です しかし 女性も同じく 決定的な原動力として 動員したり 組織したり 街頭に出る活動を行っていました 皆さんの中に セプティマ・クラークという名前が アメリカの公民権運動と聞いて 浮かぶ人はいますか? ほとんどおられないでしょう でも実は 公民権闘争の あらゆる局面で重要な役割を果たし 特に識字率向上と教育の普及に 力を尽くした女性です そんな彼女は 省かれ 無視されてきました アメリカ公民権運動で 重要な役割を果たした他の女性も同様です


功績が認められるかどうかの 問題ではありません もっと深い話です 私たちが語る内容は 自分たち自身をどう見るか 社会運動が どう展開されるべきかという信念や どう勝利に導かれるかに 深く影響します 第1次インティファーダのような活動や 公民権運動の時代をどう語るかは 非常に重要ですし その影響力は重大です パレスチナ人やアメリカ人 世界中の人々が この次 不当な社会状況に行き当たったとき どんな行動を選ぶかに影響し 立ち向かう勇気を生み出すのです このような闘争の中で重要な役割を果たした 女性の功績を表に出さないことには これからの世代に 手本を示すことはできません 手本となる人がいなければ 公の中で女性が然るべき地位を得ることは 難しくなります 先ほども触れましたが 社会的な運動が 成功するかどうかを左右する― 最も重要な要素は 女性が公の場で果たす役割について その運動が持つイデオロギーです


ここで問われているのは 私たちが民主的で平和な社会に 向かって動いているかどうかです 今の世の中は あまりにたくさんの変化が起こり続け それは加速する一方です ここで問われるのは 争いに対峙するかどうかではありません それよりも重要なのは どの物語でもって 争いを闘い抜く方法を 形作るかなのです


ありがとうございました


(拍手)


世界を変えたいという熱意に溢れる方なら、知っておくべき統計があります。なんと、非暴力運動が成功する確率は、暴力的な運動の2倍も高いのです。では、なぜ紛争の当事者はもっと非暴力を選ばないのでしょうか? 映像制作者のジュリア・バーチャが、非暴力抵抗が成功を収めた物語や、リーダーとしての女性が務める重大な役割に関する、目からウロコの落ちるような調査結果を紹介します。 ( translated by Riaki Poništ , reviewed by Masaki Yanagishita )

動画撮影日:2016/6/29(水) 0:00

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