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ニック・ハノーアー: 超富豪の仲間たち、ご注意を ― 民衆に襲われる日がやってくる

2017/8/25(金) 13:57配信

TED

Nick Hanauer

翻訳

皆さんは私をご存じないでしょうが 私は皆さんがあちこちで耳にする 上位0.01%の富裕層の一人で つまり紛れもないプルートクラット (超富豪 政治権力者)です 今日は私の仲間である 超富豪の人たちに向けて お話ししたいと思っています 私たち超富豪が話し合うべき時が 来たように思うからです 多くの超富豪と同様 私も 資本家であることを 誇りに思い 悪びれてもいません 私は様々な業界で30を越える会社を 個人や共同で設立したり 資金提供したりしてきました アマゾン社に非同族で出資したのは 私が初めてでした 私はアクアンティブという会社を 共同で立ち上げ マイクロソフト社に64億ドルで 売却しました 友人と共に銀行を所有しています これをお伝えしたのは ―(笑) 信じられないでしょう?


これをお伝えしたのは私の人生が 他の多くの超富豪と 同じだと言いたかったからです 私は資本主義やビジネスを 大きな視野で捉え それによって鼻持ちならないほどの 利益を得て 皆さんには想像もつかないような 生活をしています 複数の住宅、ヨット、自家用機 その他もろもろ でも正直に言います 私はズバ抜けて賢くはありません 最も勤勉な人物でもありません 学生時代は平凡でした 技術も全然ありません プログラムも書けません まさに私の成功は 出生、境遇、タイミングにおける 驚くほどの幸運の結果なのです しかし私にはいくつか長所があります 1つはリスクに耐える力が 非常に強いこと もう1つは将来 起きることを言い当てる 直感や洞察力が優れていることです この未来に対する直感が 優れた起業家精神にとって 最も重要だと思います


では今日 私が未来をどう見ているか 気になりますか? 鉄の熊手が見えます 怒りの群衆が手にしているような農具です なぜなら私たち超富豪は 想像を絶するほどの強欲に まみれて暮らし 99%の一般国民を どんどん引き離しているからです 1980年 アメリカ国民の上位1%は 国民所得の8%を占めていました 当時の下位50%が占めていたのは 18%です 30年経った現在 上位1%が占めるのは 国民所得の20%を越えており 下位50%が占めるのは 12-13%です この傾向が続けば 今後30年のうちに 上位1%が占めるのは 国民所得の30%を越え 下位50%が占めるのは たったの6%になります


お分かりでしょう 問題は 格差そのものではありません 高度に機能する 資本主義下の 民主主義において ある程度の格差は必要です 問題は今日の格差が 史上最大であり 日々悪化しているということです そして もしこのまま富や力や所得を 一握りの超富豪に 集中させていたら 私たちの社会は 資本主義下の民主主義から 18世紀のフランスのような 新封建主義へ変わってしまいます それは革命前の 農具を持った民衆が 反乱した頃のフランスです


私には伝えたいことがあります 私と同じ超富豪や大金持ち バブルの世界で 優雅に暮らす人々へのメッセージです 「目を覚ませ」 目を覚ましましょう いずれ終わりが来ます 私たちがこの社会における あからさまな経済格差に対して 何もせずにいたら あの民衆が襲いに来ます 自由で開かれた社会で 今のような経済格差の拡大が 長く続くはずがないのです 過去にも 続いた例はありません 極めて不平等な社会には 警察国家や 暴動が付き物です 手立てを講じなければ 世直し一揆が私たちを襲いますよ 可能性の話ではありません 時間の問題です その時が来たら それは誰にとっても 酷いことになりますが 特に私たち超富豪にとっては最悪です


リベラル派の優等生みたいに 聞こえるでしょうが 違います 経済格差が悪だとかいう 倫理的な議論をしているのではありません 私が訴えたいのは この経済格差の拡大は 馬鹿げていて 最終的には自滅につながるということです 格差拡大は私たちが 民衆に襲われる危険性を 高めるばかりでなく ビジネスにも大打撃を与えます 私たち金持ちの手本は ヘンリー・フォードでしょう フォードは有名な 「日給5ドル」という― 当時の一般的な賃金の 倍増計画を導入しましたが 彼の功績は 工場の生産性を 向上させただけではなく 貧しく搾取されていた自動車工たちを 自分たちの作る商品を買うことができる 成長した中流階級に転換させたことです フォードは直感していました 現代の私たちが認めるとおり 経済は生態系になぞらえて考えるのが 最適で 自然界の循環システムと 自然界の循環システムと 同様の特徴があり 経済にも企業と顧客の間に 循環システムがあるのです 賃上げによって需要が増し 需要によって雇用が増え それによって賃金や 需要や利益が増えます この景気の好循環こそが 今日の経済回復に 欠けているものです


だから私たちは 両政党で強い勢力を誇る― トリクルダウン政策とは手を切って 私が「ミドル・アウト経済」と呼ぶ やり方を採用する必要が あるのです ミドル・アウト経済では 経済というのは効率的で線形で メカニズム的であるから 均衡や公正に進む傾向があるという 新古典派経済学の考えを却下し 21世紀型の考え方を採用します 経済は複雑、適応的、生態系的なので 均衡や公正とは逆方向に進み 不平等になる傾向があり 効率とは程遠いが うまく管理されていれば 効果的であるという考え方です この21世紀型の観点でとらえると 現存する資源の効率的な分配によって 資本主義が機能しているのでは ないということが はっきり見えてきます 資本主義は人類が抱える問題に対して 新たな解決策を生み出すことで 機能するのです 資本主義の特質は 解決策を見つけるべく 進化するシステムだという点です 他の人たちの問題を解決した人々に 報酬が与えられます 貧しい社会と豊かな社会の違いは そこに住む人々のために 生産という形の解決策を どれほど生み出したかという 度合いの問題であることは明らかです 私たちの社会が保有する 解決策の総和が すなわち 私たちの繁栄であり このことが グーグルやアマゾン マイクロソフトやアップルなどの会社や こうした会社を作った起業家たちが 我が国の繁栄に大きく貢献したと言える 理由になるのです


この21世紀型の観点でとらえると 私たちが問題を解決した率をもって 経済成長を理解するのが 最も適切だということも はっきりしてきます しかしその率は問題を解決した人の数― 問題を解決する能力のある多様な人々を 私たちが何人持っているかに かかっています つまり私たち市民のうち何人が 解決策を提供できる起業家として また その解決策を購入する消費者として 積極的に参加できるかによるのです しかしこの参加の最大化というのは 偶然 起きたりはしません 自然に起きる訳ではないのです 努力と投資が必要です だからこそ大いに繁栄した 資本主義下の民主主義は どれも皆 中流階級と 彼らの生活を左右する インフラに対し 大規模な投資を行うという 特徴があるのです


私たち超富豪は この 私たちがさらに富めば 他の人にも富が浸透するという トリクルダウン経済から 脱却する必要があります トリクルダウン理論は間違いです そんなはずがないでしょう 私には平均賃金の 千倍の収入がありますが 千倍多く買い物したりはしません そうでしょう? 私はこのズボンを2本買いました パートナーのマイクいわく 「経営者ズボン」 私はこれを2千本買えますよ でも買ってもしょうがないでしょう? (笑) 私が床屋に行く回数も 外食する回数も そう多くはありません 超富豪がいくら富をかき集めたところで 国家規模の経済を動かすことは 絶対にできません それが可能になるのは 中流階級の成長によってのみです 「手の打ちようがない」と 超富豪の友人たちは言うかもしれません ヘンリー・フォードの頃とは 時代が違います 出来ないことはあるでしょう でも出来ることもあるでしょう 2013年6月19日 ブルームバーグに私の書いた記事が 掲載されました 『最低賃金15ドルという資本家の理論』 という題です 賢明なフォーブス誌の人々の中には 私の熱狂的なファンがいますが 彼らに「ニック・ハノーアーによる とんでもない提案」と呼ばれました しかし その記事が掲載されて ほんの350日後 シアトル市長のエド・マレーが シアトルの最低賃金を 時給15ドルに上げるという条例を 法律として成立させました これは連邦内で一般的な 時給7ドル25セントの 倍以上に当たります 何故そうなったのか 分別ある方なら疑問に思うでしょう その理由は私たちが共同で 中流階級の人々に 彼らこそが資本主義経済の 成長と繁栄の源であると 再認識してもらったからです 労働者が持つお金が増えれば 企業は顧客が増え 雇用を増やす必要が出てくると 再認識してもらいました 企業が労働者に生活賃金を払えば 納税者は食糧配給券や 医療扶助、家賃補助などの 労働者が必要とする 生活保護制度の財源を 負担することから 解放されるということを 再認識してもらいました 低賃金の労働者は 納税状況が極めて悪く すべての企業が 最低賃金を引き上げれば どの企業も潤い 競争も起きるということを 再認識してもらいました


さて ここで出る定番の反論は 最低賃金の引き上げによって 失業が増えるというものでしょう 政治家たちはトリクルダウン案を 繰り返し唱えるとき こう言いますね 「人件費が上がると どうなります? 雇用が減るんですよ」


本当だと思いますか? 矛盾する証拠がありますよ 1980年以来 我が国のCEOの賃金は 平均賃金の30倍から 500倍に 上がりました これが人件費増加の実体です さらに 私が知る限り CEOの職を外部委託したり 自動化したり 中国に移したりしている企業は 一つもありません それどころか かつてないほど 多くのCEOや経営幹部が 雇われているようです テクノロジー系や 金融サービス系の 労働者もそうです 彼らは平均賃金の何倍も稼ぎますが 彼らの雇用は増加しています 人件費の増加が 高給取りの増加であることは 明らかなのです


ほとんどの人は 最低賃金15ドルというのは 常軌を逸した リスクの高い 経済的実験だと思うでしょう 私たちはそう思いません 私たちはシアトルでの 最低賃金15ドル法を 論理的な経済政策を維持するための 策だと考えています それによって こちらの都市が そちらの都市を やっつけられるようになります というのも ご存知でしょう ワシントン州はすでに 最低賃金が国内で 最も高い州です ここでの時給は9ドル32セントで これは連邦最低賃金である 7ドル25セントより3割多いですが 重要なのは チップをもらう職種の連邦最低賃金である 2ドル13セントの427%に当たる 金額であるという点です トリクルダウン支持者の言うとおりなら ワシントン州は大量の失業者を 抱えていたでしょう シアトルは沈没していたでしょう ところがシアトルは 国内の大都市で 最も急成長しているのです ワシントン州は 他のどの主要な州よりも 高い成長率で 中小企業の雇用を増やしています シアトルのレストラン業は 好景気に沸いています その理由は資本主義の原則として 労働者の持つお金が増えると ビジネスには客が増え 働き手が必要になるからです レストランが従業員に払う給料で 従業員が外食できるようになれば それはレストラン業にとって 悪くない話です 良い話なんです レストラン経営者の中には そうは考えない人もいるようですがね


言うは易く行うは難しと 思われますか? もちろんそうです さまざまな力学が働いています でも 低賃金労働者の 稼ぎが少し増えると失業が急増し 経済が崩壊すると考えるのは もう止めませんか? そんな証拠はないのです トリクルダウン経済論の 最もタチが悪い点は 金持ちが もっと金持ちになれば 皆が幸せになるという その主張ではありません 貧乏人が金持ちになることは 経済にとってマイナスだとして 最低賃金の引き上げに 反対する人々の主張です それはナンセンスです 私や他の超富豪ら 金持ちが 我が国を作ったという レトリックは もう 止めにしませんか? 我々 超富豪は知っています 表立って認めはしませんが 私たちが このアメリカ合衆国という国以外の どこか別の場所で生まれていたら 舗装もされていない道端に裸足で立ち 果物を売る人たちと同じだっただろうと 極貧の地域などに 優れた起業家がいても どうにもならないのです その起業家の顧客に どれだけの購買力があるか それに尽きるのです


ではここで私が「新資本主義」と呼ぶ 経済の新たな形 政治の新たな形をご紹介しましょう 資本主義は 他の仕組みを圧倒し 起業家にしろ顧客にしろ より多くの人を巻き込むことで より良く機能するということを 認めましょう 是が非でも政府の規模を縮小しましょう ただし生活保護制度を 切り詰めるのではなく 労働者が十分な賃金を得た結果 保護が必要なくなるように するのです 中流階級にたっぷりと投資し 私たちの経済が より公正で より包括的になるようにしましょう より公正ということは 真に競争力があるということで 真に競争力があるということは 人類が抱える問題に対する解決策を 作り出す能力が高く それが成長と繁栄を推進する 力になるのです 人類が社会における 繁栄をもたらすために 生み出したもののうち しっかり管理された資本主義ほど 優れた社会技術は 他にありません しかし資本主義は 複雑なシステムが増殖するという その根本的な力学のため どうしても不平等や富の集中 破綻に 向かってしまう傾向があります 民主主義の仕事は 大衆の関わりを最大限に高めることです ごく一部の人だけに お金を集中させるのではなく 繁栄をもたらすようにするのです 政治が繁栄と成長をもたらすのは 起業家とその顧客の双方が 豊かになれるような条件を 整えてこそです 私のような資本家と 労働者の力関係を整えるのは 資本主義にとって悪い話ではありません 不可欠なことです 最低賃金を妥当な額にすることや 医療費を手頃な額にすること 有給病気休暇や 中流階級が必要とする 教育や研究開発などの 重要なインフラをまかなうために 必要とされる一歩進んだ税制 これらはやり手の資本家なら 成長のために 進んで利用すべき 必須ツールです なぜなら 私たちほど その恩恵を受ける人は いないですからね


多くの経済学者の言葉を信じて 皆さんは 経済が客観的な科学だと 思い込んでいるでしょう 私はそうは思いません 私は経済学もまた ツールの1つであり 地位や権力に関する 私たちの社会的 倫理的 選好と偏見を強化し コード化するために 人間が利用するものだと思っています だからこそ私のような超富豪は 私たちの位置関係が なぜ倫理的に正しく 皆のためになるかについて 他の人々に納得してもらえるような物語を 常に求めてきたわけです たとえば私たち雇用を創り出す側は 絶対に必要で 皆さんは そうではないとか 私たち富裕層の減税は 成長につながるが 皆さんへの投資は 債務を膨らませ 我が国を破産させるとか 私たちに関係することは 皆さんには関係ないとか 何千年もの間 こうした物語は 神権と呼ばれていました 今日に至っては トリクルダウン経済です どれもこれも誰が見たって 明らかに 利己的ではありませんか 私たち超富豪は理解する必要があります アメリカ合衆国が私たちを作ったのであり 私たちが国を作ったのではありません 中流階級の成長は 資本主義経済における繁栄の源であり 繁栄の結果ではありません そして私たちは決して忘れてはなりません 私たちの中で最も有能な者でさえ 状況が最悪なら 未舗装の道端に裸足で立ち 果物を売ることになるのです


超富豪の仲間たちに告げます 私たちが我が国のために再び尽力し より包括的で より効果的な 新たな資本主義に取り組むべき 時が来たような気がします 新たな資本主義はアメリカの経済を 世界一の活力と繁栄に満ちたものとして 末永くあり続けることを保証するものです 我々自身の将来 そして― 子々孫々の未来を守りましょう あるいは何もせず 上流階級の優雅な暮らしや 教育の中に身を潜めて 自家用機やヨットで遊び― 楽しいですしね 民衆の反乱を待つかです


ありがとうございました


(拍手)


ニック・ハノーアーは金持ちであり、頑固な資本家でもあります。そして彼には超富豪の仲間たちに言いたいことがあります。「目を覚ませ!」格差の拡大により私たちの社会は革命前のフランスを髣髴とさせる状態に追いやられてしまいそうです。なぜ最低賃金の大幅な引き上げが中産階級の成長や経済的繁栄をもたらし、革命を阻止することができるのか。彼の主張を聞いてみましょう。 ( translated by Emi Kamiya , reviewed by Yuka Rieser )

動画撮影日:2014/8/6(水) 0:00
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