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アンジャン・チャタジー: 脳はどのように美しさを判定するか?

2017/10/11(水) 10:18配信

TED

Anjan Chatterjee

翻訳

1878年のことでした フランシス・ゴールトン卿が 注目すべき発表をしました 英国王立人類学協会での講演でした 人類の知性についての 先進的な研究で知られるゴールトンは 際立った博学者でした 彼は冒険家で 人類学者で 社会学者で 心理学者で 統計学者でした さらに優生学者でもありました その時の発表では 彼は何枚かの写真から 合成画像を生成する新しい技術を 提示しました この手法で異なるタイプの人々を 特徴づけられるのではないかと考えたのです ゴールトンは凶悪犯の写真を合成すると 犯罪性の顔を見つけられると考えました しかし驚いた事に その合成画像が映し出したのは 美しい顔でした


ゴールトンの驚くべき発見は 深遠な質問を投げかけました 美しさとは何か? なぜある種の線と色の構成が 私たちを刺激するのでしょうか おおよそ人類の歴史の中で この問題は論理と憶測を利用して 取り組まれました しかしここ20-30年ほどは 科学者は進化心理学の考えや 神経科学の手法を用いて 美しさの問題を扱ってきました なぜ美しいか どのように美しさを感じるか という事が理解され始めたのです ようやく人間の顔と体において その意味が分かってきました そして その過程において 驚くべき事に気づいたのです


相手の中に美しさを 見つけることは もちろん判断は個人によりますが グループの存続に貢献する要素により 形作られます 多くの実験によって 基本的ないくつかの要素が 顔を魅力的にする事が示されました 平均化、対称性、ホルモンの影響などです では一つずつ順番に見ていきましょう


ゴールトンが発見した 平均的な顔は その平均の標本となった個人の顔より 魅力的になるという結果は 普通のこととして 何度も再現しました この研究結果は 多くの人の直観と一致します 平均的な顔はそのグループの 中心的な傾向を表します 混合された特徴を持つ人々は 異なる集団を代表し おそらく より大きな遺伝的多様性や 環境への適応性を 想起させるのです 多くの人が混血種の個人は魅力的と感じ 血族結婚の個人には感じないのです


2つ目の美しさに貢献する要素は 対称性です 人々は非対称な顔より 対称な顔に魅力を感じます 発達の異常は しばしば非対称性を伴います 植物、動物そして人類では 非対称が寄生虫の感染により 引き起こされることがしばしばあります 対称性は健康の指標となる事も 判明しています 1930年 マクシミリアン・ファクトロヴィッチ という名の男が 美顔測定器を設計する際に 美しさにおける 対称性の重要さを認識しました この測定器で わずかな対称性の乱れを測定できました 彼の会社が販売したのは それを修正するための製品 ― 彼自身の名前を華々しく受け継いだ マックスファクターです ご存知のように 世界でも最も有名な化粧品のブランドです


3つ目の顔の魅力の要素は ホルモンの効果です 私のコメントが 通常の異性愛者に限定されることを ここでお詫びしますが エストロゲンとテストステロンは 私たちが魅力を感じる特性に 重要な役割を演じます エストロゲンは妊娠可能を示す 特徴を作り出します 男性は一般的に若さと成熟の両方の 要素を持つ女性を魅力的と感じます 顔も同様で あまりに子供っぽい顔は 妊娠可能性が小さい少女ととらえられ それゆえ男性は目の大きい女性を 魅力的と感じますし ふっくらした唇と狭いあごは 若さの指標と捉え 大きな頬骨は成熟の指標と捉えるのです


テストステロンは一般に男性的と見なされる 特徴を作り出します 濃い眉や 薄い頬 頑丈そうな角張った顎が含まれます しかしここに面白い皮肉があります 多くの動物種で テストステロンは 免疫システムを低下させるのです テストステロンがもたらす特徴が 健康の指標となるというのは それほど正しくありません ここでは論理が逆転します 適応の指標の代わりに 科学者はハンディキャップ理論を 持ち出すのです


ハンディキャップ理論の最たる例は クジャクの尻尾です 美しいけれど厄介な尾羽は 捕食者から逃げるのには 無力であり メスに近づくにも厄介です ではなぜこんな突飛な付属物が進化したのか? チャールズ・ダーウィンでさえ 1860年にアサ・グレイに書いた手紙の中で クジャクの尻尾の解釈で体調を崩した と綴っています 彼は自然淘汰説では説明できず その葛藤の末に 性淘汰説を提唱したのです


これは クジャクが尾羽を見せる行動は 性的な誘惑であり この誘惑がクジャクの交尾を促し 子孫を得ることを 意味するのです この尾羽顕示の新しい学説は オスのクジャクがメスに対して 健康を訴求する というものです 特に適応力の高い生物だけが 突飛な付属物を維持できる リソースの転用が可能なのです 特に適応力の高いオスだけが 免疫システムに与えるテストステロンの 代償を支払うことができるのです 同じ論理で とても裕福な男性だけが 経済的能力を示すために 腕時計に1万ドル以上 支払えるのではないでしょうか


多くの人が このような進化論的な主張を聞くと 私たちが何気なく無意識のうちに 健康な配偶者を探すと 考えてしまいます でもこの考えは正しくないと思います ティーンエイジャーや若者は 健康上の懸念を前提に 意思決定をしているとは 認識されていません その必要はないのです 理由を説明します


3つの種類の嗜好を示す人たちを含む 1つの集団があったとします 緑とオレンジと赤です 彼らの観点では この嗜好は健康とは無関係です 好きな色が好きなだけです でも嗜好の対象が 子孫のできやすさと 関係があるとしたらどうでしょう 例えば3対2対1という比率です 第1世代で 緑が3 オレンジが2 赤が1とすると それ以降の世代では 緑の割合が増加して 第10世代目では この集団の98パーセントが 緑を嗜好することになります そして科学者がやって来て この集団で抜き取り調査をすると 緑を嗜好することが普遍的であると 見いだします この概念的な例が示すのは 特定の身体的な特徴に対する嗜好は 個人にとっては偶然ですが その特徴が遺伝するものであり 生殖に有利であると 時を重ねる内に その集団の普遍的な嗜好となるのです


美しい人を見たときに 脳では何が起こるのか? 魅力的な顔は脳の後方にある 視覚野の一部を活性化し 紡錘状回と呼ばれる 顔情報を処理することに 特化した領域を活性化し そして その隣の物体情報の処理に特化した 外側後頭複合体と呼ばれる領域を 活性化します さらには 魅力的な顔は報酬中枢と 快楽中枢をも活性化させますが 脳の前部あるいは奥深くの部分で とても複雑な名前の領域を含みます 腹側線条体 眼窩前頭皮質 腹側前頭前野 などです 私たちの顔情報処理に最適化された 視覚に係わる脳は 快楽中枢と相互作用し 美しさに関する経験を記憶しようとします


驚くべきことに 私たちは皆美しさと関わり合いますが 知識がなかったとしても 美しさのほうから 私たちに関わりあうのです 私たちが美しさを意識しなくとも 魅力的な顔には脳が反応するのです こんな実験を行いました 被験者に一連の顔を見せるのですが 1つだけ条件を与えます それは被験者は1対の顔が 同一人物かを判断することです このような条件下で 美しさの判別ではなく 個人の識別を意図している時でさえ 魅力的な顔は 視覚野において神経活動の活性化を 強く誘導したのです 似た結果ですが 別の研究グループは 美しさに対する自動的反応を 快楽中枢で発見しました 総合すると これらの研究は 私たちの脳は 視覚と快楽を結び付け 美しさに自動的に反応すると提唱しています これらの「美貌検知器」は どうやら 私たちが美しい人を見ると そのとき他の何を考えていようとも いつもピーンと反応するようです


「美は良い事」という 脳への刷り込みもあります 眼窩前頭皮質では 美しさと良さに対する反応に 重複する神経活動があり この反応は 美しさや良さについて 意識的に思考していない時にも 起こります 私たちの脳は反射的に美しさと良さを 関連付けているようです そしてこの反射的関連付けは 美しさの社会的影響についての 生物学的要因かも知れません 魅力的な人々は人生において あらゆる面で有利です より知性的に見られたり より信頼を得られたり 高収入を得て 処罰は軽めになります それらの判断が正当とは 言えなくてもです


これらの観察によって 美しさの醜い面も暴露されます 私の研究室での最近の発見は 顔に軽微な異常や変形がある人は あまり良くない、優しくない 知性的でない、能力が低い、勤勉でない とみなされる事です 残念ながら我々は「醜さは悪い事」と 刷り込まれています このような刷り込みは 有名メディアに登場する画像が 顔の醜さを安易に使って 悪意のある人を表現するという 不当な扱いで増強されています 私たちがこの種の無意識の偏見を 克服しようとするなら このような偏見を理解し その人たちの外見ではなく 行動によって判断する社会を目指していく 必要があります


最後にもう1つの考えを示します 美しさは時とともに変化します いわゆる普遍的な美しさの要素は 更新世後の200万年で選択されました 遠い昔 生物は意地悪く 残酷でした 繁殖可能性に基づく選択の基準を 現代に当てはめることは 正しくありません


例えば 少なくとも科学技術の発達した地域では 寄生虫による死亡が 死因の上位に来ることはありません 抗生物質から外科手術 受胎調節から体外受精を通じて 繁殖成功による選択基準は 緩和されています そしてそのような緩和された状況で 嗜好と習慣の組み合わせは 自由に変化し 多様化しています 私たちが環境に深く影響しようとも 現代医学と技術革新が 美しく見える事の本質に 深遠な影響を与えています 我々が世界に変化をもたらすと共に 普遍的な美しさも変化しているのです


ありがとうございました


(拍手)


アンジャン・チャタジーは自然の持つ最も魅力的な概念である「美しさ」について研究において進化心理学と認知神経科学というツールを利用しています。魅力的な脳の奥深くを眺めつつ、特定の線、色、形状による構図が、私たちをそして私たちの脳を刺激する理由、さらにその背後にある科学について学んで下さい。 ( translated by Hiroshi Uchiyama , reviewed by Masaki Yanagishita )

動画撮影日:2016/11/30(水) 0:00
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